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考えたこともなかった「夫婦のアイデンティティ」

結婚って、なんのためにするんでしょう?

あなたはなんのために結婚しました?

家族を作りたかった?子どもが欲しかった?経済的に安定したかった?精神的に安定したかった?それとも、恋人とずっと一緒にいたかったから?

妻から嫌われた男性の話を聴いていると、結婚の理由があいまいであることが多いです。

妻から結婚を迫られたから、学生時代から付き合っていてなんとなく流れで、いい年だったからなど。

自分から強く望んだわけではなく、相手から求められたり、結婚のタイミングだった時にたまたま付き合っていた女性となんとなくというパターンが多いです。

そして、強く望んで結婚したわけではないので、相手の幸せを考えることもなく、独身時代の延長でキャリア上の自己実現を追い求める。

ぼくも結婚当初はそうでした。相手の幸せよりも、自分の夢の方が大切でした。

そこで生まれるのが、「夫婦アイデンティティの未確立」という問題です。

多くの男性が妻との関係をこじらせる原因が、ここにありました。

自分の夢は大切だけど

前回の記事で書いたように、結婚する前に自分のアイデンティティ(自分が自分であることへの自覚、そうした自分が他者から承認されているという実感)を手に入れている男性はそうそういないと思うのです。

多くの男性にとって、アイデンティティは仕事を通して獲得しますよね?

少しづつできることが増えていき、大きな仕事にも手を出せるようになってくる。

責任が伴う仕事をいくつもこなすうちに、自分への自信がつき、自分に何ができて何ができないのかもわかるようになってくる。

自分ができることが「自分が自分であることの自覚」を生み、会社や同僚からの評価が「他者から承認されている実感」を育てていきます。

ぼくもそうでした。いくつもの「できた!」「やり遂げた!」という感覚と他者からのフィードバックが自己を形作っていったなと感じています。

昔、小さな広告代理店で働いていた頃、納期がかなり危ない案件があり、ひとりで中国工場に1ヶ月間張り付き、品質とスケジュールの管理をしたことがありました。

通訳の女の子が疲労で来れなくなり、ぼく自身も食中毒になり、痛むお腹をさすりながら、つたない中国語(というかほとんど話せません)で現場の人間とやり取りを重ね、なんとか生産を間に合わせ、すべての商品を積み込んだトラックが黄色い砂埃のなかを走り去っていた姿は、一生忘れられそうにありません。

そうした体験の一つ一つが、ぼくという自己を作っていったなと思うのです。

そして、「あのような高揚感をまた感じたい!」という思いが、「もっと大きな仕事をしたい!経験したことがない仕事をしたい!」といった仕事への渇望を生む原動力にもなったことも事実です。

こういった自己実現の追求が、人を精神的に強くさせ、経済力をつけさせる要因であることは確かだと思います。

ですが、一方で、夫婦は妻と夫という二人の共同体であることも事実です。

個人の自己実現や、個人のアイデンティティの確立とは異なり、「夫婦というユニット」としてのアイデンティティ確立が求められるのです。

そして、ぼくや妻から嫌われた男性たちは、そのポイントを見逃してました。

夫婦ユニットとしてのアイデンティティの確立

「夫婦・カップルのためのアサーション」には、「夫婦のアイデンデンティティ」についてこう書かれています。

「私たちは夫婦であり、お互いにかけがいのない存在だ。これから人生をともに歩んでいくのだ」ということをあらためて実感し、引き受けていくこと。

なんだ、当たり前のことじゃないか。そんなことわかってるよと思う人もいますよね。ぼくもそう思っていました。

ですが、もうちょっと具体的に見ていくと、できてないことに気がつかされるはずです。

ぼくの場合、新卒で働いた呉服屋が倒産し、次に働いた商社では「使えないヤツ」だとクビになり、今にも潰れそうな零細企業(ベンチャーなんてかっこいいものではなく、文字通り潰れそうな古い会社です)で必死に働いていた頃に妻と結婚しました。

「働く」という点ですっかり自信をなくし、なんとか這い上がろうと、なけなしのお金を注ぎ込み、グロービスというビジネススクールに通い、クリティカルシンキングとマーケティングを学んでいました。

失われた自分への自信、安心できない経済状況。この二つを打破したくて、毎週土曜日に麹町のグロービスまで通っていたのです。

結婚したばかりですから、妻はずっと一緒にいたがっていたのですが、ぼくはそれどころではありませんでした。

失われた自分のアイデンティティを再構築させることで頭がいっぱいだったからです。

この頃、妻は何も言わなかったので、ぼくは妻は何も不満はないのだと思っていました。ですが、10年後に「あの時、すごく寂しかった」と聞かされたのです。

その10年間、ぼくは「妻が文句を言わないのであれば」、ぼくの行動を妻に説明する必要がないと無意識に判断していたのだと思います。

ぼくの過ちは、妻を毎週土曜日に一人にさせたことではなく、それに対する話し合いを怠ったことにありました。

「夫婦・カップルのためのアサーション」によると、新婚期の夫婦の発達課題の一つにこのようなものがあります。

「夫婦としての家庭生活と、友人関係や仕事とのバランスをとること」

「夫婦」と「夫婦外の関係」、これら二つのバランスをとるには、夫婦がお互いに「バランスが取れている」と認識する必要がありますよね?

