vol.16 職人さん100人数珠つなぎ」 / 涌波まどか(Wakunami Madoka)さん / ”蘇嶐窯”(Soryugama)ファウンダー/ 京焼(京都で作られる焼物)
イギリス人陶芸家であり民藝運動を展開したバーナード・リーチに「用の美の極致」と称賛された陶器産地、小石原焼(こいしわらやき)において14代続く窯元の三女として福岡県東部の東峰村で生まれた涌波まどかさん。京都で陶芸を学ばれる中、京都清水で京焼青瓷(せいじ)涌波蘇嶐の4代目を受継ぐ旦那様と出会い、結婚されました。
異なる窯業産地の二人が一緒に仕事をしていることがとても稀だということを周りの声に教えられ、自分たちだからこそできる表現があるのではないかと、生活民芸品を中心とする小石原焼の技法と茶道具としての高貴な青磁を融合させた青磁飛鉋(せいじとびかんな)を中心とする陶磁器ブランド”蘇嶐窯”を夫婦で生み出しました。
今では日本だけでなくフランス、イタリア、オランダ、アメリカ、上海、台湾などの世界各国に販路を拡大し、その成果としてローマの二つ星レストランで使われています。
1: 大切にしている価値観 // 20年、30年先を見越した仕事をして息子さんにつなげる//
涌波さんには「5代目として涌波蘇嶐を継ぐ!」と宣言している現在高校生の息子さんがいらっしゃいます。
ある時、その息子さんから「家業を継ぎたいけど、陶芸だけで食べていくのは難しそう。」と言われ、継ぎたい背中であると共にこの世界の厳しさも伝わっていることにショックを受け、将来彼にバトンを渡す時により良い状態で渡す為に目の前の仕事だけではなく、20年、30年先を見越した仕事をしなければならないと考えました。その一つが販路を世界に拡げること。
具体的には、世界各国で開催される展示会に出展し、会場での実演をはじめ、夫婦ブランドのストーリーを伝え共感してくれるファンを獲得していきました。
また、展示会出展期間中に滞在先の星付き料理店をまわり、シェフに直接アプローチし、レストランに採用されるなど展示会場外での営業活動にも力を入れています。
海外への販路開拓をはじめ様々な新しい取り組みにチャレンジしよう!とフットワーク軽くできるのは、見ているゴールが一緒の夫婦ブランドならでは。
5代目となる息子さんへつなぐ4代目は走力を上げて活躍の場を世界に築き、バトンを着実に渡す準備を整えています。
2: 強み //お客様と涌波さんが直接やり取りできるギャラリー工房@京都市清水//
「使う器をつくっているので、お客様の喜ぶ姿を見られることが嬉しいですね。2018年にギャラリー工房をリニューアルオープンし、直接お客様の声を聞き、ものづくりの背景を伝えられるようになったことでよりお客様との距離が近くなったと感じています。」と語る涌波さん。
お客様とのキャッチボールの中でオーダーメイドが生まれたり、竹職人とのコラボレーションなどの逸品ものや企画を発表する場でもあるギャラリー工房の存在はとても大きいと言います。
5代目の息子さんにバトンを渡すというゴールを明確に見定めて走る熱意に溢れた涌波さんは、小石原焼と京焼、日本と世界、そしてご自身がやりたいことと未来に求められていること…と両軸にあるものを上手くかけ合わせながら駆け抜ける陶磁器界のフロントランナーだと感じました。
//涌波まどかさんのブランド//