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«分析»ライプツィヒの戦い方 vsリヴァプール

 こんにちは。Atsudです。今回はチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦1stレグ、ライプツィヒvsリバプールを分析します。ナーゲルスマンのファンとしてはショッキングな試合になりました。試合を通してライプツィヒは上手く行っていないようで上手く行っていたと思います。ここの感じ方は捉え方によります。やりたかったことの下準備はできていましたが、リヴァプールの対応やそれによる起こしてはならないミス、自分たちのプレー選択などが絡まって負けに繋がったのではないかと思うわけです。このような誰しもが持つ抽象的な考えを分析で解体していきます。

 では、分析をどうぞ。

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位置的優位(裏のスペース)を狙うライプツィヒ

 他の優秀なアナリストやコーチと同様、前半のライプツィヒの状態は印象より良かったと思う。ナーゲルスマンの大きな戦略は相手の裏にできるスペースを活用することだった。この狙いが顕著に表れたのは主にビルドアップ(プレス回避)の局面だ。この試合、ライプツィヒは3バックでビルドアップを始める。クロスターマン、ウパメカノ、ムキエレはそれぞれ足元の技術に難が無いDFだ。一方、リバプールは3トップでそれぞれの3CBに当てることで対峙した。その中でリヴァプールにとって重要となるのがフィルミーニョのアンカーに対するカバーシャドウである。3バックに対して数的同数で圧を掛けられるうえにアンカーまで抑えることができる。リヴァプールのハイプレスはライプツィヒ戦に限らずこの形を主にする。これに対する策としてナーゲルスマンはアンカーポジションまで下りる動きを前方の選手、特にオルモ、ザビッツァー、ハイダラに要求した。このことでカンプルはリヴァプールの黄金時代を築いたクロップ政権を象徴する3トップの裏にできた広大なスペースを獲得することになる。

 下の図でもこの方法が用いられていることが分かる。オルモが下がることでフィルミーニョのカバーシャドウは無効化され、3トップの裏でカンプルが自由になれている。一方、ボールを受けたオルモには2つの選択肢が与えられたが本来のチームの意図とは違う②を選択した上にパスミスをしてしまった。もし①をワンタッチパスで遂行していれば、カンプルはオルモに付いてきたワイナルダムの裏のスペースを中央突破し、バイタルエリアに簡単に入ることができただろう。確かにリバプールの中盤のプレスの力とオルモの体の向きを考えたときに正しい選択をすることは心理的にも難しかったと思うが、残念な場面であった。

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下の場面でも同様だ。今度は左サイドのザビッツァーが下りてくることでライプツィヒは中盤で位置的優位を確保する。この場面は後ほど違うコンセプトの例として登場してくる。

LeiLiv ビルド

オーバーロードを生み出す:局面打開

 ナーゲルスマンがボール保持の局面に関して実行したアイディアは主に2つある。1つはすでに書いた通りの裏のスペースを狙うポジショニング。そしてもう一つがオーバーロードだ。オーバーロードとは英語の"overload(=過負荷)"からそのまま来た言葉で、ある一定の局面(ここでは範囲という意味)の中に人を密集させて突破する方法のことである。この戦術はその局面の反対側のアイソレーション("isolation=孤立")とセットで用いることで効果を増すことができる。詳細は以下の記事を。

 この方法は比較的多く、特に右サイドで用いられていた。アンヘリーニョが逆サイドでアイソレーションから裏を狙える上に、オーバーロードの弱点となるネガティブトランジションで逆サイド(左)を狙われたときに馬力があり逆サイドに展開されても対応できるからだろう。本題から少し話はそれてしまうが下図の場面ではまさにネガトラでアンヘリーニョの走力が発揮されたシーンだった。

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 ここでは右サイドでオーバーロードを作ったが奪われてしまう。奪った後、ロバートソンはすかさず逆サイドのサラーにボールを出した。

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 しかし、ボールが逸れたこともあったがアンヘリーニョがなとか追いつきボール奪回に成功したのだ。

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 話をもとに戻すと、ライプツィヒはオーバーロードとアイソレーションによっていくつかのチャンスを生み出している。下の図でもまた右サイドで5vs4の局面的な数的優位が生み出されている。ここでは特にハーフスペースに漂うオルモの存在が効果的であった。ワイナルダムはマークする相手をカンプルかオルモのどちらにすべきかはっきりせず、ジョーンズも位置的にオルモに付いているため、オルモのレイオフによってワイドレーンでフリーで待っているアダムズがボールを受けた。

