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【管理会計の論点 その4】BS管理の重要性とその落とし穴

こんにちは!
 
当コラムでは毎回、管理会計プロジェクトで論点になりそうなトピックを解説します。
 
論点というぐらいなので、選択肢は1つではありません。
どうやって答えを決めるのか?いつもお客様と一緒に悩みながら、その時にベストな解答を探しますが、ベターなやり方を選択することも多いのが実情です。
 
さて、第4回目は、「BS管理」について一緒に考えていきましょう。

ROIC(Return on Invested Capital)やROE(Return on Equity)、CCC(Cash Conversion Cycle)など、BS(バランスシート)に着目した経営管理を行っている企業は少なくありません。これらの指標は企業の財務健全性や収益性を測るうえで非常に重要です。

しかし、誤った行動により、期待した効果が得られないどころか、逆に企業に悪影響を及ぼす可能性があります。今回は、BS管理の重要性と、避けるべき4つの間違った行動について解説します。


■そもそも、なぜBS管理が重要なのか?

BS管理の肝は「小さい元手で大きく稼ぐ」ことにあります。PL(損益計算書)だけで経営を見ていると、どうしても「売上や利益の最大化」だけに目が向きがちです。しかし、企業が本当に持続可能な成長を遂げるためには、限られた資産をどれだけ効率的に活用できるかが鍵となります。これが、BS管理の重要性となります。

■BS管理の間違った行動4選

1.四半期末だけ資産を圧縮する

四半期末の指標を良く見せるために、一時的に資産を圧縮する会社があります。たしかに、ROICや回転期間などの指標は一時的に改善しますが、これは根本的な改善ではなく、持続的な効果も期待できません。
「小さい元手で大きく稼ぐ」というBS管理の本質から考えると、一瞬だけ資産を圧縮することは意味が薄いのです​。

2.必要な資産まで削減してしまう

資産削減に過度に注力すると、欠品リスクや外部環境の悪化リスクに対応できなくなります。例えば、在庫を削減しすぎて欠品が発生すると、顧客の信頼を失い、大きな機会損失が生じます。また、景気が急激に悪化した際に余裕資金が少ないと、資金ショートに陥り、最悪の場合、倒産の危機に直面することもあります。無駄な在庫は減らすべきですが、必要な資産はしっかりと保有することが重要です​。

3.リースやSPC等を活用して簿外資産を増やす

簿外資産を増やすことで、表面上の資産を減らして指標を改善したように見せることができます。しかし、これまでの会計基準や税制の改定の歴史から見ると、こうした手法は長続きしません。また、複雑なリスクや手間、高額な利息や手数料がかかることも多く、結果的に企業の負担を増やすことになります​。

4.取引先に不利な条件を押し付ける

支払条件を不当に延ばすなど、取引先に不利な条件を押し付けると短期的にはキャッシュフローが改善するかもしれません。しかし、長期的には信頼関係を損ない、ビジネスチャンスを失うことにつながる可能性があります​。また、下請法に抵触する場合があり、法的リスクを伴います。

■まとめ

BS管理はとにかく難しいんです。
なぜなら、管理の対象が中長期の戦略や施策になるからです。短期的な指標改善にとらわれず、持続可能な成長を目指すための目標設定と堅実な管理が必要です。

#管理会計 #BS管理 #ROIC #CCC #バランスシート管理




関連書籍:


企画:
アットストリームコンサルティング株式会社
プリンシパル/公認会計士 内山 正悟

EY新日本有限責任監査法人を経て、現在に至る


執筆:
アットストリームコンサルティング株式会社
取締役・シニアマネージングディレクター 松永 博樹

アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング(現 プライスウォーターハウスクーパース)を経て、現在に至る。


編集:
アットストリームコンサルティング株式会社
執行役員・マネージングディレクター 伊藤 学

プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現 日本IBM)、
ベリングポイント株式会社(現 PwCコンサルティング)を経て、現在に至る。