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なぜ、あなたの妻は「婚外恋愛」を求めるのか?
「夫にも恋人ができて欲しいんです。その方がお互い幸せになれますから」
夫以外の男性と恋愛中のその女性は、悪気もなくそう言った。
そこに夫を裏切っている罪悪感は一粒たりとも存在せず、太陽が東から昇り西へと沈む当たり前の道理を話しているかのようだった。
「妻が婚外恋愛したいと言っているんです。それも多様性だとか意味のわからないことを言っていて……。一体、どうすればいいんでしょう?」
別の男性はそう言った。
家庭をかえりみなかった自分が悪いのはわかるが、なぜ、それと婚外恋愛の承認が結びつくのかわからない。
妻が他の男に恋をするまで妻の大切さに気がつかなかった夫たちは、妻の予想を超えた提案に強くとまどっていた。
浮気でもなく、不倫でもなく、「婚外恋愛」という選択する女性が増えています。
なぜ、彼女たちは「婚外恋愛」を選ぶのか?
考えてみたいと思います。
広がる性の多様性と誤解
婚外恋愛を選ぶ女性の言葉には、「多様性」という言葉がよく出てきます。
一生、一人の人と恋愛し続けなければいけないのはおかしい。
一生、一人の人としかセックスできないのはおかしい。
恋愛、結婚、出産、これらすべてを一組の夫婦に押し込める「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」は時代遅れであり、現代にマッチしていない。
夫婦であっても、さまざまな恋愛の形があってもいいはずだ。
それが、多様性だ。
多様性は尊重されるべきだ。
確かに、この時代、多様性という考え方は尊重されるべきだとは思います。
異なる国、異なる人種、異なる宗教、そして異なる性。
それらは差別すべきではなく、それぞれが尊重されるべきです。
そして、「一生、ひとりの人と婚姻関係を続けなければいけない」という考えにも、縛られる必要はないと思います。
心身への暴力、アルコール依存、ギャンブル依存、不倫問題など、乗り越えられない課題はたくさんあり、離婚という選択をすべき事態は確かに存在します。
ぼくが夫婦関係相談に乗っていても、(これは別れた方がよさそうだな)と思う案件がいくつもあり、離婚をすすめたこともあります。
多様性は尊重されるべき。夫婦は一生、婚姻関係を続ける必要はない。
ぼくもそう思います。
ですが、それと「婚外恋愛」は別の話なのです。
夫婦がともに婚外恋愛に賛成しており、実践してもなにも問題が起こらないのならいいでしょう。
ですが、ぼくが当事者から聞く話はそうではありません。
「妻から婚外恋愛を提案され、承認しました。私もロマンチック・ラブ・イデオロギーは間違っていると思い、外に恋愛やセックスの相手もいたとしても、それも多様性なのだから許容すべきと判断したのです。
ですが、実際に妻に好きな人ができた途端、精神が崩壊するほどの苦しみに襲われたのです。
今になって妻の愛情を取り戻したいと願っていますが、別の男へと心が離れてしまった妻を説得することは難しそうです……。」
妻の婚外恋愛を認めたことを後悔する男性は多いです。
また、女性側が「婚外恋愛という多様性」を主張し、夫から理解を得られることがないまま、ひたすら権利を主張し続けているケースも多いです。
なぜ、こういったことが起こるのか?
