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ぼくら男はなぜ、「分からないこと」を「分からない」と言えないのか?「恥の概念」を捨てることで見えてくるものとは?

「きみ、そこまで説明しては失礼だろ?」

ぼくはなにを言われているのか、分からなかった。

目の前の相手は明らかに、ぼくの上司の説明を理解しておらず、ただ分かったフリをしていることは明らかだった。

ぼくは、ただ、目の前の相手が理解できていないポイントを分かりやすく噛み砕いて説明しているだけなのに。

目の前の相手は、ただ黙って頷き、たまに、こちらが言ったことを自分の言葉に置き換えて発言をしている。

だけど、それは「私は理解していますよアピール」であることは明白で、彼が肝心のポイントを履き違えたまま理解をしてていることが、ぼくにははっきりと分かった。

でも、ぼく以外の男性はみな気がつかない。

その人が「分かったふり」をしているだけで、「分かってないことがバレないようにしている」ということにすら気がつかない。

こんなことは過去に何度もあって、最近ではぼくも大人になって、「相手に失礼のないように」言葉を選びながら、相手の理解が欠けている部分を埋めることができるようになったけれど

だけど、「分かっていないことがバレないようにする」男性はとっても多く、これは男性特有の性質なんだろうなと思う。

そして、これは仕事上の話だけではなく、妻とのコミュニケーションにおいても大きな問題を引き起こす。

「夫がわたし(妻)の話を自分勝手に解釈して、会話が成立しない。話をする気が失せるぐらい、うんざりする」

ぼくも似たようなことを妻から言われたことがあります。

なぜ、男は「分からないこと」を「分からない」と言えないのか?

どうすれば、ぼくら男は素直に「分からない」と言えるようになるのか?

今日はこのことについて、考えてみたいと思います。

男の会話はプライドにまみれている

「アホだと思われるだろ?」

ぼくは若い頃、相手の話が理解できない時に質問をすると、よく上司からこんなことを言われてました。

「そんな初歩的な質問をしたり、何度も質問をしたりしたら、こっちがバカだと思われるだろ?

それに、そんなこと、いちいち聞かなくても分かるだろ?お前はバカか?」

などと、こちら側の理解を深めるための質問を制限されたり、なんとなくこういうことかな?と思ったなら、それ以上は深く突っ込まずに、堂々としていることを求められたりもしました。

「そんな詳しい説明をしたら、相手に失礼だろ?向こうもバカじゃないんだからさ」

話し相手が、明らかにこちらの話を理解していないことに上司が全く気がつかず、ぼくからの詳しい説明を遮られたことも何度もありました。

そんな時、話し相手は(よかった。面子が保たれた)と安堵するような表情を浮かべるのですが、一週間後にまったく見当違いの見積もりを出してきたり、見当違いの仕様書が上がってくるんです。

”なんなんだ、これは?

分からないなら分からないって言えばいいじゃないか!

あとから困ったことになるのに、なんで素直になれないんだ?

それこそバカみたいじゃないか?”

当時、ぼくは勤めていた呉服会社が倒産して、転職した商社で慣れない仕事に翻弄されていました。

でも、最も慣れることができなかったのは、男性ならではの「プライドの高さ」です。

自分が人からバカだと思われたくない。

話し相手にも、失礼がない(バカ扱いしない)ように、言葉には気をつけないといけない。

呉服屋で働いている時には、決して目に触れることがなかった男性特有の「ムダなプライドの高さ」に、ぼくは心底辟易していました。

自分の気持ちを配慮することを相手に望み、相手の気持ちも配慮しながら会話をする。

でも、その配慮というには、「相手を傷つけないこと」ではなく、「相手のプライドを傷つけない」ことなんです。

男同士の会話はプライドにまみれていて、呉服販売員からサラリーマンに転身したばかりの頃は、男たちが本心では何を考えているのか、さっぱり分かりませんでした。

男社会が人の気持ちに寄り添えない男たちを生む

呉服販売では、いかに女性の気持ちに寄り添うかが重要であり、自分の弱みや素直さが時には武器にもなりました。

プライドが高くこちらの心の動きを無視する人から、何百万円もする呉服を買いたいとは誰も思わないですからね。

でも、サラリーマン社会(男性が権力を握っている社会)では、人の気持ちに寄り添い、自分の弱さや素直さを見せることは、「取って食われる」ことを意味したんです。

弱みを見せていると問題が起こった時には責任をなすりつけられ、相手が理解したかどうかが重要ではなく、「言ったか言わなかったか、記録として残っているか」が重要視されることってありますよね。

相手の心にきちんと、こちらの言葉が届いたかどうかは重要視されません。

男たちは自分のプライドが邪魔をして、「分からないこと」を「分からない」と言えず、相手の理解度を確認せずに「自分は伝えた」と主張する。

一日のほとんどを過ごす職場で、こんなことを毎日やっていては、人の気持ちに寄り添えるようにはなれないと思うんです。

「人の気持ちにきちんと言葉を届ける」ことができない男がたくさんいることに、ぼくは本当に驚きました。

そして、ぼくもまた、徐々にその波に呑み込まれていったのです。

人の気持ちに寄り添えないと、妻との距離は広がっていく

「分からないこと」を「分からない」と言えず、「分かってないでしょ?」と指摘されることにプライドが傷つくようになると、妻との距離もまた、驚くほど広がっていきます。

呉服会社を辞めて数年した頃、ぼくも同じようなことをしていることに気がつきました。

「分かってない」と思われると、反発心が芽生える。

そんな風に感じるようになり、徐々に妻から避けられるようになっていったんです。

あんなに呉服屋では、女性の気持ちに寄り添ってきたのに、ほんの数年でぼくは男社会のルールに絡め取られていたんです。

女性にとってのコミュニケーションは「感情のキャッチボール」なんです。

そこに気がつけるようになると、くだらない見栄の張り合いになんの意味がないと思えるようになります。

そして、そんなことをしなくても、仕事は回るんだということにも気がつけるようになります。

相手の気持ちを思いやることは、相手に恥をかかせることではない。

「分からないこと」を「分からない」と言えることは、恥でもなんでもない。

それは、人の心にきちんと思いを届け、相手の思いを自分の心で受け止めようとする誠実さであり、思いやりでもあるんです。

そう思えるようになると、仕事については男社会特有のルールを用いずとも、うまく回せるようになり、妻との距離も縮まっていくと、ぼくは思うんです。

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