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 右サイドではハイダラとヌクンクがアーノルド以外の最終ラインをがっつりピン留めしているうえに、逆サイドではアイソレーションのアンヘリーニョとカバク&アーノルドのギャップにいるザビッツァーが裏のスペースを狙っていたためアダムズから一番空いたスペースに走りこんだザビッツァーへのロングパスからチャンスが生まれた。

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 他の例として、ライプツィヒが最初に迎えたビッグチャンスのシーンがある。

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 アリソンのフィードから始まった中央のレーンでのインテンシティの高い局面である。ここでもライプツィヒは5vs4の数的優位を確保してリヴァプールのライン間への侵入に成功している。

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 そしてハイダラに圧を掛けるべく出てきたワイナルダムの裏を狙う。

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 普通の角度からだとオーバーロードになっていないように見えるがピッチを縦に見ると一目瞭然だ。左のワイドレーンではアンヘリーニョがアイソレーションの状態で待ち構えていることも分かる。

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ハイプレス

 ライプツィヒのハイプレスもまたオーガナイズされたものだった。内を切ってワイドレーンに誘導し、ワイドレーンで詰めて回収することがミッションだ。ハイプレスに参加する選手は主に5人だ。ピッチを縦に3等分した最初のゾーン(ゾーン1)を突破されたら2ボランチのザビッツァーとカンプルが参加する要領だ。下の図の通り、各選手は状況(下図の赤or青)に応じて担当する選手、または位置が変わる。

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 赤の方向にボールが向かえばそれぞれは赤矢印の選手にプレスを掛ける。アダムズとアンヘリーニョはそれぞれボールが青、赤の方向に向かえば所定のウィングバックの位置に戻る。一方で、2ボランチはそれぞれのサイドにボールが来たらそっちの方向にミドルプレスを掛ける準備にかかる。

 このシーンではボールが赤の方向に向かったため、各々は下図のように動いた。この形がきれいにはまったので、思惑通りワイドレーンでボールを回収することができた。

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なぜ負けたのか

 前半は見た目の印象よりも上出来な戦いだったと思う。リヴァプールは相手のハイプレスが機能したとき、ヘンダーソンの正確なロングボールで局面を変えることができる。下の場面でも同じようにハイプレスを掛けられるが、ヘンダーソンの正確なロングボール1本でサイドを変え、強力な3トップを生かした攻撃を仕掛けることができた。

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 このような場面からリヴァプールの得点は生まれなかったが、チャンスは多くあった。

 また、後半になって攻撃が全く機能しなかった。序盤は何回かチャンスを得たが、時間が進むにつれて前半のようなビルドアップやオーバーロードが見られた回数はほんのわずかだった。

 一方で、リヴァプールに許した2失点はともに自ら招いたミスが原因である。このような敗戦はもったいないものだったと思う。3週間後、2ゴール以上がベスト8への必須条件となる2ndレグまでにどのような策を練ってリヴァプールの要塞・アンフィールドに乗り込むのかに注目したい。

まとめ

 以上が分析となります。ナーゲルスマンは試合後のインタビューで後半の方が良かったと言っていましたが、僕は逆かなと思います。一見、スタッツからは前半はあんまりだったという印象を持ってしまいますが、よく見るとライプツィヒの特徴を上手くリヴァプール相手に落とし込むことができていたと思います。

 ドイツ政府の規定で本拠地で行えなかったホームゲームとなったことも残念です。ライプツィヒのスタッフさんはレッドブルアレーナの雰囲気に近づける努力をしていて少し感動しましたが、少しもどかしさを感じました。どうせなら2ndレグはアンフィルードではなく中立地でやってほしいと思いました。

 少し長くなりましたが、スカパーに入っていないので普段ナーゲルスマンのサッカーを観るのが久しぶりで楽しい90分を過ごすことができました。

 クロップは「みんな自分たちがスベるのを見たがっている」と言っていましたが、僕はリヴァプールに負けて欲しいという意味ではなく、ナーゲルスマンファンとして何とか逆転勝利してほしいです。

ではまた✋

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