妻の家出によってぼくらに起こった変化とは?
「もう!出てく!」
妻はそう叫ぶとスマホを握りしめ、あっという間に玄関から外へと走り出ていってしまった。
リビングでは6歳の双子が兄弟喧嘩の真っ最中で、泣きじゃくりながらお互いを叩き合っている。
2歳の三男はお風呂に入らないと言って駄々をこね、キッチンの床に寝転び動こうとしない。
ダイニングテーブルの下には、子どもたちが食べこぼしたシラスと納豆が落ちている。
キッチンの流しには洗われるのを待っている食器が積まれている。
子どもたちの泣き声と叫び声が小さな我が家に響き渡り、ぼくは途方に暮れた。
ぼくの妻はよく家出をする
冒頭のシーンは一年ほど前までよくあった光景です。今でも似たようなことはありますけど。
双子の長男次男が、おまえが悪い、いやお前が悪いんだと喧嘩を始め、まだ小さい三男がイヤイヤ期を発動させ、やるべき家事が山積みになったまま何もできずに、どんどんストレスが増えていくのを感じる。
今年で4歳になる三男のイヤイヤ期は終わりましたが、それでも夕方に子どもたちと家にいると、あまりのストレスで頭がおかしくなりそうな時があるんです。
そんな時、うちの妻は「もう出ていく!」と言って家出をするんです。確か、上の子たちが1〜2歳の頃からたまに家出をしていたと思います。
最初は(おいおい!なに言ってんだ!こんな状況で俺を一人にするなよ!)と焦っていたんですよね。
だって、子どもたちは喧嘩しているし、お風呂は入らないわ、夕飯の片付けはあるわ、やること山積みで頭がおかしくなりそうな状況はこっちも同じですから。
だけど、本当に妻が家から出ていくと、(しかたない、やるしかない)と腹が決まるんですね。大人はぼく一人しかいないですからね。妻はいつ帰ってくるか分からないですし。
「はい!お風呂入るよ!」「はい、あと15分でご飯食べて!」などと子どもたちに声をかけて、なんとかなだめすかしながら夕方の家事(食事、お風呂、食器片付け、ダイニングの掃除)を終える頃には、なんだか充実感すら感じているんです。
(おれ、一人でやったったわ…。)
と、なんなら仕事以上の充実感を感じるんですよね。
家事と子どもたちの気持ちが落ち着いた頃に妻が帰ってくるのですが、その頃には妻の気持ちも落ち着いているんです。
キャパオーバーの時にこれ以上子どもたちと一緒にいたら、自分が自分でなくなってしまい、子どもたちを虐待するかもしれないと以前妻が言っていましたが、ぼく自身もそんな恐怖を感じることがあるのでよくわかります。
妻が家出をする時は精神崩壊の一歩手前なんだと思うんです。
「妻の家出」は妻に心の余裕を与えて、ぼくには「親としての当事者意識」を与えてくれるいいチャンスなんです。
初めの頃は焦りが強かったですが、今ではそう感じるようになったんです。
もっと女性はワガママになっていいと思う
「産後クライシス」という本にこんなことが書かれています。
長期の育休を取ると赤ちゃんとずっと一緒にいる苦労が少し分かりますが、子どもが1歳以上になっても大変な時期ってずっと続くんですよね。
うちのように妻の方が家にいる時間が長い場合は、子どもに関する負担が妻に大きくのしかかるので、ぼくの知らないところで妻は肉体的かつ精神的にギリギリまで追い込まれていたんです。
その「ギリギリの状態」って体験してみないと分からないんですよね。
「こんなことがあって、あんなことがあって大変なの!」と妻に言われても体感はできないし、なんなら「だったらこうすればいいじゃないか!」と問題解決型の提案をして「あなたは何も分かってくれない!」と逆に怒られるなんてことがしょっちゅうあったんです。
ぼく個人の感覚でも、「妻の家出」は夫に親としての当事者意識をもたせるのに効果的だなって感じてます。
もっと多くの女性が家出をしてもいいんじゃないかな、もっとワガママになっていいんじゃないかなって思うんです。
妻の家出が夫に親としての当事者意識を持たせる
ぼくは三男が生まれた時の3ヶ月間の育休のおかげで、「妻が整えてくれていた世界」で生きていたことを知ったけれど、「妻の家出」はもっとずっと前からぼくに「親としての当事者意識」を植え付けるのに役立っていたんだと思うんです。
夫に小さな子どもの面倒や家事を任せるのは怖いかもしれないけど、そこで起こったことの責任は夫にあるのだから、勇気を出して任せてしまってもいいと思うんですね。
ぼくは「「一人でやらないといけない」というプレッシャーも感じたけれど、それ以上に「任せられた信頼感」と「やり切った後の充実感」の方が強く感じられたんです。
その信頼と充実が、親としての当事者意識を育んでくれたような気がしています。
妻との関係や夫との関係に悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。
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夫婦関係に関するポッドキャストをやっています。男性向けですが、ご夫婦で聴いていただけるとものすごく嬉しいです。