«分析»アトレティコ(ラリーガ首位)が苦しんだブカレストの夜【前編】 vs Chelsea
こんにちは。Atsudです。今回は2/24の早朝に開催されたUCLラウンド16のアトレティコvsチェルシーを分析します。長くなりそうだったので前編、後編の2つに分けて投稿します。先ずは前編です!!
では、分析をどうぞ。
アトレティコのゲームプラン
この試合、アトレティコはリトリートとハイプレスに重きを置いていた。特に前半はボール保持率が28%と異常なほどに低かったことからもアトレティコがこの試合を守備的に挑んだことは分かるだろう。確かにサウサンプトン戦でのチェルシーを見たときに、トゥヘルのもとでの攻撃はまだ整理されていないように見えた。故に非保持の局面では引いて守りカウンターを狙う、というプランはアトレティコのスタイルにもあっているし選んでもおかしくはない手段だ。そして特に序盤に見られたのが、チェルシーのビルドアップ時にハイプレスを仕掛けるプレーだ。ハイプレスでうまくハメてチャンスに繋げたシーンは少なくなかった。
したがって、この試合ではリトリートからのカウンターかハイプレスでハメて速攻、という2パターンの攻撃と守備を以ってしてチェルシー戦に挑んだ、と予想することができる。
アトレティコのハイプレス
では先ず、序盤に多く見られたハイプレスに注目したい。下の図はミドルゾーンでのプレスだ。チェルシーが3バック+アンカーのダイヤモンドでビルドアップするのに対して、6-3-1で守るアトレティコは前4人をそのままダイヤモンドに当てることで対応していた。
コヴァチッチをカバーシャドウしながらワイドレーンに誘導しボールを刈り取ることに成功している。
アトレティコのリトリート
では次にアトレティコのリトリートに注目しよう。基本的には6-3-1で守る。両WBはオドイ、アロンソにそれぞれマンマーキング。その1つ内側のジョレンテとエルモソはハーフスペースに漂うヴェルナーとマウントを意識。中の2人は2トップ(ヴェルナーとジルー)を見る形を取っていることが分かる。
チェルシーの適応
チェルシーはアトレティコのハイプレスとリトリートを掻い潜っていた。先ずはハイプレスへの対応から見てみる。基本的にコヴァチッチがCBに近づき、ハーフスペースに顔を出すことでハイプレスから防ぐことができる。下図のようにコヴァチッチが下りることでヴェルナーがライン間のハーフスペースに入ることができ、左サイドで三角形を作れるからだ。コヴァチッチがライン間にいたと想像してほしい。先ほど紹介したアトレティコのハイプレスのようにコヴァチッチはカバーシャドウで消され、CBのリュディガーにプレスがかかってしまい、ワイドで詰められる。
また、下の図は最終ラインで数的優位を作りプレス回避に成功した場面だが、コヴァチッチが下りてくることで、今度はジョルジーニョに掛かるはずのプレスが、存在しない。再度コヴァチッチがライン間にいたと想像するとサウールはジョルジーニョにプレスを掛けていただろう。
このようなチェルシーの適応により、アトレティコはハイプレスを仕掛けることも無くなってしまった。
チェルシーのポジショナルプレー
では最後にチェルシーのポジショナルプレーに注目してみよう。前半は得点こそなかったが、72%のボール保持で試合をコントロールしていた。この試合におけるコンセプトは、幅を取って左右に揺さぶり6-3-1のスキを突く、というものだ。とてつもなく抽象的で僕の嫌な表現だが、相手が6バックでリトリートするもんだからこのように設定するしかない。
相手が6バックで守るので、当然ワイドに広がることになる。左右共にWBが高い位置で幅を取っていた。基本、左サイドにボールが来るときはワイドのアロンソ、ハーフスペースのヴェルナー、IHのコヴァチッチで三角形を作る。また、特に左サイドにいるときのジョルジーニョは注目だ。
左でオーバーロードを作り、アトレティコのDFラインの背後に抜け出した右WGのオドイに対角への中距離パスを送り込む。この形は頻繁に使われていた。
右サイドではマウントとオドイの関係の良好さが際立っていた。2人はユース時代からチェルシーで共にプレーしており、そのコンビネーションは素晴らしいものだった。
下の図はそれが最もよく表れたシーンだ。先ずはサイドチェンジの流れでボールが右に流れる。アトレティコもこの時点では各々にマーキングできており、何の問題も無い状態だ。
しかしながら、オドイにボールが渡った時点でマウントがインテリジェンスの高いオフザボールの動きを見せた。敢えてオドイに近づくことでサイドラン際で2vs1の数的優位を確保した。下図に示した順番通りに事を進めた。また、もう1つ注目してほしいのが右ワイドでの局面とペナルティエリアの局面の間にあるギャップだ。
マウントがこのギャップ(一般に言われるチャンネルとは意味合いが違うように感じる)を把握したうえでプレーしていたかは不確かではあるが、結果とそてこのギャップを、オドイ=マウントで巧みに利用し、ペナルティエリアに有効な形でボールを持ち込んだシーンだった。
また、チェルシーは中央のエリア、いわゆるバイタルエリアを攻略することも厭わない。アトレティコは基本的に6-3-1で守るため、中盤が3枚であることが弱みとなる。ということはアトレティコにこのエリアに関して少しでも油断が生まれると一瞬にしてライン間に侵入することができる。6-3-1で守備をするチームにとって最もしてはいけない油断が生まれたのが下のシーンだ。コヴァチッチが中に寄ってきたことでスアレスの守備(特にジョルジーニョに対するカバーシャドウ)は無効化された。
ジョルジーニョとコヴァチッチに対して守備者はサウールの1人。ここまできたら下図のようにレイオフが成立。アトレティコに冷や汗をかかせるのには簡単すぎる状況だった。
このように、ジョルジーニョやコヴァチッチを経由したポジショナルプレーは多種多様だった。さすがはトゥヘルであり、ジョルジーニョである。