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まるで映画のようだった 早稲田の定演は「栄花物語」③

定演の第二部が終わりました。

しかし…

私が息を飲んだのはそのあとの幕間でした。

舞台下手側の白い壁にこの一年の吹奏楽団の活躍ぶりを映し出すスライドショーが始まったのです!

これには深く感じ入りました。

というのも、私は定演が
「この一年をさまざまな角度から振り返り」
「できれば今日来たお客さんにわかる形・見える形で示してもらえるとうれしい」
と思っているためです。

紅白歌合戦やレコード大賞が歌を通じてその一年を振り返るように、早稲田の定演に来ると、この一年の応吹も神宮も振りかえることができる場になると、さらに定演の声価が高まるのではないか…と思います。


楽団のみなさんはここ10年ほどそれをよく意識されているようで、ロビーの装飾や写真、コメントなどにも年々工夫がされています。


そして今年ついに、写真の名場面で振り返る豪華なスライドショーが実現しました!


泣くほどうれしかったです。

というのも私はかねてから「もっと定演で部員の顔が見えるようになると素晴らしい」と思っていました。特に最近は部員も多くなり、ステージ上でどうしても見えにくい場所になってしまう部員もいます。

しかし「定演は一人一人が主役」だと思うので、これが何とかならないか、と思っていました。

そこへ今回のこのスライドショーです。
しかも部員の顔が続々と出てきます。

私が学生のみなさんにお願いをしたわけではもちろんありませんし、言ったり書いたりしたこともありませんでしたが、学生のみなさんは私が思っていることを次々と実現してくれて、そのことで胸がいっぱいでした。大変うれしかったです。


しかも映像のベースにはレコード大賞の中継番組のアーティスト紹介などでも使われているフォーマットが使われていて、これもプロのようでした。



そして決定打になったのは、BGMです。

私はスライドショーが始まっただけでもうすごくうれしかったのですが、BGMに「OMENS OF LOVE」が流れてきた瞬間、涙がにじみました。

観衆はさっき聞いたばかりの熱い演奏が再現されているためまた盛り上がります。


スポーツ中継でリプレーの映像がよく流れますが、あれはプレーの確認というよりかはさっき見たいいプレーをもう一度再現することで、見ている人の気持ちももう一度上げることができるためで、プロの考えだした手法です。


定演でリプレーが実現している。

定演がプロの考えるようなことをできている。


この秋の早稲田は「ワンピース」をキーワードにリーグ戦を勝ち進み、神宮大会まで駒を進めることができました。惜しくも日本一にはなれませんでしたが、私は「野球部も応援部もプロレベルの対応ができるようになった」と思いました。


その早稲田の学生が、定演でもプロレベルの対応をしている。

素晴らしいの一言です。



もちろん私がいま述べたこととは違う考え方で「OMENS OF LOVE」を持ってきた可能性も十分あります。詳しいことは聞いていないためわかりません。

しかし、結果としてプロと同じ手法を選ぶことができて、多くの観客の耳目を引き付け、いい演出になりました。これは十分プロレベルです。


ああ、どうして早稲田の学生はいつもいつも期待より上のことを実行してくれるのでしょうか。

あまりにも素晴らしい幕間でした。

そしてこのスライドショーも…まるで映画でしたね。
スプリングコンサートで演奏した曲が磨かれて定期演奏会に帰ってきたのも感動ものです。「OMENS OF LOVE」は最高の劇伴でした。



さて、定演も終盤になってきましたので、ここで指揮部門について触れたいと思います。

今年の指揮部門も充実していました。それぞれ個性が光っていました。いい個性をみんな持っています。

特に今年の指揮部門が優秀だと思うのは「ここ大事だよね」と観客が考えるポイントで、一段ギアが上がるところです。
観客のニーズに届く指揮をしていたと思います。まさに応援部の指揮です。

応援部の指揮が難しいのは、楽団をまとめるだけにとどまらず、観客がその瞬間いいなと思う演奏(テンポやタイミングも含めて)を引き出して観客を盛り上げ、応援席全体の雰囲気をアップさせるミッションが課せられているからではないか、と私は思っています。今年の指揮部門は見事にそれができていました。素晴らしかったです。



次に企画運営部門について触れます。

いい会場を選びましたね。最近都内はホール不足が深刻なので会場を予約するだけでも一苦労ですが、その中で場所も雰囲気もいい会場を選び、見事にセッティングしていました。

選曲もセンスの高さを感じました。詳しくはこの前のnoteに書いたとおりですが、観客に知名度の高い曲を用意したのが大当たりでした。構成力も高いですね。

準備の道のりは長かったと思いますし、大変だったと思います。そうした中でここまでの演奏会を作り上げられたので、将来はチームやプロジェクトの推進役としても活躍できると思います。これからも頑張ってください。



