『遠慮セックスレス』を引き起こす『恥』のメカニズムとは?
一度夫からのセックスの誘いを断ったら誘われることがなくなった。
もしくは妻からの誘いを断ったら2回目は2度とこなかった。
お互いにしたくないんだろうなと日々過ごすうちに、お互いに相手への愛情表現は減っていき、気がつけば何年もセックスレスとなってしまった。
親密性を失った二人は心の充足を外へと求め、家庭の中には冷たい空気だけが取り残された。
そんな経験はないでしょうか?
過去にお聴きしたお話のなかには、こういった「遠慮セックスレス」とも呼べるようなものがいくつもありました。
遠慮セックスレスはなぜ起こるのか?そこにある真の理由はなんなのか?
ぼくは「恥」の概念が大きな役割を果たしていると考えています。
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たとえば、妻が夫からの誘いを何度か断った場合、こう考える夫は多いです。
(これは今回だけじゃなくて、もう2度としたくないということなのかもしれない……。)
(本人もしたくないようだし、自分も傷つきたくないからもう誘うのはやめよう……。)
こういった葛藤が高まると(自分は妻から嫌われているんだ)とまで感じるようになっていくんです。
妻が拒否する理由は単なる体調不良や生理周期によるものだったりするので、客観的に考えると納得できるものなんですが、性というセンシティブなトピックであることや、断り方の難しさからそういった葛藤はどうしても生まれるんですよね。
また、夫が妻からの誘いを断ると(たとえ、それがたった一回であっても)、(ああ、この人はもう私としたくないんだ。私に興味がないんだ。もう誘うのはやめよう)と感じるようにもなっていきます。
だけど夫が拒否する理由は単なる仕事の疲れであったり、加齢による精力低下だったりで、妻のことが嫌いになったわけじゃないんですよね。
そこをうまく説明できずに、(いや、ちょっとムリ……。)なんて断ると次はもう2度とやってこなかったりします。
なんでこんなことが起こると思います?
ぼくはそこに二つの理由があると思っています。
ひとつは性を不純なものとして認識していること。
ふしだらなこと、不健全なこと、そう認識していると断られたときに強い罪悪感を感じてしまいますよね。
もうひとつは、恥のパワーに圧倒されていること。
誘って断られたとき、こう感じる人は多いはずです。
(断られるのが恥ずかしい。自分を全否定されたように辛い。だったらもう誘うのはやめよう。相手もしたくないんだし)
そこに『恥』の概念がドーンと存在しています。性の話題は恥の感情を強く呼びおこしやすいからです。
では、なぜ人は恥を感じるのでしょうか?
そんなものなければ葛藤なんか生まれないですよね。
実は恥には二つのメリットがあると言われています。
ひとつは社会的評価を維持すること。ふたつめは集団内の協力を促進することです。
どういうことか?
シカゴ大学のMitchell Landersの論文によると、恥のシステムは次のように定義されています。
簡単にいうと、恥を感じることでまわりの人から変な人だと思われずに済み、社会のなかでみんなから協力してもらいやすくなるということです。
社会集団のなかで生きやすくなるためのサバイバル戦略ですね。
これはそのまんま家庭にも当てはまって、パートナーから変な人(ふしだら、不健全、デリケートに欠ける)だと思われないよう、セックスを拒否された時に恥が芽生えるようにできているんです。
だけど、そもそもセックス自体は不健全なものでもないし、なんなら愛の最終形態なんですよね。
性の話題から恥を振るい落とすには二つのポイントがあります。
ひとつは「性を健康的(ポジティブ)なものとして扱う」こと。
ふたつめは「性にまつわる恥の概念を理解する」こと。これは夫婦関係学ラジオ562話で話したパートナーシップナレッジのひとつです。
パートナーから「したくない」と言われたときに感じる「恥」に敏感になり、恥は生存戦略なんだと自分の気持ちを落ち着かせ、冷静に関係性に向き合うことが「遠慮セックスレス」から抜け出すヒントなんじゃないかなって思ってます。
この話は夫婦関係学ラジオでも話してます。ちょっと違う角度から話してるので、ご興味ある方は下のリンク先からお聴きください。
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