きみが消えてゆく速度よりはやく
2023年5月17日(水)・18日(木)に東京ドームで開催された卒業コンサートのなかで齋藤飛鳥は「恩送り」という言葉を使った。
「恩送り」とは、誰かから受けた恩を直接その人に返すのではなく、別の人に送ることであるらしい。そのため「恩送り」は等価ではなく、贈与=ギフト/giftに関係していると思う。つまり、齋藤飛鳥の「恩送り」とは、君への「オミヤゲ」である。それは君=乃木坂46のメンバーであり、スタッフであり、ファンであり、ここにいない誰かのために送るもの。だから私たちが歌っているという「恩送り」は『シンクロニシティ』のような共鳴ではなく、『Sing Out!』のように唄い踊って分け合いながら広げていくことである。おおまかに言えば初センターであるという『扇風機』では心のざわざわに「あああ」と叫ぶしかなかった齋藤飛鳥が『Sing Out!』という「恩送り」で愛の歌を届けていることに感動してしまう。
「恩送り」=「オミヤゲ」は永野のりこ『電波オデッセイ』になぞらえている。『電波オデッセイ』は消えかけようとしていた少女の心に、受信された電波のように、オデッセイと名乗る者からの声が届く。少女は地球へ来た旅行者で、いつかここを去る時に「オミヤゲ」を持ち帰れる。だからこの世界を楽しんでステキな何かを「オミヤゲ」にすればいい。オデッセイの言葉に支えられ、旅行者として何事も楽しもうとする少女の行動が周囲に波紋を起こしていくという話である。
結論を言えば、少女が見つけた「オミヤゲ」とはステキな思い出であった。そうすると「オミヤゲ」はギフト/giftではなく、スーべニール/souvenir(思い出の意味を持つ贈りもの)と言ったほうがいいのかもしれない。総じて「恩送り」とは思い出を渡すことであるのだろう。
たしかに恩とは言わないのかもしれないけど、乃木坂46にステキな何かを感じたとすれば、「オミヤゲ」=思い出を渡していってほしい。
アンコールの後にステージに戻ってきた齋藤飛鳥は「大丈夫です、このあとも」と言う。齋藤飛鳥が大丈夫と言ったら乃木坂46は絶対に大丈夫だ。いいオミヤゲさがしながらもっと行けるとこまで行くだろう!!!
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