フォトディレクションをするときに注意したい10のポイント
フォトディレクションはデザイナー本人のパーソナリティやカメラマンとの相性、またはプロジェクトの内容によって様々なディレクションの仕方があり、定量的に語りづらい部分もあるけれど、僕がこれまで撮影の現場で体験したことや、カメラマンとの会話で得た気づきを「フォトディレクションをするときに注意したい10のポイント」として紹介します。
▲●▼ 事前準備について ▼●▲
撮影の全てを決めると言っても過言ではないくらい事前準備は重要です。
カメラマンに撮影日時を伝えるだけで、撮影当日に何も準備していないという状況にならないようにしましょう。
ポイント 1|デザインや被写体にあったカメラマンをアテンドする
このアテンドの良し悪しで8割決まります。
商品の撮影であれば、ライティングのスキルが高くプロダクトを撮影することを得意としているカメラマンに。被写体が人であれば、ポートレートが得意なカメラマンにお願いするのは当たり前のことなのですが、一番重要なのは自分が設計しているデザインのイメージにあうトーンを得意としているカメラマンにお願いすることがとても大切です。どのカメラマンでもディレクションの仕方でトーンは合わせられると思われがちですが、時間制限のある撮影の現場ではカメラマンの目の癖が出てきやすいので、デザイナーがイメージしていたトーンを不得意しているカメラマンにお願いしてしまうと、想定していた写真にならないことがあるので気をつけましょう。
それと、ギャラの話は案件の概要と共にできるだけ早く済ましておきましょう。ギャラについての会話をせずにプロジェクトを動かすと後々トラブルになもなります。
・被写体(人・物・空間)によってスキルのあうカメラマンにお願いする。
・自分のデザインイメージのトーンが得意なカメラマンにお願いする。
・アテンドの段階で案件概要と共にギャラの提示をする。
ポイント 2|カメラマンにデザインコンセプトと撮影内容を共有する
企画やデザインの設計が終わってからお願いする場合、このプロジェクトがどういうものなのか、どんなコンセプトで制作するものなのか、そして『何(被写体)』を『どのくらい(カット数)』『どんなふうに(構図・トーン)』『どこ(シチュエーション・時間帯)』で撮影するのかをできるだけ具体的に説明しましょう。
カメラマンのクリエイティビティに任せっきりになるのはディレクションとは言えません。こちらがやりたいことを、まずは具体的に伝えることで、カメラマンもプロジェクトについての情報が整理しやすくなるので、アイデアを言いやすくなります。
その際、伝えたいことが説明しやすいように、デザインと写真の構図、トーン、カット数がわかるラフカンプを用意しておきましょう。
会話の中で想定よりも撮影機材が必要になりそうであれば、機材費がどのくらいかかるのかもその場で確認しておきましょう。
・できるだけ具体的に『何(被写体)』を『どのくらい(カット数)』『どんなふうに(構図・トーン)』『どこ(シチュエーション・時間帯)』を伝える。
・打ち合わせまでにデザインと写真の構図、トーン、カット数がわかるラフカンプを用意する。
・打ち合わせの中で撮影機材が増えそうであれば費用感を必ず確認する。
ポイント 3|撮影用の資料を作成する
撮影当日までに前項の内容も含めて、プロジェクト関係者向けに資料を作成し共有しましょう。撮影当日の撮影イメージが沸きやすい丁寧な資料作りを心がけましょう。
・香盤表(撮影当日の時間ごとの撮影対象のカット割を記したスケジュール)
・デザインカンプ(デザイン、構図、トーンがわかる資料)
・スタイリング指示書(被写体が人の場合に用意してほしい服装や髪型など)
・搬入機材表(撮影場所によってはあらかじめ撮影機材を問われる場合があるので、その際はどのくらいの機材を使用予定なのかを明記したドキュメントを用意する)
ポイント 4|撮影の前日にカメラマンと電話やチャットなどでコミュニケーションをとる
当たり前ですがカメラマンは僕ら以外のクライアントとも仕事をしています。最初の打ち合わせから時間が立っている場合、カメラマンの意識が自分たちのプロジェクトに向いていない場合がよくあります。前日に改めて、翌日のスケジュールやトーンについて会話し、意識のすり合わせをしておきましょう。
▲●▼ 撮影当日について ▼●▲
ポイント 5|撮影の前に関係者と当日の流れを改めて確認する
事前に共有していた資料を元に、できるだけ参加者全員で打ち合わせをしましょう。1日の流れと目的を共有することで、その日の撮影の質は大きく変わります。
ポイント 6|タイムキープはカメラマンにさせない
構図やトーンが決まっていても、その中で様々なアイデアを考えながら、被写体と向き合い、最良の瞬間を切り取るというのはとても集中力のいることです。『時間への意識』を外に逃がしてあげることでカメラマンの負担を下げてあげましょう。
ポイント 7|撮影カットのOK・NGは声に出して伝える
カメラマンの最初のゴールはデザイナーにOKをもらうことです。カットを切ってくれているカメラマンに何も反応しないと、カメラマンはいつまでこのカットを撮り続ければ良いのかわからなくなってしまいます。要望に応えるカットが撮れていたらできるだけ早くOKを伝えて、他の構図を試したり、新しい表現にチャレンジしたりできる時間の確保をして、より良いカットを撮影できるようにカメラマンとコミュニケーションをとりましょう。
ポイント 8|率先してムードづくりをする
撮影の現場では、短い時間の中でいくつもの選択を連続でしていかなければならない参加者全員が、真剣なムードになりやすいです。ベクトルが暗い雰囲気に行きそうな場合は率先して参加者達とコミュニケーションをとって雰囲気が明るくなうように努めましょう。
ポートレイトで被写体がモデルではない一般人の場合、雰囲気にのまれてしまうので、表情が硬くなったりもするので、いいムードをつくることはとても重要です。
ポイント 9|現場ではカメラマンの味方であり続ける
クライアントが撮影の前に想定していなかったカットや、コンセプトから乖離のあるカットも要望してくる場合が多々あります。カメラマンはデザイナーが構築した世界観に真摯に向き合ってシャッターを切ってくれているので、簡単に長いものに巻かれずに「なぜそういった写真が必要になったのか」を納得いくまでクライアントと会話して、カメラマンと自分のデザインを簡単に裏切るようなことはしないようにしましょう。
実際にちゃんと会話してみると、想定していた写真のままで良いということが多かったりします。
ポイント 10|クライアントとの絆を深める
撮影はクライアントとの関係性を深めるチャンスです。
撮影がうまくいくと、参加者間にある種の絆のようなものが芽生えます。クライアントの担当者と距離を縮めることで、その後の制作進行をスムーズに行うこともできるので、ここまで説明したポイント1〜9を意識して参加者全員が一つのチームとなるような撮影にしましょう。
▲●▼ まとめ ▼●▲
撮影は、限られた時間の中で、結果を出さなければならないので、撮影当日に至るまでの事前準備の中で、カメラマンや参加者と意識合わせをしっかりとおこない、撮影当日の連携がとりやすいようにしておくことがとても大切です。
そして、最後にもう一つ、フォトディレクションをするときに、とても大事なポイントがあります。
それは
ポイント11|撮影を楽しむ!
以上、10年前の自分に届け!!