おすすめ映画69~100/100

100作品までなんとかたどり着きました。
今回は2019年に観た作品を中心にしています(公開年はそれよりも前のものもあります)。
相変わらず、ほのぼの・ファンタジーものが好きです。一番怖かった映画は『ちいさな独裁者』でしたが、怖くて怖くて頬の内側をかなり噛んでいたようです。観終わった頃には口内がぼこぼこでした。
それではご覧くださいませ!

69.家へ帰ろう
・ホロコーストを生き抜いたユダヤ人が戦後移住したアルゼンチンからもう一度ポーランドを目指す。
・仕立て屋のお爺さんが着るスーツがぱりっとしていて色鮮やかで、老人たちの出会いのドラマが、ほかのユダヤ人迫害映画との違いを出している。ふと映る腕に掘られた囚人番号。ドイツ・ポーランドに入る時に心が耐え切れなくなる様子。消えるはずのない戦争の傷をふと、ちらりと見せてきて、心に残る。

70.セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!
・冷戦終盤、ソ連弱体化の中、ソ連で学んだキューバ人大学教授は仕事が減る。そんな中、ロシア宇宙飛行士からの無線を偶然拾い…
・「すこし・ふしぎ」なSF。現実はゆっくりと自分たちの首を絞めていくが、第二次大戦も冷戦も超えて、アマチュア無線仲間同士たすけあったり、家族のために奮闘したり。宇宙とキューバの乾いた風景が、不思議な魅力を作り上げている。

71.妻の愛、娘の時
・母の死をきっかけに、中国の田舎にある父のお墓を巡る、三世代の女性の愛についての話。
・田舎と街や世代間ギャップをもってして、ユーモアも漂わせて描くので、しっとりし過ぎない魅力がある。テーマの幹がしっかりとしているから、ストーリーが細かく分かれていっても集中力を途切れさせない強さがある。一緒に暮らしていても相手のことなんてわからないから、愛するということは自己完結に近くて、自分の思っている「愛」というものを信じるだけなのかもしれない、とモソモソと考えた作品でした。

72.ROMA/ローマ
・1970年代のメキシコで中産階級の家庭の使用人として働く若い女性クレオの視点からみる、激動の1年。
・映像の中の情報量が多すぎて、なぜか笑えてしまった。観終わってから歴史的背景や解説を読むと、これは二回観ないとわからないところもあるなと気づかされる。作品中に絶えず流れる生活音が良い。

73.ガンジスに還る
・死期が近いという夢をみた、という父を聖地に連れて行き、しばらく一緒に過ごす息子。
・映画のエンディングとはどうあるべきなのか。では人生のエンディングとはなんなのか。どうなればハッピーまたはバッドなのか。人生を映画になぞらえることのできる、もやもや映画。とてもとても好き。

74.若い女
・パリ。31歳のポーラは、10年付き合った写真家の恋人に突然別れを告げられる。お金も家も仕事もないポーラは、恋人の飼い猫とともにパリを転々とするはめに。
・しゃべり倒し系の大好きなフランス映画。どこか動物的なところのあるポーラが悪戦苦闘する。タイトルの「若い女」とは何なのか。若い女でいることは、もうやめにしよう。あの男は若い女が好きだった。若い女という上っ面を無理やり自分で剥ぐ、痛々しく愛らしい作品。

75.幸福なラザロ
・イタリア。小作制度の廃止も知らされずタダ働きさせられていた村人たちが解放されて…
・これを語れるだけの知識が私には無い。貧富、宗教的な聖人と現実社会、搾取、資本主義、いろいろなもののメタファーが散りばめられているのだろう。そこから一歩引いて観ても、寓話的な魅力が美しい作品。

76.未来を乗り換えた男
・ドイツ占領下という設定の現代フランスで亡命しようとする男の話。
・サスペンスだろうと肩に力を入れて観はじめたら、意外とゆるく進んでいき、面白かった。ゆるさの中に戦争の恐ろしさが垣間見えるバランスが良い作品。

77.ゴッズオウンカントリー
・親の介護と牧場の管理に追われる青年ジョニーは、雇ったゲオルグに惹かれていく。
・動物の生死や同性愛描写などに好みはわかれる作品だと思うが、なぜかものすごく心に刺さった。イギリスの寒村で腐りかけているジョニーと、生きる力を持つゲオルグの描き方が良い。

