映画「前科者」を観て
昨年の11月〜12月に放送されたWOWOWオリジナルドラマ「前科者」の映画版が本日から上映された。
ドラマでは、保護司となった阿川佳代が保護観察者に振り回されながらも、悪戦苦闘し、成長していく姿に心を打たれ、この映画「前科者」を観るのを楽しみにしていた。
映画は、ドラマ以上に引き込まれ、心を動かされた作品だった。
第一に主人公・阿川佳代役の有村架純の女優のオーラを一切消して、泣いて笑って怒って走る、体当たりの演技に心を打たれた。NHK朝ドラ「ひよっこ」でファンになったが、彼女は今後誰からも愛される実力派女優となると確信した。
ドラマは元々コミックが原作であるが、この作品はまさに本格的なヒューマンドラマである。
観察者の工藤誠(森田剛)、刑事で佳代と中学時代付き合っていた滝本真司(磯村勇斗)、そして佳代には壮絶な過去があり、それは決して忘れることはできず、日々懸命に生きている。そのような人間模様に、自分も完全に感情移入してしまう。
前科者の過酷な生い立ち、出所してからの厳しい現実、そして被害者家族の怒りと虚しさ、復讐心など、人間が抱える闇についていろいろと考えさせられた。誰でも人に言いたくない辛い過去や闇がある。それが犯罪となり、加害者、被害者、またその家族という当事者になると、これまでの人生が180度変わり、社会や人間関係で踠き苦しむが、それは誰しも起こりうることなんだと。
佳代の元観察者のみどりの言葉「元受刑者は、世の中が怖くて弱い人間ばかり。弁護士など自分の周りの人は真っ当なことしか言わない。佳代みたいにダメダメな人間が元受刑者には必要なんだよ」がとても心に響いた。保護司も人間。弱いところも持ちながらも懸命に元受刑者に寄り添ってくれる、弱さに共感してくれる味方が本当に必要なんだと。
佳代は過去に起きた壮絶な事件により保護司になったが、この映画のクライマックスにその詳細がわかる。佳代がコンビニのバイトをしながら無報酬の保護司をやる理由、意味がよくわかった。
物語はとても切なく虚しさを途中途中感じるが、最後まで見終わると、希望の光が見え、気持ちが浄化されたようになった。
先日まで放送されたNHK BSドラマ「生きてふたたび〜保護司・深谷善輔」も同じように考えさせられたドラマであったが、このようなシリアスな社会派ヒューマンドラマはこれからもぜひ注目して観ていきたい。
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