外の人からは不均等に見えても、当事者として納得できており、その環境に満足し、結婚生活に幸せを感じているなら問題ないわけです。

問題は、パートナーと話し合いをせず、一方的にバランスを崩す行為です。

相談も感情の共有もないので、パートナーとしては相手が何を考えているのかわからず、ないがしろにされたような寂しさを抱えますよね。

ぼくの例で言うなら、ぼくは妻に言うべきだったのです。

「仕事人としての自分に自信が持てないから、自信をつけたい。それから、今のぼくの稼ぎでは子どもを育てられない。経済的に豊かになりたいから、そのための行動をしたいんだ」

そう妻に言えば良かったのです。

ですが、ちっぽけなプライドが邪魔をして、妻に伝えることはできませんでした。

多くの男性もそうだと思うのです。

家庭と仕事のバランスを保つ前に、未発達な自己の確立を求めてあがいているはず。そして、そんな情けない姿を妻に見られたくないという恥の感情を抱えているはず。

そうですよね?

ですが、夫婦のアイデンティティである「お互いを大切な存在であると認識し、これからの人生を一緒に歩んでいくことへの実感」のためには、カッコ悪くても情けなくても、自分を妻にさらけ出さないといけないと思うのです。

なぜなら、不満や葛藤や喧嘩を通しても、二人の関係が壊れず、強い絆を手に入れられるようになるには、お互いの素直な自己開示が必要になるからです。

どんなに恥ずかしくても、どんなにカッコ悪くても、素直な自己開示と感情の共有が二人の絆を作り、二人のアイデンティティを形作っていくのだと思います。

結婚12年目にして、やっとそう感じられるようになりました。


ーーあとがきーー

今読んでいるこの本がめっちゃ面白いです。

悩みはうんこと一緒で、「なんでこんなの出ちゃったんだろう」とか考える必要はないんだと。ただ、流しちゃえばいいんだと書かれていて、いやうんこの話だけじゃないんですけど、なんだか気持ちがちょっとだけ楽になりました。

どうやって自分の心を安定に保てるのかが、今のぼくの課題なんですが、心に浮かぶネガティブな感情って、ただの現象でしかないんですよね。

あ、なんか浮かんだなって客観的に見られるようになると、楽になるのかなーと最近は考えています。

まだまだできないんですが、何度もイメージすることで、少しだけ以前より気持ちを楽にすることが簡単になってきたようが気がします。

メンタルケアに悩んでいる方にはおすすめです。


ーーお知らせーー

この記事は「男性向け夫婦関係改善本」のための下書きです。

下の目次の(←ここ)とある箇所の記事です。記事を書き足していき、最後は一冊の本にします。

本が完成するまで記事を書き続けますので、応援していただけると嬉しいです。

また、ぼくの夫婦関係研究へのサポートも募集しています。応援したいと思ってくださる方はよろしくお願いします。


第一部:なぜ、あなたは妻から嫌われたのか?

◾️第一章:恋から愛への移行不具合

恋のメカニズム
○産後の妻の変化への無理解
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
産後の妻の変化2:肉体と精神がズタボロになる産褥期
産後の妻の変化3:産後女性の性欲減少メカニズム
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
絆を構築する共同体験の欠如

◾️第二章:無から愛の生成不良

○「Who you are? 」ではなく「What you have ?」であなたが選ばれた場合

◾️第三章:夫への恨みの生成過程

○未完に終わった夫婦の発達課題(←ここ)
○非主張的自己表現の呪いから抜け出せない妻
○攻撃的自己表現によりエスカレートするネガティブループ
○妻の不信感を募らせる、夫の非自己開示
○時限爆弾となる「夫への恨み」
○増加する”婚外恋愛”願望

◾️第四章:セックスに関する無理解

○産後にセックスに興味を失う理由
○生理周期に伴う性欲の変化
○性に関する夫婦の話し合いの不在

◾️第五章:現状把握と事態の受け入れ

○妻の恨みの根幹を知る
○思い込みにとらわれず質問を恐れない
○客観的に自分たちを見つめる

◾️第六章:妻から嫌われる3つのパターン

○家庭より仕事を優先してきた
○家族の幸せより自己実現を優先させてきた
○妻への思いやりより自己の欲望を優先させてきた

第二部:では、どうするか?

◾️第一章:皿洗いをする前にやるべきこと

○夫婦の絆の土台となる”親密性”
○「受け止めてもらえる」安心感を妻に与える
○柔らかな感情の掘り起こし

◾️第ニ章:愛着の形成が二人の絆を作る

○柔らかな感情の共有
○相互理解という快感
○夫婦に恋愛は必要ない
○ドーパミンではなく、オキシトシンが愛を作る

◾️第三章:自分も相手も大切にするアサーティブコミュニケーション

→詳細考え中

◾️第四章:セルフコンパッションで関係改善の努力を継続

→詳細考え中

◾️第五章:セックスは愛の最終形態

○セックスは手段、目的は親密性への触れ合い
○性の話し合いを恐れない

第三部:フェニックスマンの特徴

○夫婦関係を改善できる男性の特徴とは?


それでは、また!


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