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手書きラフが捨てられない

明日は会社の席替えがある。
デスクトップや机の上は整理整頓しておきたい派なので、改めて掃除しておくことはないのだが、強いて言えば鍵付きキャビネットの中が雑多な状態だったので、これを機に少し整理をすることにした。

キャビネットの中を見ると、すでに終了している案件資料や、読み終わった技術書、デザイン書などでパンパンだった。いらないものは持って帰るか、捨てるかしなきゃなと思いながら、キャビネットの中を整理する。
「なんでポストイットがこんなにたくさんあるの?」とか「この棒はいったい何に使ったの?」とか、昔の自分がしたことにもかかわらず、記憶にないものが見つかったりする。記憶にないものは、基本的にこれまで必要じゃなかったりしたものなので捨てやすい。

逆に強く記憶として残っているものは捨てづらい。
例えば、アイデアやデザインを考えていた時の手書きのラフなんかは、その時の苦労や熱量が蘇ってくるのでなんとなく捨てづらい。
ドキュメント化されたものや、デザインの出力などはデータが残っているのでサクッと捨てることができるんだけど、手書きのラフは自分が思考した時の最初の記録であり、この世に1枚だけの作品だったりする。

捨てるか捨てないかを迷っていると、坂本龍一のCDジャケットデザインや雑誌「Cut」のアートディレクションをしていたデザイナーの中島英樹さんが、打ち合わせの際にメモを取らないという話を思い出した。

彼がメモを取らない理由は

「会話をして記憶に残らないようなことであれば、それは大したことではない。」

ということらしい。

中島さんの考え方に習うと
手書きのラフは記憶に残るものだったから、僕にとっては大したものなのだ。

スカスカになったキャビネットの中に、僕は手書きのラフを丁寧にしまい直した。

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Atsushi Sekigawa
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