おもしろい案件
今日は1ヶ月に1度行われる締め会の日。
社員全員が集まるその会では、新規サービスの進捗説明と、納品案件の振り返りを発表して、そこで得た気づきやノウハウ、技術を共有する。
いつもの流れであればそれで終了なのだが、今回の会では退社するエンジニアのA君からの挨拶もあった。
特に感動をそそることを言うわけでもなく、笑いを取りに行くわけでもない。ただ淡々と転職先についてや、いつが最終出社日になるのかを、普段と変わらぬトーンで語っていた。A君らしい最後の挨拶だった。
A君が挨拶を終えると、上長が喋り始めた。
「A君の転職先は副業が認められてるから、ブレーン登録を進めて、何かお願いできればと思っている。」と僕たちに伝えると、A君にこう質問した。
「僕らがA君に仕事を依頼する時の条件とかあれば教えてほしい。副業が認められているとはいえ、新しい職場との兼ね合いもあると思うから」と。
A君はすぐさまこう答えた。「おもしろい案件だったらやります。条件といえばそのくらいです。」
A君のいうおもしろい案件の定義はとても多面的で、本人も説明しづらいと言っていたのだが、おそらく僕の解釈だと、A君自身の心が動く案件が、おもしろい案件なのだろう。
彼は遊ぶように楽しみながら仕事に取り組む。様々な技術に対してアンテナを張り、外部の勉強会にも積極的に参加し、やりたいと自分が思ったことはすぐに試すような好奇心旺盛なエンジニアだった。
A君は今よりも心を動かされる方向に、ただ進むだけなのだ。
おもしろい案件の定義に答えを見出せず、頭を抱えていたA君が半ばヤケクソ気味にこう言い放った。
「この会社とはこれからも関わって行きたいので、おもしろい案件をお願いします!」
僕はこの言葉を聞いた時、「おもしろい」の答え合わせをA君から任されたような気持ちになった。
会社が変わっても、また一緒に仕事しよう。
その時までには、A君にとっての「おもしろい」の答えを用意して。
転職したり、フリーに転向したとしても、またいつでも仲間達と仕事ができる「モノ」「コト」づくりは素敵な仕事だなと改めて気づかされた。
デザイナーでよかった。また会える。そう思えた桜満開の日。