78.ブラック・クランズマン
・白人至上主義団体KKKに潜入捜査する黒人刑事とユダヤ系刑事。実話ベース。
・ストーリーのキレが良いし、笑いどころも多い。過激な人種差別は根絶やしにすることはできたのか?会う人会う人にこれを勧めているが、すぐに観てくれた感じがしないのがとても悲しい。ぜひ観てほしい。

79.ビューティフル・ボーイ
・父と、ドラッグ依存症だった息子がそれぞれの視点で書いた2冊のノンフィクションを原作に、8年間の間に13回の依存症再発、7度の入院を経て更生にいたるまでを描く。
・鑑賞時にちょうど瀧さんのニュースがホットだったこともあり、支えることの大切さと難しさを十分に想像させられた。西海岸の風景が美しい。取材者気質にあふれた父親の行動が時にいじましくて面白い。

80.ちいさな独裁者
・第二次世界大戦末期、ドイツ。偶然ひろった大尉の軍服を着た脱走兵ヘロルトは、軍服の力で暴走し始める。
・暴力性を解放された人間の怖さ、戦争を起こしてよい理由など何一つないこと、戦争は人間性を破壊していくものであることを延々と訴える作品。エンドロールが秀逸。

81.12か月の未来図
・パリのエリート校で教えていた教師が落ちこぼればかりの公立校に赴任することに。
・貧困に対する教育の大切さをわかりやすく、笑える要素も盛り込んで伝えてくれる。教養は飾りではなく血肉を作るもの。問題提起と理想論の美しい調和がこの作品の良さ。まるでドキュメンタリーのような役者の作りこみも良かった。

82.二階堂家物語
・一人息子を亡くし、代々続く家系が途絶える危機に頭を抱えている当主。
・じっとりとした中年男の愛と体裁、という点では加藤雅也主演で良かった。「家」のことって色々面倒臭いよなぁという積み重なりと、多かった雨のシーンが、よく合っていた。

83.愛がなんだ
・マモちゃんに恋に落ち、マモちゃん中心の世界に生きることにしたテルコの物語。
・ほとんどがテルコを中心とした狭い世界を描いていて、丁寧にこちらの視野も歪めてくる。それが不気味で、楽しい作品。

84.運び屋
・アール・ストーンは金もなく、孤独な90歳の男。商売に失敗し、自宅も差し押さえられかけたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられる。
・高齢者が犯罪に加担させられる最近の日本の事件を思うと笑えなくなってくるが、飄々とした主人公は魅力的だった。変にストリクトなメキシカンマフィアも笑える。アールの家族のことを考えると、マッチョなストーリーだとは思う。

85.金子文子と朴烈
・関東大震災を挟む、韓国人と日本人のアナーキスト男女の物語。
・私の知る世間で『グリーンブック』『ブラック・クランズマン』が絶賛される一方で、あまりこの作品が語られないところに、遠くの国の人種差別なら安心して語られるような気がして、虚しい。とはいえ、「差別」「大逆事件」「思想犯」というトピックを予想以上に超えたエンタメ作品だった。

86.荒野にて
・天涯孤独になってしまった少年は殺処分予定の馬とともに遠い親戚を訪ねる。
・安全具を失って荒野に放たれてしまったような、静かな悲しみが襲う作品。子どもが子どもでいられることの幸せを逆説的に思う。

87.希望の灯り
・大型スーパーのバックヤードを中心にした物語。
・フォークリフトの乱れは心の乱れ。心のほんの少しの揺れを静かに語る、美しい作品。

88.ザ・ビッグハウス
・想田監督の観察作品。巨大アメフトスタジアムを観察する。
・観察大好き人間にはかなり面白い作品だった。アメフトの試合は映らない。会場周辺の人たちや救護スタッフ、調理スタッフ、清掃スタッフなどの様子を切り貼りする。

89.マイ・ブックショップ
・1959年のイギリス。ある海岸地方の町。戦争で夫を亡くした女性フローレンスが、書店が1軒もなかった町で、夫との夢だった書店を開業しようとする。
・本の背表紙、イギリスの田舎の風景、かわいい衣装が良かった。伝記物なら善人がでてくるものを、物語なら悪人が出てくるものが良いという引きこもり読書家老人の言葉がじわりとしみる。

90.シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢
・庭・仕事・将来になにかしらの不安を抱えたおじさん集団がシンクロ競技大会に挑む。
・オープニングが好き。失敗続きのおじさん達が頑張る。コーチ達のストーリーも良い。

91.ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー
・サリンジャーの半生
・戦争に行くまでの、サリンジャーの自信と不安に満ちた演技が良かった。実は読んだことの無い作家だったので彼の人生についても知らず、新鮮に観ることができたが、サリンジャーを好きな人はどう思っただろう?