広報部門にも触れます。

4月のスプリングコンサートで桜色の素晴らしいパンフが目を引きました。そのときのお客さんが「ミュージカルみたい、だね」と言っていてこれは当たったと私は思っていました。

そして迎えた定演です。パンフの素晴らしさはこのnoteの①で触れた通りなのですが、映画というテーマに着目したのがよかったですね。このnoteでも「映画のような」と何度も言っていますが、テーマとステージがきっちり合った定演になりました。事前のチラシの段階ですでに映画だったので、早いうちからイメージができていたのだと思います。


そうそう、このチラシを覚えている方もいると思います。


春に配っていたチラシです。ここから8か月、みんな本当によく頑張りました。




話をステージに戻します。

第三部を前に、2人目の司会者が登場しました。

いい紹介でした。

さらに目を引いたのは2点あって、姿勢のよさと間の取り方の良さです。

ふだん指揮台で演技をしているときから姿勢がいいと思っていましたが、ステージではさらにそれがよくわかり、引き立っていました。

そしてあわてずにしっかりと間をとって進行していて、相手の目線で周りが見えている様子がよくわかりました。(これも神宮で思っていた通りです)
この2点に優れているのがMISIAさんで、MISIAさんのことを思い出しながら見ていました。



19時53分。いつもの年より少し遅く、吹奏楽団責任者挨拶が始まりました。

「魂を込める」という言葉に力がこもっていました。大事なことだと思います。その目標に向かって頑張ってきた様子が目に浮かんでくる素晴らしい挨拶でした。

そして「音楽で伝えたいことが伝わるように、音楽にも人にも向き合ってきた」という話がありました。
今年度の楽団がどういう思いで活動してきたかがよくわかる、素晴らしい挨拶でした。


私は定演がとても楽しみなのですが、進行するにつれて「もうこれでこのメンバーによる演奏は聞けなくなる」という現実が迫ってくるので、少しずつ切なくなってきます。


祝電が披露された後、19時59分にブザーが鳴りました。

鬨の声が聞こえました。

「今までありがとう!」
「みんな大好き!」
「おいお前ら…愛してるぜ!」


もう泣きそうでした。

そしてついにドリルの幕が開きました。

今年のドリルは…コマがとても少ないことが強く印象に残りました。

開演前に私は一通り舞台を見るのですが、この段階でコマがとても少ないことに気づきました。

「まさかこれから書くの?」
「いやそんなわけは…」

と思っているうちに第三部になってしまい、そのままドリルがスタートしました。

つまり、目印がとても少ない中でスタートしたわけです。

いったいこれはどうなるのかと思ったのですが…



見事でした。

一言で言うなら「横にも後ろにも目が付いているんじゃないか?」と思うくらいいい動きでした。

カラーガードも鮮やかでした。旗が生き物のようになっていました。今年は神宮の指揮台にカラーガードを入れたりいろいろな取り組みがありましたがそれらの集大成とも言える舞台でした。旗が生きていたので、観客は引き付けられていたのだと思います。

そしてここにチアが入り、見事な演技を見せてくれました。

早稲田のチアは今年、特に素晴らしかったと思います。
みんな自分のミッションをきっちり果たしていて、おまけに修正も早く細かく、すみずみまで行き届いていました。
そして4年生はこの日が現役としては最後の舞台だったので、本当にさみしいと思いました。
3年生以下にもいいメンバーが揃っているので来年、また新たないいチームを作ってほしいと思っています。


ここでドリルスタッフ部門にも触れます。

今年は早稲田のドリルが新しい地平を開きました。マーチングコンテストに出ると聞いたときは時間の無い中ですごいと驚きましたが、それをやりきってしまう熱意と技量に非常に感銘を受けました。

おそらくなのですが、これまでの練習方法では通用しないところもあったのではないかと推測しています。そこでドリルスタッフ部門がいろいろなことを考え、工夫をして、みんなを引っ張っていったのではないかと思います。

また、これだけの大人数のドリルを遂行するだけでも大変な中、いい振付ができていました。
一人一人に場面が与えられて、まるで一人一人にスポットライトが当てられているようなドリルになっていました。バッテリーパートが単独で出てくるシーンも斬新でよかったと思います。

こうした工夫がいろいろあって、全体として完成されているという印象になり、素晴らしかったと思います。


なぜドリルが大事なのか、ということにもつながるのですが、こうした完成された演技を披露することで、舞台は夢の世界になります。私はこれをシュール(超現実)と呼んでいます。

