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<第58話+最終回>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~


 この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。


<第58話>
一番バズッたのはやはり園町代表の政見放送だった。
ようやく腰を落ち着けて見る事が出来る。
選挙区内のポスター貼もボランティアさんが手伝ってくれたお陰で主要な場所には貼る事が出来た。
外国党は比例区で4人出馬していた。
代表以外の候補者は3人とも東大出身のハンサムガイで凛々しく、エリート然とした気品ある口調で外務省の怠慢、反日行為、不作為、ドン臭さなどを切々とリレーで訴えた。


園町代表はこれまでwowtubeの動画にアップしてきた内容に止まらず、昨年に起きた外務省の欧州局ロシア課長の事案にも言及した。
「外務省内の女性にセクハラしたと噂される省員の男が停職9か月の処分を受けているが、具体的にどんなハレンチな行動をとったのか国民に詳らかにされていない!」
「外務省たるものが国民からの批判を恐れて駝鳥症候群や駝鳥の平和状態に陥る事態は、この園町瞬太率いる外務省から国民を守る党が許さない!」
「この職員が戦国武将の末裔であっても忖度は無用だ!!」と糾弾した。
まったく、外務省は歴史と伝統ある我が国の顔にどれだけ泥を塗ったら気がすむのか?!
これらの一見難しい内容も、ダチョウをこよなく愛す園町代表の事をまだ知らなかった国民には斬新で興味深い話しとして大いにウケた。
そして、外務省が拉致問題解決、拉致被害者奪還に向けて何の糸口も見つけ出せていない事を厳しく批難し、いつもより力強く「外務省をぶっ壊す!」と決めポーズをカッコ良く決めた。

こんなに外国党の政見放送がネットを席巻しているのだから、「もしや私のTシャツショップも繁盛するのではないか?」と思いちゃっかり自分のサイトをブラッシュアップしていた。


たかゑにもパンツのネット販売を勧めたが「カルレの規約では訪問販売が基本だ」と言われた。
図々しい癖に頭が古い。
何でも新しい事に好奇心を持って取り組む事が若さを保つ秘訣だ!
それこそ、外国党の理念に合致する。

野鳥の会会員オマワリや凸凹デブ警官の監視や尾行も今のところ収まっている。
与野党の候補者は本気で選挙戦を戦っているからそれに付き合う警備や公職選挙法違反の取り締まりに駆り出されているのだろう。
もちろん私だって本気で選挙戦を戦っているのだ。
たまに政見放送をお褒め下さる方からお電話を頂く。
有難い事だ。
あれだけ告示日前にアンケ―トアンケートと言ってきた婦人団体だけが何の反応もない。
あのアンケートを一体どこで誰がどのように活用して如何なる将来に役立てたのか?今こそ聞いてみたい。
が、今となってはどうでもいい事だ。


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<最終回>
運命の投票日がやって来た。
正確には投票日から一夜明けた未明だ。
私は東京にいた。
「園町代表に会わせろ」と卓谷もついて来ていた。
「嬉しそうだな」
「あったり前じゃん!だって公党になったんだよ!全国で2%も投票してくれた有権者がいたんだよ!」
園町代表も詰めかけていた新聞社、TV局、ネット配信社、フリーの記者たちに「これは烏合の衆の勝利だ!この日本に正義のパンデミックが起きる!」と喜びの声を上げていた。


「三重県でも40,906票、美賀市で2,050票も投票してくれたんだもん!嬉しすぎるよ!」
手の平のスマホが熱くなっていた。
熱狂する記者会見場の喧噪を逃れ、卓谷と2人でナマケ猫新宿店にやって来た。
ここが一番落ち着くのだ。
程よく店員が不愛想なのが安心出来る。
卓谷は園町代表に会いそびれ、かなり残念な顔をしている。
「今や時の人となったのだから仕方ないよ」とたこ焼きとジャンジャーエールを勧める。
選挙期間中、美賀市で起きていた騒動は誰にも言えない。
スマホ画面の中に見る候補者、スタッフ、ボランティアの姿は小さいが、この仲間たち一人一人が、日本にとって大きな革命の卵になる!と私も皆と一緒に使命感と喜びで胸をパンパンに膨らませていた。


「さあ、卓ちゃん、これからが本番よ!」
「あ?」
「2カ月後に美賀市議選があるの。選対よろしくね!」
「へー、面白そうじゃん!」
WOW!そりゃぜひ、俺に告示日の選挙ポスター貼りボランティアさせてよ!」なんて言う訳もなく卓谷は黙々とたこ焼きを食べていた。
どうせそんな反応だろうと卓谷が横を向いてる間に、スマホをさっと指でタッチする。
再度、ショップの管理者画面を見る。
あった!そこに「1907イイネ」が。
自分の政見放送がオンエアされる前日、私は自分のショップにアイテムを一つ追加していた。
「STAY ALIVE!」と書かれたTシャツを






*長い間、お付き合いくださりありがとうございました。

*朗読動画をうpして下さっている小山ひな子様にはこの場をお借りして改めて感謝申し上げます。


*梅雨の時期に気が向いたら、「外務省をぶっ壊す!」スピンオフとして続けていこうと思います。

*参考文献

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