妻を”ママ”と呼ぶ違和感の正体
ぼくは絶対に妻のことを”ママ”と呼ばないと決めているんです。
妻を”ママ”と呼ぶことを想像しただけで、なぜか気分が悪くなるんですね。
この違和感の正体はなんなんだろうと思っていたのですが、昨日の記事で書いた「パパと呼ばれたくない」話と同じように、妻を”ママ”という記号の中に押し込みたくないという気持ちがぼくにあるんだと思うんです。
妻を”ママ”と呼ぶことで、妻を”ママ的な存在”として認識し、”ママ的な役割”を妻に望むようになる…。そんな恐怖を感じているんです。
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妻のひとりの人間としての素晴らしい部分や、女性としての素敵な部分が切り捨てられ、”ママ”という記号から連想されるイメージだけが残る。
”ママ”という記号から連想されるイメージ。
それは、例えば「子どもの面倒をみる」ことであったり、「家事をする」ことであったりするわけです。
ぼく自身が自分の母を”ママ”と呼んだことがなかったので、”ママ”というワードに込められている”母親的なもの”のイメージがより強いんだと思うんです。
「ドラえもん」に出てくるのび太のママとかスネ夫のママとか、ああいうイメージがどうしても頭に浮かぶんですね。
のび太のママっていつもエプロンをかけて料理をしたり洗濯物を干したり、家事ばかりしていますよね。スネ夫のママはいつもスネ夫の心配ばかりしてますよね。
「のび太ー!宿題やったのー?!」とか、「スネちゃま、お勉強しなきゃダメざんすよ」みたいな。
ぼくの”ママ”のイメージってそういう感じなんです。
いつも子どもの面倒を見て家事をして、子どもの心配ばかりしている。そして自分の時間は一切ない。
のび太とスネ夫のママが自分のために何かをしたり、遊びに行ったりすることってないじゃないですか?
24時間を子どものために使っている。
でも、そんなことってあり得ないじゃないですか?
現実世界でそんなことばかりしていては、”自分の時間”がゼロになって息苦しくなっちゃいますよね。
ぼくが妻を”ママ”と呼びたくないのは、そういった”ママ的なもの”に妻を押し込みたくないからなんです。
それから、妻を”ママ”と呼ぶことで、ぼくが”親”としての役割を放棄しやすくなるとも感じているんです。
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妻を”ママ”という記号の中に押し込むことで、ぼくの中で妻は”ママ”として動かなければいけない存在という認識になってしまうんですね。
妻を”ママ”と呼ぶことで、妻に対する”ママ”としての期待がぼくの中で生まれるんです。
”ママ”なんだから子どもの面倒見てくれるよね?
”ママ”なんだから子供を泣き止ませてくれるよね?
”ママ”なんだから家事をしてくれるよね?
そういった期待が生まれてしまうんです。
妻を”ママ”と呼ぶ想像をしただけで、これだけの期待が生まれてしまうんだから、実際にずっと呼び続けている男性は、妻のことを”ママ的な存在”としてしか認識できなくなった人もいるんじゃないかなって思うんです。
そういった妻への期待が生まれて、その期待に沿った行動を妻がしないと、今度は失望や怒りが生まれてくるんですよね。
なんで子どもの面倒見てくれないの?
なんて家事をしてくれないの?
なんで?
”ママ”なのに?
そういった見当違いで自分勝手な失望がぼくの中に生まれてくるのが、ぼくは怖いんです。
いつも笑顔でときには厳しく子どもの面倒を見て、いつも夫の帰りをにこにこ待っている。
そんなアニメの世界のような”ママ像”に妻を勝手に当てはめて、勝手に期待して、勝手に失望をするのが怖いんです。
そして、ぼく自身が”親としての意識”を放棄するんじゃないかって恐怖心もあるんです。というか、きっとそうなると思います。
妻を”ママ”という記号の中に押し込め、勝手な期待をして勝手な失望をする。
妻を”ママ”と呼びことで、きっとぼくはそうなってしまうと思うんです。
妻を”ひとりの人間”として尊重するためには、そうしてはいけないなって思うんです。
妻を”ママ”と呼ぶ違和感の正体は、おそらくぼくのそういった恐怖心からきているんだと思うんです。
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夫婦が”ママ”や”パパ”と呼び合うことって、”ママ”と”パパ”という役割を自分から望んで演じることになるんじゃないのかなって、思う時があるんです。
妻に”ママ”という役割を期待し、夫に”パパ”という役割を期待する。
そして、2人ともその期待が外れたときにお互いに対して失望する。勝手に期待していただけなのに。記号の中に押し込めて勝手に期待していただけなのに。
そして、自分自身も”ママ”や”パパ”という記号に押し込み、自分で自分に呪いをかけているんじゃないのかなって思うんです。
もしかしたら、夫婦がお互いに名前で呼び合うことによって、相手を”個人”として尊重する気持ちが、ちょっとずつ生まれてくるんじゃないのかなって、ぼくは思うんです。
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