偽サイドバックに関してとんでもないブログ記事を見かけました【言語化の話】
こんにちは。Atsudです。いきなりですが、ふと「偽サイドバック」ってイギリスでは何と呼ばれているのだろうと思い調べてみるとこのようなブログ記事を見つけました。
偽サイドバックとは
この文を読んでいる人は偽SBをすでに理解していると思いますが、一応お話しておくことにします。偽サイドバックとは、バイエルンやマンチェスター・シティでグアルディオラが積極的に使い話題になったサイドバックの配置のことです。ボール保持時にサイドバックをIHの位置に配置し、4-3-3から2-3-5に可変させて攻め上がりることで攻撃が活性化し、攻→守(ネガティブトランジション)の局面でも守備が安定する、といったメリットのある配置論です。ペップがバルセロナ時代にメッシの位置を下げた配置論「偽9番」を参考に生まれた言葉だと思います。偽サイドバックについての詳細は下のfootballistaの記事を読んでください↓↓
批判記事の内容
最初に紹介した記事では主に2つの主張がなされていました。1つ目は「偽サイドバックなんて1980年代、クライフがすでに取り入れている戦術で日本のマスコミは新戦術なんて言って無知な日本人のサッカーファンをだましている」というもの。2つ目は「偽サイドバックなんて戦術用語、そもそも世界で全く使われていない。日本だけだ」というものです。
反論
このブログの記事を読むとなんだか正論に感じてくることがあるかもしれません。ぱっと見、論理が破綻しているとは思わない人もいると思います。しかしながら、サッカーに関する知見や考え方がある程度あればこの記事に反論できるでしょう。
まず、1つ目の主張。「偽SBは昔からあった戦術で新戦術でも何でもない」というものです。確かにこのブログ記事ではクライフ率いるバルセロナが偽SB的なことをやっている映像がありました。しかし、現代サッカーにおいて勝利を追究する中でで生まれた新しい概念・新戦術だと僕は思います。具体的にグアルディオラは、スペースと時間が限られる現代サッカーで、どのようにボールを保持するかという題の中でたどり着いた答えが偽9番であり、偽SBでありハーフスペースなのです。同じ結論があったとしても、その結論までの道筋が随分と違うと思います。
別の観点から反論するならば、「じゃぁ偽9番はサッカーが始まったときからみんなやってたよ」という話です。ペップがクラシコでメッシを1列下げて、レアルのDFを惑わしたことが偽9番誕生の瞬間ですが、実際ずっと昔からこのような動きをとるFWはいたそうです。当時は言語化されてはいないですが現象として偽9番のようなことが昔のピッチ上でも行われていたということです。すなわち偽SBを始め、偽9番やハーフスペースなど新戦術用語として挙げられている概念は全てずっと前からピッチ上で起こっていた現象で、それが言語化によって定義されたものではないでしょうか。
別に言語化は誰がどう定義しても自由なわけです。実際にレノファ山口では逆サイドの最終ライン上のワイドドレーンに送るパスをアタッキングパスと言語化してチーム全体で共有しています。詳しくは下の記事で↓↓
あと、この人に名指しで詐欺商売と批判されたfootballistaでは偽SBのことを最新の戦術用語とは言っていますが新戦術として紹介はしていません。
そして2つ目の主張について、「偽SBは海外では使われていない。日本だけだ」というものです。
え?別に良いやん。世界で定義されてないものは戦術用語として使っちゃあかんの??
という話です。先ほど紹介したレノファのアタッキングパスもそうですが、別にイギリスでもイタリアでも定義されていない言葉だから、共有してはいけないのでしょうか。
実際に世界で"false side-back"とは言われていませんが、2020-2021シーズンのマンチェスター・シティを語るうえで欠かせないカンセロの偽サイドバックは、イギリスでは"cancelo role"として言語化されつつあります。
まとめ
他にもこの人が書いた信じられない内容の文章はありましたが、ここまでとします。ピッチ上で起こっている現象に関する言語化は誰がどのようにしても自由ですし、footballistaはサイドバックのIH(インサイドハーフ)化を偽SBと定義しそれを広めることで、日本サッカー全体でのこの戦術に関する共通認識を生み出したと思います。何なら2つ目の「偽」の誕生で、DAZNでの中継を始めとして偽CBや偽WGなど些細なポジション移動に関して「偽~」と表現し考えていることを短く的確に共有できるようになりました。とにかく言語化は誰がどうやっても自由です!!
読んでいただきありがとうございます。もしよければスキ、とフォローをよろしくお願いします。ではまた✋