«分析»20/21 EPL 17節 Chelsea vs Man City Match Analysis
こんにちは。Atsudです。今回は20-21プレミアリーグのチェルシーvsマンチェスターシティを分析します。今季1.2節を一通り見て優勝候補に挙げたチェルシーと、僕がこうして戦術分析に没頭するきっかけとなった人物であるグアルディオラが率いるマンチェスターシティの戦いです。試合が大きく動いた前半を中心に分析してみました。
では分析をどうぞ。
ラインナップ
ランパード、グアルディオラがそれぞれ2021年の初陣へと送り出した11人にマンシティのGKがSteffenであること以外特に変わった点は無かった。我々の日常を、出現から約1年が経った今もなお壊していく新型コロナウイルスはマンシティの守護神にも襲い掛かった。そのため、ペップはSteffenの起用を余儀なくされた。マンシティの攻撃の基準点となるビルドアップという面では確実に影響が出るだろう。また、チェルシー側としてはここを利用して相手の優位を消すことも頭に入れておかなければならない。もう1つ注目点を挙げるとするのならばDe Bruyneのトップ下起用&ゼロトップだ。
序盤の攻防
入りの15分はチェルシーが善戦した。ビッグチャンスは無かったものマンシティの前進を防ぐことには成功していた。そしてそれはシティのやりたいサッカーをさせず、チェルシーが試合を優位に進めていたことを意味する。
序盤、シティのビルドアップの形だ。チェルシーがシティの攻撃を防いだ例として3:25のシーンを取り上げる。この試合でシティは基本的にCanceloを中盤ラインに上げ、残りの3バックとピボットのRodriの4人で相手のハイプレスをはがす形をとった。Rodriは非常に的確なポジショニングによってSteffenからのパスを引き出すことに何度も成功していた。しかしRodriにパスが通ってもKanteは決して単調にプレスを掛けにはいかず、Cancelo、B.Silva、Gundoganへのパスコースを消すことを優先した。
9:35ではシティのゼロトップ戦術にも対応していたように感じる。上の図にもあるようにDe BruyneにはZoumaが厳しくチェックしていたため、DiazやRodriからの縦パスが収まらない場面が見られた。ここの対応に関してはKanteがDe Bruyneを意識せず中盤のバランスを取りながらポジション取りをしており、ライン間で漂っているDe BruyneにはZoumaが担当する、という明確な対応を見せていた。
一方でチェルシーの攻撃を見てみたい。
チェルシーはシンプルな形でビルドアップを試みた。それに対してシティも理論にのっとったきれいな形で静的なハイプレスを掛けた。Kanteに対してはDe Bruyneがマンマーク、ChilwellはB.Silva、若くて運動量のあるFodenはT.SilvaとAzpilicuetaを担当した。しかしながらハーフスペースに位置取るMountにパスを通され、前進を許したシーンが何回もあった。原因は中盤を3人で守っているのにB.Silvaにサイドバックをマークさせたからだ。シティのハイプレスは2ピボットのワキのハーフスペースを上手く使われ、機能しなかった。決定機にはつながらなかったが、ハイプレスでボールを取ることからシティのポゼッションは始まるため、攻守で戦術的に機能しなかったことがシティが序盤にゲームを支配できず苦しんだ理由であろう。
ゼロトップ戦術の真意
15分の苦しい時間を乗り越えたシティは徐々にゲームを支配することに成功し始めた。ペップの修正能力はすさまじいなと思った。チームとしての狙いがはっきりしたシーンの特徴として2点目のシーンをあげたい。
先ず、ビルドアップの場面で中盤3人が最終ラインに近づいてチェルシーのMFを引き付けているのが分かる。Gundoganを経由してZinchenkoにボールが渡る。
チェルシーの中盤を前に引き出したおかげでDe Bruyneが完全にライン間でフリーになっていた。
ここでDe Bruyneが技を見せる。ダイアゴナルなパスを中央で受けず、サイドに寄ってパスを受けた。これは何を意味するかというとZoumaに詰められるまでの①距離を引き延ばし、さらにZoumaを中央から引きはがすことで②CBがT.Silva1人という状況を生み出した。これによって①Fodenへのパスを通せる時間を作り、②ゼロトップ(いわゆる偽9番)の長所を利用することに成功した。
結果的にDe Bruyneにボールを返したFodenがDFのいないペナルティエリアで正確なアシストを受け得点した。チェルシーを完全に崩したシティの攻撃は魅力的だった。
まとめ
後半は3点という大差がついた中で次の試合に向けた戦い方をしていたため、主に前半を分析した。当たり前ではあるがシティはやはり強いな、という印象を受けた。昨シーズンはリバプールに大差をつけられ、今季も序盤は順位を大きくさげておりペップの悪く言えば理想主義的な戦い方に批判もあったが、極端なリトリート戦術を使わず勝ちに行こうとする相手に対しての駆け引きはEPLの中でも一級品だなと感じた。
一方でチェルシーは優勝にはまだ足りないものがあると感じた。攻撃陣の脆い守備と、ポゼッション時のボックス付近での流動性のなさは強豪を相手にすると露呈してしまう。直近6戦で1勝1分4敗と急失速しているチェルシーだが、近年稀にみる今夏の大型補強の成果を出すためにも何とか不振から抜け出して欲しい。
感想
以上が分析です。冒頭でチェルシーを優勝候補に挙げていると言いましたが、リバプール戦やガナーズ戦などを見ても前線からの守備には脆い部分があるなと感じています。シティが5点でも6点でも取れるような試合でした。Mendyのビッグセーブや相手のミスなどに救われていましたが、これでは強豪相手には善戦は厳しいと思います。ここに関しては正直開幕戦から感じてはいましたが、そろそろ改善しないといけません。シティのFW陣の守備と見比べると、Fodenがプレスバックを何度も何度もしていますしDe Bruyneも与えられた役割を堅実にこなしています。
スパーズなどを見ても思いますが、アグレッシブなサッカーが好まれるようになった現代サッカーではありますが、先ずは守備が何より重要だなと感じた一戦でした。