「名探偵コナン」を映画館で3回観る女の子と「岸田奈美のキナリ★マガジン」から始まるポスト資本主義社会の到来
ポスト資本主義社会って言葉を最近よく聞きますよね。
ぼくも最近コテンラジオで聞いたのですが、どこかでこの考え方を体感したなぁと思ったんですね。
どこかなと思ったら、名探偵のコナンの映画を映画館に3回観に行った知り合いでした。
その前に、ポスト資本主義社会ってなに?ということですが、簡単に言うと今までって、お金が儲かるからって理由で会社に出資したり、自分の欲望(美味しいもの食べたい、面白い体験がしたいとか)を満たすためにお金を使っていましたよね。
それが資本主義社会と呼ばれるやつ(超ざっくりなので違うかもですが)で、でも、それだと利潤追求じゃない目的にはお金が集まらないんですよね。
例えば環境問題とかって、解決してもお金が儲からないので一向に解決に向かって誰も真剣に動かないんですよね。
なので、いろんな人が資本主義からポスト資本主義へと変わんなきゃダメだと言っていてベーシックインカムを導入したらいいんじゃないとか言われてますね。
でも、株式会社コテンの深井さんの考えでは、社会が変わるときっていうのは、制度やシステムが変わっても変わらない。まず、社会の実態が変わってから制度が変わり、そのあとに人々の倫理観が変わっていくんだそうです。
なので、株式会社コテンでは、法人から投資をしてもらうときに、金銭的なリターンを得られるか分からないけど、それでもいいなら投資をしてください。この投資を金融商品として見ないでくださいと説明するそうです。
そして、個人が一口1,000円で出資できるCOTEN CREWっていう制度があって、コテンラジオのボーナスエピソードが聴ける特典があるのですが
世界史のデータベースを作るコテンの理念(メタ認知を高めるきっかけを提供する)に共感できる方にきて欲しい。特典が目的の人はやめた方がいいかもしれないと、こないだのラジオではお話されていました。
前置きが長くなっちゃったんですが、この話を聞いたときに思い出したのが、映画館で「名探偵コナン」を3回観た女の子でした。
「版権元への貢献です!」と彼女は言った
ぼくの知り合いの20代の女性で、名探偵コナンがめっちゃ好きな人がいるんですね。
グッズもいっぱい持っていて、映画が始まれば必ず観にいくそうなんです。
コナンの映画って、ここ20年ほぼ毎年映画が作られているんですよね。
「今年も映画観に行ったの?」と、ぼくが彼女に聞くと
「えぇ、3回観にいきました」
と言うんです。
「え?3回?別々の友達と3回行ったの?」
「いいえ、一人で3回ですよ」
そんなに面白かったのかと思い、なぜ3回も観に行ったのとたずねたら、思いも寄らない言葉が返ってきたんです。
「版権元への貢献です!」
そう言った時の彼女の表情は凛としていて、気のせいか背筋もピンっと伸びていて、ものすっごい堂々としてたんですね。
(わたしはこの活動に誇りを感じているんです!)
そんな彼女の心の声が聞こえるくらい、ものすごく自信に溢れていて、そんな彼女はキラキラと輝いてたんです。
作品を楽しむために映画館に行くんじゃなくて、コナン作品をこれからも作ってもらいたいから映画館に行っているんですね。
これって、「作品を楽しむ」という利潤追求じゃなくて、「私の好きなコナンが続いて欲しい」という気持ちが源泉となったお金の使い方なんです。
「コナンの映画を楽しむ」というリターンは1回目の鑑賞で得られているわけで、2回も3回も行くのは作品制作をこれからも続けて欲しいという気持ちでお金を出しているんですよね。
もしかしてポスト資本主義社会への移行って、もうこんなところから始まっているんじゃないかなって思ったんです。
あと、もう一つこれと似たような話があります。というか、これはぼくの実体験です。
それは岸田奈美さんのnoteマガジンです。
読者からのお金は「生きるための収入源」と断言する作家の登場
ぼくも岸田さんが書かれる文章が好きでマガジンを購読しています。
彼女のマガジンの説明欄にはこう書いてあるんですね。
岸田奈美の人生を応援してくれる親戚のような人たちが、読むことのできるマガジンです。わたしはnoteが収入源なので、このお金でゴリゴリに生きています。「事実は小説より奇なり」な話や、役に立たない話をします。最低月4本の完全有料記事全文+無料記事のおまけ部分が読めます。
「岸田奈美の人生を応援してくれる親戚のような人たち」
「noteが収入源」
「このお金でゴリゴリに生きています」
ここだけ読むと、作家なのに読者のお金でゴリゴリに生きているって言っちゃうってどうなのと思う人もいるかもだけど
実際にお金を使っているぼくとしては、マガジンの購読料が岸田さんの生活費にゴリゴリに使われていることになんの違和感もなく、「むしろもっと使ってくれ!」という気持ちの方が強かったりするんです。
記事を読み進めば読むほど、そんな気持ちがどんどん強くなります。
たまたま通りかかった商店街で、寂れた「高齢者外出介助の会」のサポートをしてしまったり
岸田さんがお母さんのために車を買ってあげたり
「車購入の記事」の読者のサポート収入で、めちゃくちゃ熱意のある翻訳者の方に記事を英訳してもらって世界中に届けたり
上の記事を読んでもらうと分かりますが、記事の翻訳はお金を稼ぐためではなくて、「自分の日常が誰かの希望になる」からなんですね。
岸田さんのマガジン購読のためのお金は、ぼくらでは手が届かないはるか遠くの距離にいる誰かを幸せにしている。
それは日本のどこかかもしれないし、世界のどこかかも知れない。
でも、その誰かとぼくらは「岸田奈美さん」を通じて確実につながっている。
ぼくらは岸田奈美さんを通じて、この世界の誰かが幸せになる行動に参加している。
岸田さんのマガジン購読にお金を払う理由は、そのめちゃくちゃ面白い文章を読みたいからでもあるけど、それよりも岸田さんがそのお金を使って、この世界をちょっとずつ、だけど確実に変えていくその姿を見たいからなんです。
ぼくらにはできないことを、岸田さんだからできることができるように、そのためのサポートを少しでもしたい。(身体に無理をして欲しくないけど)
きっと、「岸田奈美のキナリ★マガジン」を購読している人には、同じような気持ちを持っている人がいると思うんです。
これって、「消費」でもなく、「援助」でもなく、「寄付」でもなく、ましてや「ビジネス」なんかじゃないんですよね。
ただただ、親戚のおっちゃんのような気持ちでの「応援」です。
でも、この「応援」が岸田奈美さんの行動によって、新しい社会を作ることに少しずつつながっていき、いままでとは違う生き方をする人が増えていくんじゃないのかなって思うんです。
もしかしたら、こういった「自らの利潤追求のため」ではないお金の使い方が個人から企業へと広がっていったときに、ポスト資本主義が社会に浸透していくんじゃないかなと思います。
コテンラジオの深井さんが話されていたように、「ポスト資本主義社会」はぼくら自身が気がつかない無意識の行動の中で、すでに始まっているのかもしれないですね。