92.さよなら、退屈なレオニー
・カナダ・ケベックの海辺の街で暮らす17歳の少女、レオニー。高校卒業を控え、母とそのパートナー、決められない自分の将来にイライラする。
・17歳の苛立ちが存分に発揮された、ある意味青春映画だった。水銀灯がつく音、工場から遠く聞こえる機械音によって却って静けさが際立つ、良い音のする作品。

93.よこがお
・意図せず加害者側に立たされてしまった女
・他者により人生が狂わされていく女の人生は白石一文の小説を思わせる。俳優さん全員がすばらしいが特に池松壮亮のぼそ、ぼそ、と置くような演技がよかった。

94.エリカ38
・自称エリカが架空の投資話で大金を集めるというストーリー。浅田美代子主演。
・自分に自信が無い一辺倒な笑顔を糸口に男と金を握りしめるエリカを、浅田美代子が見せつける。その後ろにはもっと表情の見えない樹木希林がいる。この暗さと湿度が魅力。被害者の実際の肉声が流れるところが一番怖い。

95.ビリーブ 未来への大逆転
・名門ハーバード法科大学院に入学したルースは首席で卒業するが、女だからというだけで雇ってくれる法律事務所はなかった。やがて歴史を変える裁判の弁護をすることに。
・堅実なストーリーで派手さはないが満足度は高い。主人公が、わが娘に新しい世代を感じたシーンが良かった。

96.マダムのおかしな晩餐会
・パリの夫婦が晩餐会を開いたものの、手違いでテーブルには13人。13という数字は不吉だから、と女主人は急きょメイドを“スペイン貴族の血を引くミステリアスな女”という設定で、14番目の客になるよう言いつける。嫌がっていたメイドだったが、英国紳士に求愛されてしまい…
・嘘と行き違い、すれ違いのオーソドックスな映画。変にこねくり回したところのないシンプルなストーリーと美しい画面に、ゆったりと映画を楽しむことができる。ふと、またあれ観たいなと思うような作品。

97.日日是好日
・茶道がもたらすものはなにか、日々を通じて伝える。
・お茶の作法が主人公にとって自然なものになるまでを静かに映すことで、主人公とお茶の先生の人生をそっと伝えてくれる。掛軸やお花や器についても説明過多になりすぎず伝えてくれるので、お茶の空間について自然と興味が持てる。

98.バイス
・アメリカ史上最も権力を持ったチェイニー副大統領の姿の前代未聞の裏側を描いた社会派エンターティンメント作品。
・俳優の、政治家本人のような演じ方が、コントのザ・ニュースペーパーをつい思い出させて面白い。メタ的な見せ方も楽しかった。アメリカ政治の知識が無くても面白く観られる。が、怖い話だ…。

99.ニューヨーク最高の訳あり物件
・マンハッタンの超高級アパートメントで暮らすモデルでデザイナーのジェイドは一方的に夫に離婚を告げられ、元妻にもアパートに押しかけられる。
・伝えたいことが段々と枝葉にわかれてしまい弱くなってしまったように見えた点は残念だったが、いつも家族を支えてきた元妻の、どうやってもまた自分の人生が誰かのサブになってしまう悲しみを描いているところが良かった。

100.グリーンブック
・1962年、差別が残る南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニスト、ドン・シャーリーは、粗野で無教養のイタリア系、トニー・リップを用心棒兼運転手として雇うことに。
・道徳教材のようなマイルドさではあったけども、あらゆる人が観られる、正五角形のような作品。隣り合わせた老婦人のクスクス笑う声を聞きながら、じんわり楽しい映画の時間を楽しんだ。イタリア系トニーがドンに手紙を習うところが良い。


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