«分析»若い集団を率いる難しさ リヴァプールvsライプツィヒ
こんにちは。Atsudです。今回はUEFAチャンピオンズリーグラウンド16リヴァプールvsライプツィヒ2ndレグを分析します。
2得点が必要最低限のライプツィヒと、アンフィールドで6連敗と絶不調のリヴァプールの一戦です。
1stレグのおさらい
この試合はトーナメントの2ndレグだから流れを掴むためにも1stレグを復習しよう。結果と反してライプツィヒがやりたいことをできた試合となった。その方法論はビルドアップ時にフィルミーニョの守備を無効化する配置と前進するときの右サイドでのオーバーロードだった。
3バックに対して3トップをそのまま当てられ、またフィルミーニョのカバーシャドウによってアンカーのカンプルを消されたが中盤をダブルボランチ化することでこの守備を無効化し、位置的優位を確保しボールの前進を促進した。
もう一つの攻め方として外切り中締めを狙うリヴァプールに対して右サイドでオーバーロードを作りボールをサイドに送り込み、そこから一気にライン間や最終ラインの裏にボールを送り込むことで効果的な攻撃を見せた。
1stレグの詳細は下の記事を参考に
ラインナップ
1stレグの反省を生かしたリヴァプール
リヴァプールは守りの部分、特に静的なハイプレスのやり方を1stレグから変えてきた。下の図(左)のように1stレグではアンカーをトップのフィルミーニョ(赤9)がカバーシャドウで消しながら守る形を取っていたが、ライプツィヒはザビッツァー(白7)が下りて2ボランチ化することでカバーシャドウを無効化し、位置的優位を確保した。一方、2ndレグ(下図の右)ではライプツィヒの3バック+2ボランチに対しマンマークすることで相手の前進を妨げることに成功した。ロングボールを前線に蹴られることを想定して3トップがなるべくそれぞれのマークするCBとの距離を縮めているところもクロップの細部にわたるマネジメントの一環であろう。
では実際の具体例を見ていきたい。先ずは10:45の場面。ここではまさに上の図の通りになっている。ウパメカノ(白5)はクロスターマン(白16)に出すしかない。さらにクロスターマンも出し手が見つからないままサラーに詰められたことでボールロストしてしまった。
16:30でも先ほどと同じようなシーンが逆サイドで起こっている。ここではマネとムキエレに距離があったためムキエレは前線にボールを置きりこむための十分な時間が与えられていた。
枚挙にいとまがないが、17:45もそうだ。ここではマネが機転を利かせ、シャドウのフォルスベリへのパスを警戒してムキエレへのマーキングではなくハーフスペースのカバーを選択し、見事ボールを奪い取ることに成功している。
ナーゲルスマンが用意した相手の弱点を狙う策
3CBからの組み立て・攻撃としてナーゲルスマンが用意したもう一つの策は、シンプルな攻撃だ。そしてシンプルに相手の最終ラインの裏にボールを送り込むやり方は主に左サイドで行われた。理由は相手の戦力の面だろう。もう一度スタメンを見返して欲しい。右には決してトップレベルの選手とは言えないフィリップス、守備の面では脆さがあるアーノルドやサラーがいる。反して右サイドは、カバク、ロバートソン、マネそれぞれのポジションの中では守備に関して他を上回る実力の持ち主である。最終ランの左側を狙う動きはチーム全体として見られた。
この策に重きを置くようになってからライプツィヒは全体の重心をあげるべく、リヴァプールに対策されていた2ボランチのところをカンプル1人にしていたところも注目だ。
リスクを冒さざるを得ないライプツィヒ
後半に入ってからライプツィヒはリスクを冒して前に出てくるようになった。3-1-6の形だが完全なCBはムキエレとウパメカノの実質2人で、クロスターマンはアンカーと同じ高さまで上がって攻撃の補助をしていた。
下の図でも右ワイドのアダムズは絵から切れているが、6人で幅を取り、攻撃する。その中で、三角形を作るためにもクロスターマンが補助するために上がることは仕方のないことだ。
下の図は完璧にリヴァプールの裏を取ったシーンだ。相手は4バックを維持したため、必然的にこのようなシーンが出てくることは多かった。
このように攻撃面でポジティブな面が増えた一方で守備面ではやはりリスクが出てきた。リヴァプールの先制シーンもDFとしてワールドクラスの選手が3人しかいないのに、そのうちの2人が前に出てボールを取りにチャレンジしたため、世界最強ともいえるリヴァプールの3トップに対して脆さが倍増してしまった。
ライプツィヒの得点力不足は明白
ナーゲルスマンの作戦は相手の対策も踏まえたうえで非常に練られたものだった。しかし得点は入っていない。ここの原因はやはり戦力だと思う。昨シーズンのブンデスリーガではレヴァンドフスキと得点王争いしたほどの得点力の持ち主であるヴェルナー。この大きな穴を埋めるべく今季は少人数が点を多くとるのではなく、みんなでちょっとずつ点を取る戦い方にシフトチェンジした。しかし、このような大舞台で点を取らなければならない時にはやはりトップクラスのスコアラーが必要なのではないだろうか。
例えば1stレグのファンヒチャンの試合終了間際のシュート。ここのシュートが決まっていれば2ndレグの戦いはもっと楽になっていただろう。この試合で言っても63分のファンヒチャンのシュートも同様だ。
若い集団をトップレベルで指揮する難しさ
試合を一通り見て、若さも敗因の一つだったと思う。特にこの注目のカードを決定づけたマネのゴールシーンはトップレベルのプレーではなかっただろう。諦めてしまっていることが表に出てしまった失点シーンだった。
無念のCL敗退となったライプツィヒだが、これからに向けてポジティブ要素がある。ブンデスリーガの優勝争いだ。悲願達成に向けて、失望感から以下に抜け出し、バイエルンとのタイトルレースで勝ち切れるのか。若い集団がチャンピオンズリーグという世界最高峰の舞台で得た経験を活かして欲しい。