妻に感情を伝えることで、ぼくらに起こった変化とは?
「あなたが何を考えているか分からないの」
突然、妻が寂しそうにそう言ったんです。あれは確か、子どもが2、3才の頃だったと思います。
ぼくの方こそ、妻が何を言っているのか分かりませんでした。
(ぼくが何を考えているかなんて、一緒にいるんだから分かるだろ?)
そんな風に思っていたんです。
だってずっと一緒にいるし、会話もあるし、自分の意見もちゃんと伝えているし。
なのに、ぼくの考えていることが分からないなんて、そんなことないだろって思いますよね?
でも、妻には何も伝わっていなかったんです。ぼくの”感情”は。
ぼくが妻の言葉にどう感じ、毎日の生活の中で何を感じているのか、そういった”感情”に関することをぼくは妻に伝えていなかったんです。
妻に”感情”を伝えることで、ぼくらの関係はちょっとずつ良い方向へ変わっていきました。
なぜ、妻に”感情”を伝えることが重要なのか?
”感情”を伝えるとなにが起こるのか?
そして、どうすれば”感情”を伝えられるようになるのか?
今日は、そんなことについて書いてみたいと思います。
妻が求めていたのは”意見”ではなく、”気持ち”だった。
妻から何を考えているか分からないと言われた時に、真っ先に思ったのは(いつも言いたいことは言ってるじゃないか)という驚きだったんです。
いつも思ったことを言っているのに”分からない”って、どういうことなんだ?
でも、妻の話をよく聞いてみると、ぼくが普段言っているのは”意見”だったんです。
子どもの鼻水が止まらないと妻が言えば、「いつ病院に連れてく?」とか「風邪なんじゃない」と答えたり。
ぼくはそれで「言っている」と思っていたんですね。
でも、妻が求めていたのは「鼻水が止まらないのは心配だね」とか「また中耳炎になっちゃったらイヤだな…。」とか「早く良くなるといいよね」といった”気持ち”の方だったんですね。
そんなことを言ったところで、子どもの鼻水が止まるわけでもないし、なんの役にも立たないだろとぼくは思っていたんですが、こういったことを妻に伝えるようにしたら、ものすごく妻が納得したような顔をしたんですね。
なんというか、やっと意思が通じ合ったような、初めてコミュニケーションが成立したような、そんな感覚があったんです。
その不思議な感覚を感じたときに(あ、これのことなのか。妻はこのことを言っていたのか)と気がついたんです。
問題解決アドバイスをする前に、”気持ち”を伝えるというワンクッションが必要だったんです。
そのワンクッションがないから、妻はぼくが何を考えているのかが分からなかったんです。
ですが、「心配だね」などの感情は伝えやすいのですが、一番伝えにくかったのは自分の”孤独感”でした。
妻から邪険に扱われた時の寂しさ、まるで自分が無能な存在のように思えてしまう情けなさ。
そういった”孤独感”を妻に伝えるのはとても難しかったんです。
”孤独感”を妻に伝えて起こる変化
「寂しかった」なんて、恥ずかしくてなかなか妻に言えないじゃないですか?
でも、当時(今でもたまに)は(なんか寂しいな)と思うことがあるんです。
家事育児でトラブルが起こって自分が役に立てなくて、(もういいからあっち行ってて)なんて扱いをされた時には、怒りというより寂しさや情けなさの方を強く感じるんですよね。
そして、そういった感情を放っておくと、どんどん妻に対してイライラするようになっていて、ちょっとしたことでケンカになったりするんです。本当にしょうもないようなことで。
「あの時は寂しかったんだ」なんて言ったところで、(それ、言ったところで何になるの?なんか解決するの?)と、思ってしまうし、自分の気持ちを分かって欲しいと思うのって、単なるワガママなんじゃないのかなって思ってたんです。
でも、勇気を出して妻に自分の寂しさを伝えるようにしたら、妻は最初すごい驚いてたんです。
「そんなこと感じてたなんて知らなかった!」
ぼくがなにを感じていたのかなんて、まったく伝わっていなかったんですね。
そして、ぼくがどう”感じているか”という話をしたあとなら、問題解決型の話をしても妻とケンカにならなかったんです。
これはちょっとした驚きでした。
おそらく、ぼくの提案や行動の裏にある”感情”が分かるから納得がしやすいんだと思うんです。
ぼくの感情や提案を妻が受けれ入れてくれるようになってからは、ぼくも自分の感情を素直に出すことができるようになったんです。
きっと、”受け入れてくれる”という安心感があるからだと思うんです。
安心感があるから、ぼくは感情を表現することができて、感情を表現するというワンクッションがあるから、妻はぼくの提案を受け入れてくれる。
こんな好循環が少しづつ生まれていったんです。
ただ、ぼくの場合はうまくいきましたが、人によっては「妻がまったく心を開いてくれないので、どれだけ気持ちを伝えても少しも響かない」というケースもあります。
ぼくに夫婦関係のご相談をされる男性のなかにもそういった方がいらっしゃいます。
そういった場合は夫婦間における強いトラウマが原因で、相手を信頼できなくなっているケースが多いんですね。
そんなときは個人の努力だけでは限界があるので、心理療法ができる臨床心理士の方に(夫婦カウンセラーじゃなくて)相談し、お互いが感情を表現する練習をしていくのがおすすめです。
ぼくの周りでも、臨床心理士さんが間に入ることで感情を伴うコミュニケーションが少しづつできるようになっているケースがあります。
まずは、個人で感情を表現する訓練をしつつ、それでもどうしようもないなら臨床心理士さんに頼るのがいいんじゃないかなって思っています。
夫婦がお互いに感情を伝え合うことが素直にできるようになると、コミュニケーションストレスがぐっと減って、お互いに分かり合えているという実感がすごく強くなるんです。
結局は、”分かってもらえている”という安心感が重要なんだと思うんです。
これを読んでいる方が、少しでも夫婦間で感情を伝え合えるようになれると嬉しいです。
◇◇◇
夫婦関係に関するポッドキャストをやっています。男性向けですが、ご夫婦で聴いていただけるとものすごく嬉しいです。