シュールを見せることで、見に来た人の心は洗われ、気持ちが切り替わったり、明日からまた頑張ろうという気になったりします。

応援というのは、頑張ろう・頑張れという気持ちをつないでいくこと=選手の頑張り、観衆の頑張れという思いをつないでいくこと=に大きな意義があると私は思います。

その意味でこれだけ完成された演技を披露できるのは、まさに応援部にふさわしいと私は感じました。



そしてついに、主将が出てきました。
長めの学生注目の後、ついに今年も応援曲ドリルが始まりました。

毎年言っていますが、大事なことなので何度でも言います。


6年前に応援曲ドリルを考えた人は、控えめに言って大天才です。

「応吹にしかできないことを」という思いで始めたこの取り組みは歴史的に見ても素晴らしく、定演を大きく変えました。

これで座奏・ドリルと並ぶ応吹の活動の柱である「応援」も定演で表現することができて、定演が「応吹の魅力全部見せます」という場になりました。応援曲ドリルを考えた卒業生に、深く敬意を表します。

今回特に印象に残ったのは「暁」のドリルです。

「暁」はリーグ戦ではほぼ使われなかったので、ドリルで出てきたときは驚きましたが、楽団はメリハリのついたいい演奏と演技、チアは切れ味の鋭い演技を披露し、感銘を受けました。

まれでかつ難しい曲でも対応できる。応援部のレベルの高さを感じました。すごいですね…


今年も素晴らしい応援曲ドリルになりました。
もはや神宮、いや、それ以上。この一年取り組んできたことが全部出た感じの素晴らしい応援曲ドリルでした。


終了は20時40分。開演前のアンサンブルから2時間50分の夢の空間でした。




最後に、学年別に一言申し上げます。


新人のみなさん、初めての定演おつかれさまでした。物おじせずにいろいろなことに神宮で取り組んでいるところが印象に残っていましたが、定演でもあちこちでいい場面が見られて、大変うれしく思いました。キラキラ感があっていいですね。部員に昇格すると、新しいつながりが見えてくると思います。みなさんの取り組みや工夫がこれからの早稲田の応援を作っていきます。頑張ってください。


2年生のみなさん、多士済々ですね。早稲田の応援席が元気よく応援できたのは2年生のみなさんの起動の速さが大きく寄与していました。そしてみんな頭の回転が速い速い。さらに音にも人を引き付ける力が出てきました。いろいろなことがわかってきたと思うのでこれからその回転の速さと引き付ける力で全体を前に、上に押し上げていっていただければと思います。来年は未来につながる大事な年になります。頑張ってください。

3年生のみなさん、神宮でも定演でもナイスプレーがたくさんあってみんな本当に素晴らしいと思って見ていました。その上よく動けるので試合や定演はもちろん、早稲田全体にいい流れを持ってきていると私は思っています。来年は大きな仕事が待っています。今までと違うこともあるかもしれませんが、みなさんならできます。今までの経験があれば大丈夫です。力を合わせて新しい時代を切り開いて行ってください。

そして4年生のみなさん、長い間おつかれさまでした。毎年言っていますが、私はみなさんの良きわちゃわちゃ感が大好きです。去年、どういう4年生になっていくのか楽しみにしていました。すると、私の想像のはるか上を行く栄光の4年生になりました。活動の幅を広げ、今までになかった取り組みも行い、これまでにない新しい4年生像を作ってくれました。伝統を尊重しつつ、新しい風を吹き込み、早稲田に春秋連覇をもたらす大きな原動力になりました。「早稲田の歴史」という教科書があるのであれば、間違いなく写真が載ると思います。これだけのことができれば、どんな世界に飛び出していっても活躍間違いなしです。みなさんのこれからを心より応援しています。



さあ、まもなく新しい年がやってきます。

来年は東京六大学野球100周年の記念すべき年です。

また新しい早稲田が始まります。



今回の定演を通じて「部員みんなそれぞれ存在感がある」ということを改めて思いました。
しかもそれがいい存在感で、みんないい雰囲気を身にまとっています。

早稲田は名優揃いです。

定演という映画は幕を閉じましたが、早稲田はいつも「つづく」です。来年、どんなストーリーが展開されるのか…今から楽しみにしています。


そして来年の早稲田は…
「抜群」を目指していくことになるのだと思います。


この秋、早稲田は東京六大学野球でリーグ最多記録を更新する48回目の優勝を果たし、優勝回数2位の法政に2つ差をつけました。

法政に2つ差をつけたのは実に40年ぶりのことです。


来年はこの差をさらに広げ、早稲田が群を抜けていることを示す-
つまり「抜群」の一年になるといいと思います。

抜群でとびきりの早稲田になりますように。
期待しています。



今回、素晴らしい、本当に映画のような定演を見せてくださった早稲田のみなさん、本当にありがとうございました。

早稲田でよかったです。

これからも頑張ってください。応援しています。

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