それは、「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」という概念が、実際の夫婦関係と大きくかけ離れているからです。
恋愛、結婚、出産、これら三つを一人の相手に求めることを「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」と呼びますが、そもそも恋愛関係は3年程度で消えるものです。
結婚当初、恋愛感情をお互いに抱いていても、アドレナリンは次第に分泌されなくなり、相手に「飽きる」ときがやってきます。
結婚し、出産しても、自分のパートナーに恋愛感情を抱き続ける人はほぼいません。
ぼくら夫婦もそうでした。
妻への恋愛感情が霧のように消し去ったあと、ぼくは妻との絆を失うことを恐れ、「妻のことが好きだ」と自分に言い聞かせました。
妻のことが「好きならば」、困っている妻を放っておくわけにはいかない。だから、家事や育児に力を入れるようになり、「妻のケア」を日常の優先事項としてかがけ、日々を生きるように心がけたのです。
その結果、いつの間にか、ぼくのなかには妻を愛おしく思う気持ちが宿りました。
それは恋愛でもなく、性衝動でもなく、ひとりの人間として、目の前にいる「この世でもっとも大切な人」を大事にしたいという純粋な思いでした。
明けることがないと思われる夜泣きの対応、家族が一人ずつインフルエンザで倒れていく看病の日々、元気過ぎる男の子三人と家に閉じこもったパンデミックの数年間。
いくつもの夜を妻と一緒にくぐり抜け、やっと見えてきた朝日。
それは恋愛感情という陽炎のように儚いものではなく、力強い輝きを放つ愛と呼ばれるものだったのだと、ぼくは確信しています。
夫婦という共同体に、そもそも「恋愛」などというちっぽけなものは存在していないのです。
「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」という概念は、「夫婦に恋愛関係が存在する」という前提条件が間違っているため、成立し得ない幻の概念なのです。
反「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」という時代の流れに乗り、婚外恋愛、オープンマリッジ、セカンドパートナーなど声高に叫ばれますが、誰といくら恋愛しようが、誰といくら体を重ねようが、いずれ飽きるときはやってきます。
お互いを大切にし合うことを知らず、性衝動に突き動かされるまま、恋愛を重ねることが現代的なのでしょうか?
ぼくはそう思いません。
ですが、多くの女性が婚外恋愛を求めます。
なぜなのか?
そこには、反ロマンチック・ラブ・イデオロギーといった古い社会体制への反発とは異なる、生々しい現実が存在します。
婚外恋愛をする夫婦とは?
夫は変わらない。わたしが何を言ってもムダ。今までもさんざん言ってきた。こんな人の相手をして女として終わるのイヤ。
女として終わる前に、恋がしたい。
そう言う女性は多いです。
ここには二つのポイントがあります。
夫に嫌気がさしていること、そして「女性として終わる」ことに危機感を抱いていることです。
「夫に嫌気がさしている」を分解すると、夫から大切にされてこなかったことで寂しさがたまっており、誰かから大切にされたいと激しく望む感情が存在することがわかります。
そのため、ちょっとでもやさしくしてくれる人が現れれば、簡単になびいてしまうのです。
ぼくが呉服販売員をしているときに出会った、30代~40代の女性たちもそうでした。
実際、そういった女性たちの心理を悪用し、枕営業をしている販売員もいました。
「女性として終わる」ことは、男性のぼくにはピンとこないですが、男性から求められない年老いた女性には価値がないと感じているのか、子どもを産めなくなる前に妊娠しようと本能が働いているのか(ポッドキャストではそういったコメントを女性からいただきました)、「恋愛=素晴らしい体験」とメディアによって洗脳されているからなのか。
おそらく、「誰からも女性として大切にされず、求められずに年老いていくことへの恐怖」なのかもしれません。
もし、女性の方でご意見ある方いらっしゃいましたら、コメント欄で教えていただけると助かります。
いずれにしても、この二つが彼女たちを婚外恋愛へと走らせます。
そして、妻の婚外恋愛を承認してしまう男性には、反「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」を理屈で理解し、受け入れている方が多いです。
夫婦のなかだけにセックスを閉じ込めることにムリがあると。
ですが、頭のなかの理屈ではなく、実際に妻が他の女性に恋愛をすると、まったく違う反応が体に現れます。
身を引き裂かれるほどの辛さにさいなまれ、死にたくてたまらなくなる。妻が他の男に抱かれることを少しでも考えただけで、全身の血の気が引いていく。
そして、初めて自分にとっての妻の「定義」に気がつくのです。
「自分にとって、この世でもっとも大切な存在であるべき人」という定義に。
婚外恋愛をする女性は、夫から与えられるはずだった愛情に飢え、加齢による性的魅力の劣化を恐れている。
妻の婚外恋愛を許可する男性は、ロマンチック・ラブ・イデオロギーという実在しない幻の社会概念に反発し、社会的正しさに酔いしれ、誤った決断をする。
二人に足りなかったものは、「恋愛と愛の違いへの理解」、そして、「愛する努力」、たったそれだけだったのに。
恋愛と愛、この二つの間に横たわる絶望的なほど広大な海を渡る人は少なく、航海の最中にパートナーの無理解という嵐に打ち負かされ、愛する努力を放棄する人は多いです。
また、ロマンチック・ラブ・イデオロギー、多様性など、現代的で一見正しいことを言っているように聞こえる概念を、自分の都合のいいように利用している人も多いです。
恋愛と愛はまったく違うものである。
恋愛から愛へと移行するには、目の前の相手を大切にするという努力がお互いに必要になる。
大切なことは、こんなにもシンプルなのに。
ーーあとがきーー
最近、2年前のポッドキャスト音源を少しづつYouTubeにアップしているのですが、意外に聴かれてびっくりしました。
ポッドキャスト音源をビデオにしてアップするのがめんどくさいので、2年前に数話分アップして放置していたのですが、休日にたまたま時間ができて30本ほどまとめてアップしたら、合計視聴数が3,000回を超えたのです。
他の動画からのインプレッションが数万もあるので、音声だけのポッドキャストであってもYouTubeでは聴かれやすいようです。
もっと早くやっておけばと後悔してます・・・
もし、ポッドキャスト配信を始めたばかりの方は、面倒でもYouTubeでも同時配信をした方がいいです。
有名人でもなんでもない人間のポッドキャストはなかなか聴かれにくいですから、リスナー誘導力のあるYouTubeというプラットフォームを活用する価値はめっちゃあると思います。
よろしければ、チャンネル登録、よろしくお願いします!
