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ふたりを苦しめる”恋愛結婚”の幻想
初めて恋に落ちたとき、体重が10kgも落ちたんです。
14才のときでしたが、彼女のことを考えるだけで体が宙に浮かぶように浮かれて、ご飯がのどを通らなかったんですね。
反抗期まっさかりでしたが、恋に落ちている期間は気分がよくて、家族にも親切な気持ちを抱いていたことをよく覚えています。
妻と出会ったばかりの頃のぼくも浮かれていて、毎日が楽しくてしかたありませんでした。
でも、結婚から何年も経つと、多くの夫婦は関係性が大きく変わりますよね。
相手に対する恋愛感情はうすれていき、恋人ではなく"家族"という枠組みの存在になっていきます。
妻から「触れられたくない」と言われたり、「家族としてしか見られない」と言われることさえあります。
(結婚ってこういうものだったの…?)
(お互い好きになって結婚したはずなのに、なんでこんなことになるの…?)
と絶望するときもあるかもしれません。
ばくにもそういうときがありました。
好きで結婚したはずなのに、なぜお互いへの気持ちが変わってしまうのか?
これには、日本人の約9割にあたる”恋愛結婚”に原因があるんじゃないかなと思っています。
ふたりが幸せになるはずだった”恋愛結婚”が、逆にふたりを苦しめているんじゃないかと思うのです。
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恋愛結婚が離婚率を上げた
"恋愛結婚が夫婦を苦しめる"とはどういうことか?
いくつかのデータを見ながら説明しますね。
ちょっと古いデータですが、2015年の調査によると、日本人の87%が恋愛結婚で結婚しています。
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1965年頃にお見合い結婚と恋愛結婚の比率が逆転していますね。
では、時代によって結婚の満足度はどのように変わっているんでしょうか?
こちらは、厚生労働省がまとめた離婚率の推移データです。下のグラフの赤い線が離婚率の推移です。
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男女ともに1965年頃までは離婚率が減少していたのに、1965年頃から徐々に上がっていますよね。
ちょうど、恋愛結婚の比率がお見合い結婚を抜いたタイミングと重なります。
恋愛結婚が増えたタイミングから、離婚も同時に増え始めたということです。
これは、恋愛結婚をした人は、お見合い結婚をした人よりも幸せになれない可能性を示しているんじゃないのかなと思うんです。
そして、それを裏付けるデータがインドにありました。
恋愛結婚の満足度は下がり続ける
インドのラージャスターン大学によって行われた調査は、”恋愛結婚をした人は、数年経つと愛情が薄れていくこと”を明らかにしました。
彼らは、結婚期間が1年から20年の50組の夫婦(恋愛結婚と取り決め婚が半分ずつ)にアンケートをとりました。
取り決め婚とは、花嫁と花婿が結婚式まで相手を知らず、親が子どもに相談せずに結婚相手を決める結婚のことだそうです。
お見合い結婚よりハードな結婚ですよね。ちなみにぼくの祖父母もお互いに相手が誰かわからないまま結婚させられたそうです。
70〜80年前の日本でも、お見合い結婚という名の取り決め婚は多かったんだと思います。
アンケートの結果、結婚後1年の場合は、恋愛結婚の方が満足度が高いことがわかりました。これは予想がつきますよね。
でも、結婚期間が長くなるにつれ、取り決め婚の満足度は上がっていくことがわかったのです。
そして、結婚後10年経つと、取り決め婚の方の満足度が恋愛結婚よりも圧倒的に高い結果になったのです。
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インドの取り決め婚というと、決められたカースト間でしか結婚できないとか、親が決めた相手との結婚は絶対だという厳しいルールで有名ですが、結婚10年後の恋愛感情が恋愛結婚よりも高いというのは驚きですよね。
誰かが勝手に相手を決める取り決め婚やお見合い結婚は、恋愛結婚よりもイメージがよくないけれど、実は恋愛結婚より"結婚生活の満足度”が高い。
これって皮肉ですよね。好きで結婚し合ったもの同士の方が、うまく行かなくなるというのは。
でも、以前の記事で書いたように”恋愛は繁殖のためのプログラムでしかない”のならば、それも納得できる気もするんです。
それから、恋愛結婚をした人にとっては結婚がふたりのゴールだと思いがちだけど、お見合い結婚をした人にとっては結婚はスタートでしかないんだと思うんです。
結婚生活を続ける”覚悟”
お見合い結婚は相手のことを何も知らないまま一緒に暮らしだすので、まだまだ恋愛が始まってすらいないですよね。
そんなふたりが結婚生活を送るためには、お互いに努力をしないと続けられないと思うんです。
ぼくの祖母はフルタイムで小学校の教員をしていましたが、結婚後も出産後も休むことなく働き続けました。
祖父は高校の教員をしており、祖母の仕事の手伝いを自宅でよくしていたそうです。
母は「お母さん(ぼくの祖母)が出世できたのは、お父さん(ぼくの祖父)のおかげなのよ」とよく言っており、出世に関わる発表資料の作成など、祖父が代わりにまとめていたことが多かったそうです。
祖父は亡くなるとき、祖母にだけ遺書を残していました。
そこには、こんなことが書いてありました。
「あなたと結婚できて幸せだった。生まれ変わってもあなたと結婚したい」
昭和一桁生まれのおじいちゃんがこんなことを言うなんて…!
その手紙を手にして、母と妹と驚いたことをよく覚えています。
祖父母はお互いに顔も知らないまま結婚しましたが、実は結婚式前夜に祖母は祖父の顔をどうしても見たくなって、祖父の家にこっそり行ったそうなんです。
窓からこっそり明日結婚する男性の顔を覗き込んだ祖母は、胸のドキドキが止まらなかったそうです。
祖父の話になると、祖母はいつもこの話を嬉しそうにするんです。
彼らはたまにケンカをすることもありましたが、相手に自分の価値観を押し付ける様子はあまり見られませんでした。
(思うことはお互いあるけど、生きていかないといけないからね)
祖母はそんなことをよく言っていました。
世間的に離婚が難しい時代だったからというのもあるかもしれませんが、「結婚は続けるもの」という覚悟があったのかなと思うんです。
ぼくの義母にこんなことを聞いたことがあるんです。
「長い結婚生活で、もう出て行きたいと思ったことはありませんか?」
義母は笑ってこう言いました。
「お見合い結婚だからね、そんなことないわよ」
お見合い結婚をするということは、"結婚を続けていく覚悟を持つ"ということなのかもしれません。
そして、恋愛結婚に足りないのは、その覚悟なのかもしれないなと、ぼくは思うんです。
イやなことがあってもガマンすればいいという話ではなくて、”結婚を続けていくためにお互い支え合うにはどうすればいいのか?”をお互いに考え続けることが大切なのかなって思うんです。
恋に落ち、結婚式を挙げたならば、その愛は永遠に続いていく。
「愛は永遠に続くのがあたりまえ」
と、ぼくは思っていたんです。
そして、それは”自然に”続いていくものだと思っていました。
「幸いなるときも不幸なときも、富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも、死が2人を分かつまで、愛し合うことを誓いますか」
と、問われ、イエスと答えたならば、ぼくらは永遠に愛し合い続けるものだと。
でも、現実は違いました。
”幸せな結婚生活”に必要なのは、”恋愛”ではなく、”覚悟”と”努力”だったのかもしれないなと、結婚10年をむかえて、いまのぼくは思うんです。