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”夫への恨み”との付き合い方。

「あたしは忘れてないよ。消えることはないと思うよ」

女性の夫への恨みはどうやったら消えるのか、妻と話していた時のことでした。

妻がサラッとそう言ったので、ぼくはびっくりしたんです。

(こんなにぼくは変わったのに、まだ許せてないのか……。)

ぼくは上の子たちが4歳になる頃まで、家庭よりも仕事への比重が高い生活を送っていました。

そんな生活の中で、妻にとっては忘れられない心の傷をぼくはいくつも負わせてしまっていたのです。(申し訳ないことに、ぼくがよく覚えていない案件もあります)

でも、三男が生まれる少し前から、ぼくは妻のケアを心がけるようになり、ぼくらの関係は劇的に変わりました。

妻は「あっちゃんは三男が生まれてからが、一番わたしに優しくなった」と言います。

だからこそ、驚いたんです。

ここまでぼくは変わったのに、ここまで妻のことを考えているのに。

なのに、まだ恨みを抱いていたなんて……。

どうやって妻の「夫への恨み」と向き合えばいいのか、ぼくらが悩んだ末に辿り着いた答えを今日は書こうと思います。

夫への恨みを忘れられなくて困っている方。

妻から恨みをぶつけられてどうしたらいいかわからず困っている方。

そんな方のヒントになれば嬉しいです。

子どもが生まれてから急に関係性が悪くなったなと、感じられたことはありませんか?

ぼくらもそうでした。

あんなに仲がよかったのに、なぜ幸せなはずの子どもの誕生がぼくらの関係性を引き裂くのか?

不仲の海で溺れそうになっていた当時は、それがなぜなのかさっぱりわかりませんでしたし、妻からの恨みの言葉もまっすぐ受け取ることはできませんでした。

きっと、そういう方はぼくら以外にもたくさんいるんだと思います。

夫への恨みが凝り固まってしまい、何を言われても反発しか感じない。

もう過去のことだし、許したいのだけど当時を思い出すとドス黒い感情が湧き上がってくる。

こんな感情を抱えていることが嫌なので、忘れてしまいたいのだけど、どうしても心から消えてくれそうもない。

一体どうしたらいいんだろう?

もしくは、妻から過去の恨みつらみを言われて困ってしまう。

ただ謝ることしかできないのに、なぜそう何度も恨みをぶつけてくるんだろう?

今さら過去を変えることはできないのに、一体どうすればいいんだ?

そんな戸惑いを感じられている方もいると思います。

確かにそうなんですよね。

妻が恨んでいるのは過去のことであって、今さら変えることなんてできないですよね。

だったら謝るしかないので謝るんだけど、いくら謝っても妻の恨みは消えそうもない。

(一体、どうすればいいだよ……。)と思ってしまいますよね。

ぼく、妻やトラウマ治療専門家の方と話していて気がついたんですが、恨みは無理に消そうとしなくても、夫婦関係を良くすることはできるようなんです。

トラウマ治療専門家の矢野さんによると、妻が夫からトラウマと呼べるほどの心の傷を負っている場合(暴力、暴言、浮気、ワンオペによる心身の疲労など)、他のトラウマと大きく違う点は「加害者がずっとそばにいる」という状況なんだそうです。

ぼく、トラウマを負わせた人が被害者を癒すことなんてできないと思っていたんですが、加害者だからこそ癒すことができるものがあるんだそうです。

逆に、夫婦の場合、加害者であるパートナーが被害者であるパートナーに寄り添うことができないと、関係性の回復もトラウマの解消も難しくなるんです。

ぼくの妻は「過去の恨みは忘れていない」と言います。

恨み話を聞かさせることは、ぼくにとっては不甲斐ない自分を受け止めることであり、とてつもなく辛いことなんですよね。自分が「とんでもない不完全でダメ間であること」を認めろと言われているような気持ちになるんです。

だけど、妻はこう言うんです。

「大変だったね。辛かったね。ただ、そう言ってくれればいいの」

ぼくは妻への寄り添い方を知らなかったんです。他でもないぼく自身が加害者である場合の寄り添い方を知らなかったんです。

ただでさえ、女性への寄り添い方なんて難しいのに、自分が悪者の場合の寄り添い方なんて余計わかりませんよね?謝るしかないと思い込んでしまいますよね?

だけど、そうじゃなかったんです。謝り続けることなんか妻は求めていなかったんです。

ただ、寄り添って欲しかったんです。こんな不甲斐ないぼくに寄り添って欲しかったんです。

こんなダメなぼくは妻と一緒にいる資格なんてない。この人を癒すことなんてできない。

そんな無力感にとらわれてしまうこともあるけれど、そうじゃなかったんです。

「こんな目にあったら辛いよね。辛かったよね。大変だったよね。助けてあげられなくてごめんね。嫌なことがあったらいつでも言ってね」

まるで他人事のようだと思う人もいるかもしれないけれど、当時の自分たちを俯瞰して眺め、そこで苦しんでいる妻に言葉をかけるんです。

それが妻の恨みを消してくれるわけではないんだけど、心にしこりのように残っている恨みを少しだけ削り取ってくれるんです。

完全に消えることはないし、きっとそんな日はやってこないんだろうけど、今のぼくらがお互いに支え合って生きていけるぐらいには、ぼくらがお互いを信じ合えるぐらいには、薄くすることはできるんです。

今のぼくらがお互いを信じ合いながら暮らせているのは、妻のこの言葉のおかげなんです。

「大変だったね。辛かったね。ただ、そう言ってくれればいいの」

妻の恨みにどう向き合ったらいいのか、ぼくにはこれっぽっちも分からなかったんです。

だけど、この何気ない言葉を繰り返す中で、ぼくの妻への共感は次第に高まっていったんです。

自分を責めることも減り、逆にぼくも妻に話したいことを話せるようになりました。

仕事でのプレッシャー、経済的なプレッシャー、父として夫としてどうあればいいのかという不安。

自分でも認めたくない弱みを妻にさらけ出す機会が増え、妻はその度にこう言ってくれたんです。

「大変だったね。辛かったね」

きっと、ぼくはずっと昔から妻にこう言って欲しかったんだと思うんです。

ぼくの苦労をぼくの辛さを妻に理解して欲しい。だけど、こんな軟弱な考えを知られるのは恥ずかしい。

だけど、ぼくはずっと言って欲しかった。妻に寄り添って欲しかった。ぼくもまた寂しさを抱えていたんです。

お互いの寂しさを持ち寄り、大変だったねと言葉をかけ合い、今を生きていく。

ぼくらにはそれしかできないけど、だけど、その繰り返しが、その日々の連続が、ぼくらの絆を強くしてくれるんだと、今では確信しています。

妻のぼくへの恨みは消えることはない。

だけど、消えなくてもいいんです。

ぼくらはそこに向き合いながら、今を生きていく。ふたりで一緒に。

それでいいんです。

同じ苦しみを抱えている方の参考になれば、心から嬉しいです。

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