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映画『ア・ゴースト・ストーリー』と地縛霊の気持ち

わたしには霊感が無い。でも地縛霊の気持ちはほんの少しわかる。

営業として働いていたとき、頑張りすぎて倒れた。体を壊した。同時に夫の転勤が決まった。
元気なままだったら単身赴任してもらって、わたしはその当時の会社に勤め続けていただろう。
ただ、大げさではなく死にかけたので、さくっと退職を決めた。決めたものの、倒れる前兆はなかったし、転勤の話もそれまで出ていたわけではなかったので、退職日の夕方もぽかーんとしていた。
後輩が泣きながら、今まで会社の中で撮ってきた写真で飾りつけたアルバムを贈ってくれた。
上司もいつもと違う表情をしていた。
わたしだけが、えっわたしここから消えるの、と戸惑っていた。まだ週明けも出社する感覚がそんなにすぐには消えなくて戸惑う。
きっと突然この世を去らなくちゃいけなくなってしまった人たちもこんなだろう。えっえっと思いながら、体だけ消えて心はその場にとどまるのだろう。
知らないけど。
想像することは自由だ。
わたしは件の会社を愛していたわけではないので、地縛霊的感覚は次の週には消えていたが…

この映画は愛する人を遺してこの世を去った男の話。ゴーストの、ストーリー。
かいつまむと3分で終わる話かもしれない。
そんなシンプルな話を、美しく、ちぎったメモ用紙を心に挟みこむように、時に鋭くゆったりと描く。
主演のゴーストは8割方シーツをかぶったままの演技なのだから、監督の手腕が問われる作品だ。
ラストは今年観た映画の中で一番、一瞬で心をえぐられた。

今わたしが消えたら一体どこにあらわれるだろう。

#映画 #アゴーストストーリー

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