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文系大学院生(修士)のリアル

こんにちは。厚木です。

今回は自分の視点から文系大学院生のリアルな実態について書いていこうと思うんですよ。

まず大学院のシステムについて軽くおさらいします。
大学院にはさまざまな課程が存在しますが、一般的には、修業年限2年の修士課程と、修業年限3年の博士課程に分けられます。
簡単に言うと、学部生以上に専門性を身につけるのが修士(博士前期課程)で、そこから研究に特化したのが博士(博士後期課程)です。


次いで僕の記事を初めて読む方に自己紹介
進学校 →  底辺私大 法学部 → 同大学の大学院 法学研究科 修士2年 23歳

学部時代は3年から就活を開始し国や地方自治体、いわゆる公務員を志望していました。しかし第一志望に落ちた後は敗戦処理の就活にイマイチ身が入らず自分のやりたい事も分からず…そんな中、お世話になっていた教授に誘われて大学院に進学しました。

つまりは7割くらい成り行きで文系大学院になった人間です。

成り行きで文系大学院になったこんな僕が、文系大学院に来て良かったと感じた点/悪かったと感じた点を解説していきたいと思います。


良かった点

①就活リスタート
これは私の学部生時代の就活のケースですが、就活は通常、民間が先に始まり冬の終わりから春にかけて公務員系が募集を始めます。
つまり公務員系に絞って就活を始め、納得いく結果が得られなかった場合そこから民間に手を伸ばすことは民間就活として非常に大きく出遅れていることになります。
加えてそういった背景からメンタリティ的にも「今さら民間に手を出せない」というカスのコンコルド効果も生まれ、実に苦しい状況に立たされます。

公務員系を志望して追い込まれた人間がどこに手を出すかと言いますと、民間にあぶれた優秀な人材をすくい上げるための大規模な地方自治体の僅かな秋採用枠or国家公務員 総合職 教養区分といった99%ノーチャンスな枠に一縷の望みをかけて出すか、都道府県内のいわゆる田舎の市役所・町役場を縁故マシマシの地元民と争うか、といった様相を呈します。

まぁこんなのでモチベーションなんて出ません。

そういった就活の失敗をふりだしに戻せるのが院進のメリットだと感じます。

②研究を極められる
これは僕がゼミから扱い始めた研究テーマが現在進行形で進展しており、行く末が気になっていたことからこの研究を引き続きできるというのは魅力的でした。
同じ教授の下、4年間研究ができるのは幸せです。

③専門性がアップする
皆さんが大学で何を学んだか/学ぶか、恐らく普通は学部名を冠した分野を学んだかと思います。
が、文系が就活で使うガクチカは大概アルバイトだとか社会奉仕活動とか、スポーツかサークルかを頑張り社会性や能力を養ったという内容のものがほとんどです。というか王道です。

文系の就活で学部の学問を掘り下げた話なんてのはあまり使われません。

何故か?社会が文系の大学生に求めているのは人間関係の中で上手く立ち回れる能力だからです。
文系大学生が大学の講義を頑張った、なんてのは当然のことです。あまつさえ、文系大学生は講義なんか先輩に貰うシケプリやツテのような使えるものを何でも使って"うまく"やってきたかという点すら、表立っては誰も言いませんが暗黙のうちに"良し"とされていることです。

それ以外の有り余る時間を用いて何を研鑽してきたか?その具体的な成果を人事部は求めています。


これをバカバカしいと思える人間であれば、文系大学院に行くべきです。大学院で専門性を高めることで学業面をアピールすることが出来ます。

ただ一つ留意したいのはこの専門性という点です。大学院でやっていることと接点が見つからない志望先で面接があったとき、確実に「大学院まで行ったのに何故?」という質問が付き纏います。あらかじめ考えておくと良いでしょう。

④(+‪α‬)士業への道が近付く
いわゆる専門職大学院だけのお話になってしまいますが、士業の試験が一部免除になる制度が用意されているなど各専門分野に関連した士業の資格取得を支援しています。
研究と両立させながら士業を狙う、そういった美味しさがあります。



悪かった点

①就活支援が手薄い

これも(弊学の場合は)という前提が付きますが、大学院生に向けた就職活動支援というのは基本的にありません。就職支援課に行っても案内されるのは大卒向けという括りであり、大学の就活指導員との個別相談の内容も雲をつかむような、要領を得ないような、院卒なんか分かんねぇよという困惑が伝わってきました。
基本的には独力で、相談するにしても指導教授に頼ることですね。

博士課程を最初から見据えている人ならこの点は最初から指導教授との話になるので大したデメリットにはなりません。


②焦燥感
22歳~で大学院に進む、ということは同い年が就職し働き始め、現役ストレートと考えても23歳24歳+αを大学院で過ごすことを考えてください。同い歳は就職してある程度の時間と引き換えに自由と賃金を手に入れ、かつ元気がまだある歳です。
かたや自分は学業の延長戦、いくら胸を張って「自分は研究をしに来た」と言っても就活や発表会が同窓会や旧友の誘いと被ると、自分と多数派の距離を感じられずにはいられません。

そしてこれはそもそもの話、基本的に文系で修士というのは就職活動においてはさほど威力を持ちません。
大卒だろうと高卒だろうと、会社は即戦力を求めているワケではありません。会社の事業に応用できる学業をやっていたとして、それは即戦力"性"です。理系院生はこの点、即戦力性が高く積極的なリクルートが行われますが、文系大学院で研究した内容が即戦力性を持つことは非常に限られているのです。文系においてはあくまで人材を取り、育てるのは就職後です。

そして、大学院は就職予備校ではありませんから、研究の経験こそあれど就職したら1から始まります。2年間という期間のリターンという意味ではペイしにくい現実があります。

③博士号 取得の難しさ
学士で卒論を書いて単位が出れば、学士号は貰えます。しかし博士はイバラの道です。
詳細は長くなるので省きますが、簡潔に言うと
・博士号の取得は非常に難易度が高い
・在籍期間も伸びるのが当たり前
・博士課程の講義の単位を取りきれば単位取得満期退学となる。実質は修士卒扱い
・博士号取得後の研究者ポストも空き待ちのような状況である

ということです。
せっかく大学院に行くなら…と博士を目指しても、並大抵の努力では敵いません。安全牌となるのは修士で就職しておく道です。
ただ、博士課程にも満期退学というのがありますから、博士号を取れないにしても修士以上に極めたいならこういう道もあります。



総括

以上、文系大学院生は良くも悪くもこういう場です。これだけ聞いてればあまりよくない印象を受けるでしょう?結局、大学院とは本人のやる気次第な部分が大きいのです。
「文系大学院はモラトリアムの延長」
こう言う人もいますが、たしかに必要な単位を取得してあとは修論を書く。それだけなら自由な時間は学部生並に取れます。しかし熱意を持って没頭し磨くことを選択すれば時間はありません。

加えて言いますが…………そもそも、文系大学院とは酔狂なものなのです。様々な選択肢がある中、ここに進むことを決めたような人間にとって列挙したデメリットがいかほどの意味を持ちましょうか。研究の役に立つ立たないが一人の人生においていかほどの重要性を持ちましょうか?酔狂こそ文系大学院の本懐であり、研究の本懐だと僕は思っています。

それだけじゃありません。先達から「なんの関係も無いと思っていたことがどこかで突然繋がってくる。決して無駄な時間ではなかった」という話をいくつも聞いています。

ぜひ文系大学院にいらしてください。人生は長いですから。

おわり

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