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Netflix 『パドルトン』

《あらすじ》末期がん宣告を受け、症状が悪化する前に自分で人生を終わらせようと決めた中年男マイケルは、親しくしている隣人アンディーにその手助けを依頼する。

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とてもナイーヴな中年たちのストーリー。
命の終わりを知ってもいつもと同じピザを食べ、いつもと同じパズルをしていつもと同じ映画のビデオを観る。
その時間を過ごすのは家族でもなく、何十年来の親友でもない。
アパートの隣人だ。

彼との信頼や愛情はとても心地よい距離感で、最期に過ごすひととの距離として、パーフェクトだと思える。
友情とは、とも思う。

『クロワッサン』での山崎ナオコーラさんの文章。
距離を詰めるだけが人間関係ではない。
壁打ちテニスをするマイケルとアンディーのように、ボールを投げ合いながら二人は向き合うわけでもなく、近づくわけでもない。それが心地良い。

また劇中では、夫に先立たれたひとが、でも夫はそこにもあそこにもいる、と言う。
肉体を失ったあと、そのひとを動かすものの一部だった電気信号だけが残るなんてこと、あるだろうか。
のこされた人間が勝手に読みとった気になっているだけだろうか。
マイケルとともに、観ているわたしも魂についてしばし考える。

死に向かうマイケルはいっそ清々しく、彼を見守るアンディーのほうに苦しみが浮かぶ。
生きる、ということはこのように苦しい。
だけれども明日を迎えることができる。

とても好きな作品だった。
わたし好み。
最高。

キーワードとしては、【死 中年 日常 事件性無し】でしょうか。
好きです。

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