<第52話>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~
月曜日~金曜日更新
この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
<第52話>
私がやらねばならない最大のミッションはこれだ。
「外務省をぶっ壊す政見放送」を完膚なきまでに日本国民の胸に刻む事だ!
ミッションばかりだが、これが最大のミッションだ。
カエルの被り物で行うと予告している候補者もいて、みな切磋琢磨して頑張っている事は各候補者のSNSで確認出来ていた。
卓谷設定の着信音が鳴る。
「まだシャバにいるのか?」
なんだかんだで心配してくれるところがキャプテンである。
「お陰さまで」
気のおけない友の声を聞いてホッとする。
「明日、政見放送なのよ、プレビュー公演するんだけど観に来ない?」
この際、心配してくれた気持ちに便乗する。
誰にも披露していない出し物を客観的に見てもらい、感想を聞きたかった。
「ああ」
卓谷が、サラリーマンが務まらず自由業でいてくれる事が本当にありがたい。
彼も園町代表のガッツに魅了され政治に関心を持ち始めてきたのが分かる。
お言葉に甘えて「じゃあ、ナマケ猫で待てって!」と言って、マッハで現場に向かう。
「ふふん」
野鳥の会会員オマワリめ、今頃、仕事にかこつけてダム湖でダイサギを見つめているのかな?
それともダイサギを見ながら浮いて来ない井戸の死体でも待ちわびているのかな?
いずれにせよバカである。
ダイサギにすら相手にされてない。
勝つのは私だ!とアクセルを踏み込む。
ナマケ猫は今日も空いていた。。
「・・・という事で、外務省をぶっこわ~す!」と卓谷に一通り最後まで演じて見せた。
「ま、いいんじゃね」と素っ気なく言うだけだった。
「何よ、これで私は日本をひっくり返すんだから!なんか有効なアドバイスないの?」
この政見放送で外国党は一気に政治の表舞台に踊り出る!そんな自信が我々にはあった。
「お前のショップ見たけど、全然面白くねーな」
「あれはもういいのよ。もう3000万円は払わなくて済んだから」
「で、イイネがどうしたって?」
卓谷の興味はそっちだったのか。
「だから1907イイネがDV男をぶっ壊す!Tシャツについてたんだってば。非公開にしてるけど」
「それが、自首だとして、なんでお前んとこに?わかり辛ぇーだろ」
昨晩ほとんど寝ていないのに、脳にアドレナリンが噴火していた。
「私、考えたんだけどさ、結局、誰かに分かって欲しかったんだと思うよ」
いくら粋がってはいても、物心ついた頃から真面目に生きてきた男が簡単に人殺しなど出来るものではない。
「で、命の恩人の辻崎さんを助ける為にあれこれやって、船盛にも近づいて、それもダメで、どうしようもなくなって」
「ん?なんで自分まで辻崎さんを虐めるんだよ」
「それは、辻崎さんを犯人だと思わせといて・・・」
「否違う、逆か?辻崎さんにはクレーマーがいっぱい寄って来るからイチイチ殺してたらキリがないから辻崎さんに殺人なんか出来ない。よって犯人じゃないって言う設定を作って・・・。真犯人は別にいるぞ・・・みたいな」
「捜査のかく乱を狙ったのに、お前が真犯人になったんだな」
「なってないわよ!あれは全部、パンツ売りのたかゑが吹き込んだせいよ!」
「要するに、カモフラージュね。中山は辻崎さんを虐めてるから、辻崎さんの為に人殺しなんかしないっていうか・・・」
「なるほど」
「船盛に近づいたのは?」
「それは、まあ、県会議員だし、何とかしてもらおうと思ってって事なんじゃないの?」
「そんな、弱腰でネガティブ思考の玉か?」
「え?家族思いで正義感のある人なのよ!」
「俺に初めて会った時のあの権幕、凄かったぞ!」
「んー。確かに」
こう見えて卓谷は柔道3段の漢である。
そんな自分より大きくて日焼けしてマッチョでヤバそうな男に初対面からケンカを売る奴はいない、
「あれ、完全に計画的やぞ!」と卓谷が言った。
つづく。
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