「茹でられなかったブロッコリー」から学んだ夫婦喧嘩回避のコツ。
「え?ブロッコリー茹でてないの?」
妻からそう言われたのは日曜の夕方、夕飯を作っている時だった。
妻は金曜から風邪を引き、土日ずっと休むことでなんとか体力を回復したところだった。
9歳の双子の男の子、そして5歳の三男を抱え、ひいひい言いながらワンオペ土日を終えたぼくはすっかり疲れ果てて、夕飯は冷凍餃子を焼くのがやっとだった。
妻としては春休み間近で給食を食べずに帰ってくる子どもたちのお昼用にブロッコリーを茹でておいて欲しかったようだ。
さらに言うなら、ブロッコリーは買ってすぐに茹でて保存するものであり、なんで冷蔵後に放り投げておくのか理解できないという感じでさえあった。
その日、ぼくらは「茹でられなかったブロッコリー」を巡り、喧嘩になる一歩手前だった。(たかがブロッコリーと思うかもだけど)
だけど、夫婦喧嘩は回避でき、以前より思いやりを持ちやすくなった気がしている。
ぼくらに何が起きたのか?詳しく説明しますね。
◇
土日寝て元気になりつつあった妻から言われた言葉はこの二つでした。
「なんでブロッコリー茹でてないの?」
「(夕飯用に)スープ作ってないの?」
5歳の三男はまだまだ手がかかり、一緒に遊んであげたり面倒を見てあげないといけないので手が離せず、上の双子は隙あらばケンカするのでその仲裁に疲れ果て、さらに洗濯やら料理やら皿洗いやらで、ぼくはすっかり疲弊し切っていたのです。
朝昼晩とご飯を作り片付けるだけで一日が終わったような気さえしました。
とてもじゃないけど、保存用にブロッコリーを茹でたり、夕飯にスープを作る気力はなかったのです。
こんなに疲れ果てているので、そこまでできるかよ。そんな批判しなくていいじゃないか。
ぼくの中でなにやらドロドロしたネガティブな感情が渦巻きはじめました。マグマのような怒りが心の底の方で生まれるのを感じる。これを出してしまいたい。このイライラが気持ち悪い。このマグマを怒りと共に出してしまえば楽になる。
ぼくらはいつもこのポイントで喧嘩になる。
どちらかが怒りをぶつける。ぶつけられた方は怒りを投げ返したり、もしくは悲しい気持ちになり心を閉ざす。
夫婦喧嘩の沸点みたいなものだ。水は100度になることで沸騰する。怒りを表すことは沸点を超えたことを意味する。自分ではコントロール不能な怒りに飲み込まれ、気づけば相手を傷つけている。
だけど今は違う。知り合いの臨床心理士さんから、これは「ネガティブループ」だと教わった。お互いの怒りをぶつけ合うことで、呪われた螺旋階段のように恨みは駆け上がっていく。
不幸というゴールしかないネガティブループ。今、ぼくは、その入り口にいる。そう気づけるようになったんだ。このループを止める方法はまず気がつくこと。自分がループの入り口に立ち、ループスタートのボタンを押そうとしていることを。
ではどうすれば気づけるのか?それはコンパッションの専門家の先生に教わった。自分が何を感じているのか、素直なその気持ちをただ見つめる。そこにいいとか悪いとかジャッジをくだしちゃいけない。ただ、見つめるんだ。すると、怒りというベールに隠された自分の柔らかな感情が見えてくる。
人はこれをマインドフルネスと言うが、そんな小難しく考えなくていいと思う。ただ、素直に、自分の心のなかをかき分けていく。
ああ、責められているように感じて辛かったんだな。忙しすぎて気を回す余裕がなかったんだな。だけど、具合の悪い妻に忙しくて疲れてたんだよなんて強くあたるわけにいかなくて悩んでたんだな。自分の気持ちを妻に伝えたいけど、わかってもらえない気がして素直に言えなかったんだな。
そんな素直な感情が見えてくる。
ネガティヴループから逃れるのは大変だ。ぼくはいつもループの入り口で葛藤している。だけど、何人もの心理士さんと話し、コンパッショントレーニングを受けることで、なんとかその入り口から離れることができるようになってきた。
もちろん、いまでも不機嫌そうに気持ちを伝えてしまうこともある。ぼくだって完璧な人間じゃない。だけど、ネガティブループが回りそうだなってタイミングはなんとなくつかめるようになってきた。
次はその素直な感情をポジティブに伝えるのだけど、これまた難しい。自分の感情から怒りを除くのは大変だからね。
だけど、怒りの下にある素直な気持ちを見つけ、自分がその感情を受け止めてあげ、認めてあげることができれば、自分を大切にしながら、その素直な気持ちを伝えることはできると思う。
まずは自分に優しくすることが大切で、これにはセルフコンパッションのトレーニングがかなり役立ってる。
素直な気待ちを伝えるのは怖い。否定されるかもしれないからね。だけど、たとえ否定されたとしても自分が自分の味方であれば、勇気を持ってまたパートナーと向かい合うことはできる。
こんな風に。
"疲れ切っていてスープを作ったり、ブロッコリーを茹でたりする気力が全然なかったんだ。君はいつもこんなことをやっていて本当にすごいよ。本当によくやってるなあと感じるよ。
あと、そう強く言われると、責められているように感じて傷つくんだ。もう少し優しく言ってくれると嬉しい"
こんな趣旨のことをぼくは妻に言ったわけだけど、完璧にポジティブになれたわけじゃない。もしかしてた少し不機嫌だったかもしれない。
だけど、夫婦の葛藤が起こった時に、ネガティブループの入り口に気がつき、いい悪いのジャッジをせずに自分の感情を受け止め、ポジティブにパートナーに伝える勇気を持つ。
これを日々続く夫婦生活のなかでグルグル回していくことで、ぼくらは幸せを感じやすくなるんじゃないかと、そう思うんです。
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