妻に求められて、渋々「愛してるよ」と伝えたら意外な変化が起こった話
「あたし、愛してるって言われたことない」
妻はそう言うと、不満そうに口を尖らせた。
「え?」
どう答えればいいのか分からず、ぼくは思わず聞き返してしまった。
「言われたことない。アツくんから、愛してるって。言われたいの」
結婚から10年になるぼくらは、今まで「愛してる」とお互いに言ったことがなかった。
ぼくはその日から、妻に「愛してるよ」と毎日伝えるようになった。
もう、一ヶ月は過ぎたと思う。
その言葉を口に出すのはとてつもなく恥ずかしかったけれど、ぼくには思ってもみなかったような変化があらわれた。
今日はそのことについて書こうと思う。
「愛している」ってどういう意味なんだろう?
ぼくは妻に一度も「愛してる」と言ったことがなかったんです。
「愛している」ってどういう意味なんでしょうね?
「好きだよ」と、恋人や妻にはよく伝えますよね。
でも、「愛しているよ」とはなかなか言えません。
なぜなんでしょう?
なんだか、「愛している」という言葉には、とてつもない重みがあるように感じられて、その言葉を使ってしまったが最後、その人を永遠に守り切らないといけないような、そんなとてつもない責任感が付随するような気もしてたんです。
まぁ、結婚しているので、永遠に大切にするとは思ってはいるんですが、それを通り越して、なんだかちょっと想像もできないような責任の重さを感じてたんだと思います。
「愛している」ってなんだろう?
「愛」ってなんだろう?
って、そんなことをぐるぐると考え出すとキリがなくて、もちろん答えも見つけられなくて、だったら、この言葉は使わない方がいいなって思ってたんだと思います。
「愛してる」って言葉はドラマや映画の世界の言葉であって、現実世界の言葉ではないよなとも思ってました。
とんでもない危機を乗り越えた二人が、夕日をバックに抱き合って言うセリフみたいな。
ぼくたちとはまったく関係のない世界に住んでいるアメリカやヨーロッパの人たちが使うセリフであって、アジアの片隅で暮らしているぼくらにとっては、日常生活で使うセリフじゃないよなって。
「I love you」って言葉を日常で使うのは、彼らにとっては文化の一部なんだろうけど、ぼくら日本人はそんな言葉を使う文化はないんだよって。
だいたい「愛してる」って、恥ずかしくて言えないしって。
それに、そんな気軽に「愛してるよ」なんて言っていたら、言葉が軽すぎて重みがないじゃないですか?
「愛してる」って言葉は、もっと大切に扱うべきだと思ってたんです。
そして、大切にしすぎて、一度も使わなかったわけですが。
「愛してる」と妻に伝えた瞬間
妻にそう言われた瞬間、いろんな感情が心の中を駆け巡ったんですが、ここで下手な言い訳をしたらまずいなとも思ったんです。
「愛してるって、そんな気軽に使っていいの?」
だとか
「愛してるって欧米の文化であって、うちらには関係なくない?」
だとか
「好きだよって伝えてるけど、それじゃダメなの?」
だとか、そんなことを言ったら、妻は1週間は口を聞いてくれないかもしれない。
ここは下手なことは言わないほうがいい。「愛してる」と「言わない」選択をするなら、妻が納得する言葉を選ばないといけないと思っていたんですが
次の瞬間、妻にこう言われ、(あ、これは言うしかないな)と思ったんです。
ぼくがグダグダ考えて、恥ずかしくて言えない言葉を遠慮してる場合じゃないなって。
妻はずっと言って欲しかったんだって。その時、初めて気がついたんですよね。
「愛してる」という言葉の意味だとか、「愛」の意味だとか、「欧米と日本の文化の違い」だとか、そんなことはどうでもよくて
ぼくの目の前で口を尖らせている妻は、ただぼくからの愛情表現を待っているんだって。
ぼくは愛情表現を十分にしていると思っているけど、妻が「愛されている」と実感できることが大切だったんだって、そう気づいたんです。
妻がぼくから「愛されている」と実感できるためには、「愛してる」という言葉が必要なんだということに、その時初めて気がついたんです。
グダグダ悩むのはやめて、ただ言おう。
「愛してるよ」って。
それがどんな意味かも分からないし、この言葉を口から出すのはとっても恥ずかしいし、(よし、言うぞ...!)って意気込まないと言えないけど、ただ言えばいいんだって、思ったんです。
それで、妻がぼくの愛を感じることができて、幸せな気持ちを感じられるなら、ぼくは言わなきゃダメだって思ったんです。
妻に「愛してるよ」と毎日伝えて起こった変化
それから一ヶ月間、ぼくらは毎日「愛してるよ」と伝え合い続けてきました。
妻に「愛してるよ」と伝えるとき、不思議なことに妻に対する愛情がじわりと心の奥の方から膨らんでくるのを感じるんですよね。
妻が幸せな気持ちになれるように言い始めたこの言葉だけど、妻に「愛してるよ」と伝えて幸せな気持ちを感じるのは、妻だけでなくぼくもだったんです。
妻に「愛してるよ」と言えば言うほど、妻への親密さや、大切に思う気持ちがますます大きくなっていくのを感じるんです。
なんなんでしょうね?これは。
こんなことは想像もしていませんでした。
もしかしたら、愛の言葉というのは、言われる方だけでなく、言う方も愛で満たしてくれるものなのかもしれません。
「愛してるよ」とお互いに伝え合うことで、お互いの大切さを再認識して、今まで以上にお互いを大事に扱おうと思えてくる。
不思議な言葉だなって、今では思っています。
こんなことなら、もっと早く言えば良かったなって思うんですが、まぁ、恥ずかしくてなかなか言えないですよね。
でも、不思議なもので一ヶ月も経てば、当たり前のように言えるようになって、今では言わないと気持ち悪いくらいになったんですよね。
夫婦がお互いに愛を伝え合うことの習慣化、ちょっと恥ずかしいけどやってみるといいことがあるかもしれません。
ぼくはやって良かったなぁって、今では思っています。