ーーお知らせーー
この記事は「男性向け夫婦関係改善本」のための下書きです。
下の目次の(←ここ)とある箇所の記事です。記事を書き足していき、最後は一冊の本にします。
下線がある目次はすでに書いた記事へのリンクです。クリックすると記事に飛びます。
本が完成するまで記事を書き続けますので、応援していただけると嬉しいです。
それから、夫婦関係研究へのサポートも募集しています。
サポートはポッドキャスト「アツの夫婦関係学ラジオ」運営費用、取材費など、大切に使わせていただき、毎月末にサポートメンバー向けに、活動報告記事をお送りさせていただいています。
ぼくと同じく「世の中から夫婦関係に悩む人をなくしたい」と思ってくださる方、アツを応援したいと思う方は、ぜひサポートをよろしくお願いします。
第一部:なぜ、あなたは妻から嫌われたのか?
◾️第一章:恋から愛への移行不具合
○恋のメカニズム
○産後の妻の変化への無理解
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
産後の妻の変化2:肉体と精神がズタボロになる産褥期
産後の妻の変化3:産後女性の性欲減少メカニズム
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
○絆を構築する共同体験の欠如
◾️第二章:無から愛の生成不良
○「Who you are? 」ではなく「What you have ?」であなたが選ばれた場合
◾️第三章:夫への恨みの生成過程
○未完に終わった夫婦の発達課題
・結婚前に獲得すべきだった「本当の親密さ」とは?
・未確立な夫婦のアイデンティティ
・親になること、夫婦になること
○非主張的自己表現の呪いから抜け出せない妻
○攻撃的自己表現をやめられない夫たち
○妻の不信感を募らせる、夫の非自己開示
○「夫への恨み」はいかにして生まれるのか?
○なぜ、あなたの妻は「婚外恋愛」を望むのか?(←ここ)
◾️第四章:セックスに関する無理解
○産後にセックスに興味を失う理由
○生理周期に伴う性欲の変化
○性に関する夫婦の話し合いの不在
◾️第五章:現状把握と事態の受け入れ
○妻の恨みの根幹を知る
○思い込みにとらわれず質問を恐れない
○客観的に自分たちを見つめる
◾️第六章:妻から嫌われる3つのパターン
○家庭より仕事を優先してきた
○家族の幸せより自己実現を優先させてきた
○妻への思いやりより自己の欲望を優先させてきた
第二部:では、どうするか?
◾️第一章:皿洗いをする前にやるべきこと
○夫婦の絆の土台となる”親密性”
○「受け止めてもらえる」安心感を妻に与える
○柔らかな感情の掘り起こし
◾️第ニ章:愛着の形成が二人の絆を作る
○柔らかな感情の共有
○相互理解という快感
○夫婦に恋愛は必要ない
○ドーパミンではなく、オキシトシンが愛を作る
◾️第三章:自分も相手も大切にするアサーティブコミュニケーション
→詳細考え中
◾️第四章:セルフコンパッションで関係改善の努力を継続
→詳細考え中
◾️第五章:セックスは愛の最終形態
○セックスは手段、目的は親密性への触れ合い
○性の話し合いを恐れない
第三部:フェニックスマンの特徴
○夫婦関係を改善できる男性の特徴とは?
それでは、また!