「vol.12 職人さん100人数珠つなぎ」/池内真広(Masahiro Ikeuchi)さん/手描友禅染職人&オリジナルブランド”SOMEA”ファウンダー
手描友禅(京都の扇絵師、宮崎友禅斎によって考案された模様染のこと。かつて貴族や公家が好んだ繊細で優美な意匠が特徴。京都では、一般的に分業が主流で高度な技を持つ職人が図案作成、染、刺繍、金銀箔をそれぞれ担っているが、池内友禅ではデザインから制作まで6〜7割の工程を自らで行なっている。
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友禅染の世界に入った一番の理由は、お父様の作り出す友禅染の世界観が「綺麗やなー」と思ったことだそうです。加えて、友禅染が世の中にあまりない職業だったこと、また、絵を描いて人が喜んでくれたことが嬉しいと感じた原体験があったことも友禅染をするきっかけとなっているそうです。
1: 大切にしている価値観//神仏を敬う心を大切に//
池内さんは京友禅作家のお父様、お客様の相談役を務めるお母様とご家族三人で個人のお客様のために完全オリジナルのパーソナルメイドによる京友禅を作られています。
「私たち家族は、女性ものを作るのが得意な父、明るい性格でお客様対応が得意な母、お子様向け、特に男の子ものを作るのが得意な私とそれぞれに得意な部分が異なり、お互いがバランス良く回っています。」そう語る池内さん。
池内さんご家族が公私共に上手くまわっている秘訣は、大切にする価値観を共通して持っているため、それ以外のことはある程度寛容に受け入れる環境があることだそうです。池内家が共通に持っている価値観というのは、お祖父様から受け継がれた言葉で、「神仏を敬う心だけは捨てるな。」ということです。
2018年に立ち上げられた“SOMEA”は、池内さんの新しいチャレンジの場として誕生しました。SOMEAでは、手描友禅に使われる技術や素材はそのままに、暮らしに身近なお財布やカードホルダーを制作するなど挑戦的な仕事に取り組まれています。
現在は新しく革素材の模様染めにも取り組まれているそうです。
池内さんによって一筆一筆描き出される想いの込もったSOMEAの商品は、私達の日常に300年以上にわたり受け継がれてきた美と技を取り入れることができるアイテムが揃うブランドです。
2: 想い//日本の絹の素晴らしさを伝える//
「日本の絹は素晴らしく、本当に美しいから作りたい。そして、良い絹がわかる人が増えて欲しい。」そう語る池内さん。
実は私の祖父が着物に紋を彫る紋彫師で、父が呉服屋を経営していたため、小さい頃から着物や絹に触れて育ってきた私は、日本の絹の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたいという池内さんの想いに深く同意します。
絹にもグレードがあり、糸の質によって発色や肌触りが変わります。第二の肌とも言われる絹の良さを本当に理解するには、自分の目で見て、触れて、感じる体験が必要です。
今では日本において蚕を育てる場所は片手で数えるほどしか残っていないというのが現状ですが、絹という素材にこだわりを持ち、美と技を作品に昇華させる池内さんの活躍によって、そして私達使い手が本物を理解して生活に取り入れることによって、100年、1000年と日本の素晴らしいものづくりが続いていくと思います。
/池内真広さんの会社情報//
池内友禅
//池内真広さんのブランド//
SOMEA
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