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期待と失望の海で溺れないために……。
「ダメって言っても予定入れるんでしょ……」
妻はそう言うとぼくに背中を向けた。
その夜はうまく眠ることができなかった。なにがいけなかったのか?どうすればよかったのか?
小さな竜巻が心の中で大きくなり、その小さな嵐は2日間ほどぼくらの間に葛藤をもたらした。
葛藤の原因は期待と行動のギャップだった。そのギャップが失望を生み、その失望がぼくらの間に不協和音をもたらしたのだ。
ぼくらの間に起こったことはなんだったのか?
どうやって乗り越えたのか?
詳しく書きたいと思う。
◇
その日の翌週の金曜日、ぼくは仕事を休む予定でした。
うちの会社では社員の有給(強制)消化のために、年に何日か有給消化日が用意されており、その日が金曜日だったのです。
(やった!今までできなかったことができるぞ……!)
ひさしぶりの休みに浮き足だったぼくは次々と予定を入れました。
気になってたオンラインセミナー、ポッドキャストインタビュー、セミナー資料作成、ニュースレター作成……。
妻と共有してしるカレンダーアプリにポンポン予定を放り込み、(あ、これは夕方になるから一応妻に報告しとくか)と、17時から18時の予定だけ妻に直接伝えることにしたんです。
いつも仕事から家に帰るのは19時半〜20時なので、18時に予定が終わるのはかなり早い方です。
いつもより1時間以上早く家のことができるから、妻もイヤな顔はしないだろうと思っていたんです。
でも、違いました。
完全な見込み違いだったのです。
寝る直前に妻に伝えたところ、「ダメって言っても予定入れるんでしょ……」と不満げにこぼすとぼくに背中を向けて寝たのです。
これは「私は不満に思ってます。だけど、それがなんなのかうまく言えません」という妻の合図です。
いままで何度も経験してるのですぐわかりました。これは解決に時間がかかるやつです。
ぼくが17時からの予定を入れたことに妻が不満を抱いていることは確かです。でも、なにが不満なのか言ってくれないのです…!
(え…?だっていつもより家のことができるのは1時間以上早いし……)
もうそれ以上話しても話は進まないので寝たのですが、翌朝になってさらにぼくらの言い合いはヒートアップしました。
「金曜日は忙しいの!習い事の送り迎えもあるし、あっちゃんが家にいるならやって欲しいの」
なるほど、いつも一人でやっていて大変な送り迎えをやって欲しかったのか。
そう考えたぼくは「わかった。もう17時からの予定はリスケしたから」と言いましたが、妻の様子はまだおかしいのです。
午前中に入れた予定についても「予定入れすぎじゃない?」と言うのです。
午前中に子どもの送り迎えがあるわけじゃないし、妻からあれこれ言われる意図がさっぱりわかりません。
ぼくが不貞腐れたように伝えたことも原因ですが、自分がやっていることを否定されたような気持ちにもなったのです。
「おれがなんにもやらなければいいわけ?黙って仕事だけしてればいいわけ?」
つい、余計な言葉が口から出る。
妻からの言葉につい怒りが反応し、言いたくないこと、言わなくてもいいことが反射的に出てくる。
ぼくらは怒りというネガティヴなループに迷い込んでしまったのです。
グルグル回る公園の遊具にしがみつく子どものように、ぼくらのスピードは早くなり、遠くへと吹き飛ばされそうでした。
結局、そのループの回転が収まったのは昼頃だったと思います。
お腹の底からムクムクと湧きおこる怒りをなだめ、妻の話をよーく聴いてみると、その日は家の予定がいっぱい詰まっていることがわかったんです。
小学校でおこなわれる自転車講習のために、上の子たちの自転車(それも2台!)を学校に持っていき、その日のうちに回収しないといけない。午後は子どもたちの習い事の送り迎えがあり、その隙間を縫って夕飯を作らないといけない。習い事から帰れば宿題のチェックが待っている。
ぼくが休みでなければ妻がひとりでやるつもりだったのですが、ぼくが休みだということで「期待」が生まれたのです。
(いつもよりあわただしい1日だけど、あっちゃんが休みだからだいじょうぶ。なんとかなる。)
そんな期待が。
一方ぼくは、丸一日を個人活動に使えることにウキウキしていたのです。
そして、妻はぼくの活動のジャマをしたくないし、かといって大変な一日を乗り換えるヘルプも欲しいし…。といったジレンマにおちいっていた。
そんな風に期待と行動のギャップが生まれ、そのギャップが妻に失望をもたらし、その失望を乗り越えるために怒りが生まれたのです。
それがぼくらにおこった葛藤の正体でした。
妻の一日の予定と葛藤を知ったぼくは手帳を開き、スケジュールを調整することにしました。
大変な一日を過ごす妻を見て見ぬふりはできないし、ぼくの予定が絶対に動かせない不動のものというわけでもありません。
お互いの予定を確認すると、小学校への自転車の持ち込みはぼくの隙間時間でできることがわかりました。
午後の自転車の回収は夕方の習い事の送りの帰りにできることもわかり、ぼくがやると言いましたが、そこは一緒にいくことになりました。
結局なんとかスケジュールを調整できる話だったのです。
では、なぜこういった問題が起こったのか?
なぜ、わずか数分間、手帳を開いて話し合えば終わる話が12時間以上も引きずったのか?
なぜ、こんなにもすぐに解決する話が二人の親密性を引き裂いたのか?
それは、「言わなくてもわかってくれている」という思い込みと、「大切な人だから自分の気持ちをおさえてしまう」ガマンが原因です。
思い込みはぼくにもありました。自分の活動に時間を割けないことへの悩みは妻も知っているので、(めったにない休みに予定を多めに入れても妻はわかってくれるはず)という思い込みが。
そして、ぼくも自分を否定されたように感じたけれど、妻がぼくにとって大切な人だから「リスケしたから」とガマンをしたのです。
その思い込みとガマンが期待と失望、そして怒りを生んだのです。
ついぼくらは期待と失望に巻き込まれ、言わんでもいいことを言い、望まぬ傷を作ってしまう。
でも「期待」を向けていることを素直に伝え合えれば、関係性は大きく変えられると思うんです。
ぼくは今回の件の反省から、毎週末にすり合わせのための話し合いをすることにしました。お互いに手帳を開いて来週の予定を伝え合い、相手に対する期待があればそこで伝えるんです。
期待があるのは悪いことじゃなくて、むしろ信頼感で結ばれている証拠だと思ってます。期待に応えられないときは、なぜできないのかを素直に話せばいいだけです。
お互いへの思いやりを持ちよれば、期待と行動のギャップは埋められるようになるはず。
話し合いには夫婦会議ノートを使う予定。最近使ってなかったですが、しばらく活躍しそうです。
また、気づきがあればシェアしますね。
◇
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