「わたしが聞きたい答えじゃない!」妻がそう言った日のこと
次男の熱が38度を超え、コロナ陽性が確定した日の夕方のこと。
皿洗いをしているぼくに妻がこう言ったんです。
「イギリスではコロナは普通のインフルエンザみたいな扱いにするらしいよ」
たぶん、このニュースのことだと思います。
妻からそう言われ、ぼくはとっさにこう言いました。
「もうそろそろ経済を回さないといけないから、そういう判断したんだろうね」
すると、妻は機嫌が悪くなり、スッとどこかに言ってしまったんです。
あれ?なにも言ってこないな?話はもう終わったのかな?
そんなことを思っていたら、2時間後に妻にこう言われたんですね。
「さっきのアッちゃんの言葉だけど、あたしが聞きたい答えじゃないの」
「あたしは安心したかったの。次男だけじゃなくて、長男も感染するだろうし、まだ3歳の三男もきっと感染する。子どもは重症化しないというけど、それでも不安なの。きっとだいじょうぶって思いたいの」
そのときに気がついたんです。ぼくは次男が発熱したときから「問題解決モード」になっていたということに。
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これ、男性なら分かってもらえると思うんですが、「問題解決モード」に入ると情緒的な感覚がものすっごく鈍くなるんですよね。
人の感情に鈍感になっちゃうんですよね。しかも、他の人の問題を解決するときなら少しは冷静になれるけど、自分たちの問題を解決するときはそうななれないんですよね。
家族がコロナになると、めちゃくちゃ問題が生まれますよね。
家族感染の防止、感染者の看病、子どもたちの食事の準備、掃除や食器洗いやお風呂などのいくつもの家事、まだ元気な子どもの相手、備蓄品の管理と追加発注などなど…。
数え上げればキリがないほどタスクはあって、それを考え出すとそれだけで頭がいっぱいになって他のことが考えられなくなるんです。
だから、そのときのぼくの頭は左脳だけが超特急フル回転していて、感情に関わる右脳はシャットダウンしちゃってたんです。
だけど、そのときに妻が求めていたのは「安心感」だったんですよね。
不安な気持ちを落ち着かせて欲しかった。
そのことに、ぼくは気づけなかった。
ぼくらは普段ほとんどケンカしないんですが、家族がコロナ感染してからはぶつかることが何度かありました。
家族のコロナ感染ってけっこう大きな出来事だから、仲のいい夫婦であってもギスギスしちゃうので、かなり注意が必要だと思います。
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自分に余裕がなくなっちゃうので、相手の感じていることに鈍感になってしまう。
「考えていること」じゃなくて「感じていること」というのがポイントだと思います。
臨床心理士のカップルセラピーに行かれた方が、心理士さんからこう言われたそうなんです。
「首から下で感じていることを教えてください」
首から下ってなんだろう?
と思ったんですが、頭で考えていることじゃなくて、心で感じていることって意味なんですね。
自分の体がどう感じているか、寂しい、イヤな感じがする、そういう自分の体が感じている感覚に敏感になるってことだったんですね。
家族のコロナ感染はお互いに余裕がなくなっちゃうので、自分の感情にも相手の感情にも鈍感になりやすかったなぁと、今では思うんです。
夫婦のエピソードがもう一つあって、「相手がどういう意図でその行動をしているか分からなくてケンカになる」ということもありました。
◇
次男が発熱した翌日の夕飯に、妻は次男に納豆巻きを食べさせたのですが、次男は吐いてしまったんですね。
ぼくが次男の隔離部屋に行って嘔吐物の処理をしたんですが、内心は(なんで具合の悪いやつに納豆巻きを食べさせるんだよ)とイライラしてました。
ふと、床を見るとなぜかミルクティのペットボトルが置いてある。
(なんで、具合が悪いやつにミルクティ飲ませてるんだよ。ポカリとかだろ、こういう時は)と、さらにイライラしちゃったんですね。
なんで、納豆巻きを食べさせたんだ?なんでミルクティを飲ませたんだ?
と、妻と言い合いになったんですが、妻の話を聞いてみると、次男はその日はだいぶ元気になって、朝ごはんも昼ごはんも普通にいつもと同じものを食べていたそうなんですね。
病院にPCR検査に行ったときも元気だったと。そして、病院には入れなくて駐車場で検査をしたので、寒くてホットミルクティを自販機で買って湯たんぽ代わりにしていたそうなんです。
病院の駐車場にはテントが一棟だけ立っていて、そこでPCR検査をしているのですが、一回に一組しか入れないんですね。
でも、外は木枯らしが吹いていて寒い。寒いから患者がテントにどんどん入ってきちゃって、看護師さんが「入らないでください!」と怒っていたそうなんです。
そんな事情をあとから聞かされて、妻の行動の理由が分かってスッキリしました。でも、ぼくらって、こういうことは普段はもっと早くから共有しているんです。
妻はなんてことない日常のささいなことを話してくれるので、何が起こっているかをぼくは知ることができていたんですよね。
だけど、精神的に余裕がなくなると、そんなことを伝え合うこともなくなってしまって、相手の行動の背景が読めなくなってしまう。
危機的な状況こそ、お互いにささいなことを伝え合い、相手と自分の感情に敏感になる必要があるんだなと感じた出来事でした。
小さな子どもがいてコロナ感染が起こると、きっと夫婦の両方が余裕がなくなってしまうと思うので、もしそうなってしまった時は、「ささいなことでも情報共有」「お互いの感情に敏感になる」を意識すると、うまくいくかもしれませんね。
うちは、隔離期間があと4日間あるので、もうちょっとがんばろうと思います。
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夫婦関係に関するポッドキャストをやっています。ご夫婦で聴いていただけると、ものすごく嬉しいです。