私だけ

 今年の猛暑のレベルは半端なく、睡眠や栄養、水分や塩分やクエン酸を欠かさず、十分気をつけていたというのに、7月の後半はギックリ腰で、お盆過ぎにはウィルス性の胃腸炎を患ってしまった。気づくと残暑な9月。ふうっ~。
 胃腸炎は、腸をナイフで刺されているかのような激しい痛みで大変辛かったが、同じ行動をしていた中で罹ったのは私だけだった。

 昨年10月にコロナに罹患。軽傷で済んだと喜んでいたが、どうもその後、調子が良くない。熱がうんと上がった人の方が後々さっぱり元気になり、熱があまり上がらなかった人は、後々引きずるという話も耳にした。どうやら私は後者のよう。目立った後遺症はないが、どうもちょっとしたことでダメージを受けやすくなってしまっているみたいだ。

 そのコロナが治って喜んだのもつかの間、11月下旬に足の裏に違和感を感じ、12月に皮膚科を受診したらウィルス性のイボだと言われた。全治半年と言われ、クラクラしたが、予想に反し4ヶ月半で完治した。されど4ヶ月半。患い中、イボの痛みから解放されることはなかったので、延々と歩行困難が続いた。それに伴う身体中の筋肉の硬直と、外出がままならない精神的なダメージで、鬱気味にもなっていた。
 たった3〜4ミリ程度のちっこいイボがひどく痛む。痛みを堪えて歩いても5分でギブアップ。杖なしでは歩けず、杖を使っても15分が限界。足の筋肉がパンパンに腫れて一歩も動けなかった日もあったというのに、この手のイボで痛みを訴える患者は他にいないらしく、3軒の病院を回ったが、どの医者も首を傾げてばかりで、私だけだと言われた。

 健康のことは、子供の頃から「私だけ」という目によくあう。生き物も強い者もいれば弱い者もいる。宇宙や自然のバランス全体からみたら、単に、わたしは虚弱に生まれついただけのことなのだが、、、やはり、冴えない。
 子供や若者は元気が当たり前で、そんな頃は、周りのみんながキラキラ輝いて見えて仕方がなかった。わたしは影の中で、一人だけ取り残されている気がしてしまってならなかった。みんなと同じ、普通は素敵で素晴らしい!と、心底思った。普通に憧れ、普通を得ることが幸福だと信じて疑わなかった。

 ところが、、、50歳も過ぎてふと見渡すと、同世代の者たちの多くが、病気の一つや二つ、不調の三つや四つを抱えているではないか。いつのまにか、わたしが憧れた「普通」は、素敵でも素晴らしいものでもなくなっていた。
 しかも、普通でない道を歩いた私は、周囲の同世代の誰よりも、健康トラブルの対応引き出しが多く、潔さや、レジリエンス力も多く持っているようでもある。
 普通に憧れててきた自分に唖然としてしまった。

 タイムスリップして、度々深刻に悩んでいた若い頃の私に言ってあげたい。「長く生きてみると、真反対になることにも出会うよ。深刻な悩みが悩みじゃなくなるから、楽しみにしたらいいよ」
 悩みを抱える多くの若者や子供達にも、届けてあげたい。


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