【管理会計の論点 その2】固変分解
こんにちは!
当コラムでは毎回、管理会計プロジェクトで論点になりそうなトピックを解説します。
論点というぐらいなので、いつも選択肢は1つではありません。
どうやって答えを決めるのか?いつもお客様と一緒に悩みながら、その時にベストな解答を探しますが、ベターなやり方を選択することも多いのが実情です。
さて、第2回目のテーマは、「固変分解」です。
■何が難しいのか
固変分解の最大の課題は、費用をどうやって正確に固定費と変動費に分類するかってことです。多くの費用は、純粋に固定費や変動費に分類できず、「準固定費」や「準変動費」なんて分類されることがあります。
■基本的な分類基準
固変分解を行う際の基本的な分類基準は、以下の通りです。
① 売上増加に比例するか?
これは「固変」の定義そのものっていってもいいですね。
売上の増加に比例して増加する費用は変動費です。一方で、売上が増加しても変わらない費用は固定費です。
売上との関係に加えて、もう1つ重要なのが期間の概念ですね。
② 管理会計期間の視点
短期視点:
短期的には、多くの費用が固定費と見なされます。例えば、人件費は、短期間での変動が少ないため、固定費とされることが多いです。
長期視点:
長期的には、多くの費用が変動費として分類されます。人件費も長期的には業績や事業規模に応じて変動するため、変動費と見なされます。
固変分解のその先には、事業や組織の構造改革の判断が待ち受けています。短期的には変えられないことでも時間をかければ変えられるものもあるということです。
■実務的な観点での判断基準
そうはいっても、実務では、ある程度の割り切りが必要ですね。
以下に、具体的な判断基準を示します。
① 基本は科目で決める
やっぱりこれが基本ですね。
でも実際には科目にはいろんなものが混ざって計上されています。
例えば、営業人員の人件費を正社員なら固定費に、非正規雇用なら変動費に分類したいと思っていても、どちらの費用も勘定科目「給料手当」に計上していて、かつ「給料手当」を固定費にしている場合、人件費は全て固定費になってしまいます。
その費用が変動する可能性がある場合(もしくは変動「させたい」場合)は、勘定科目や補助科目で分けられるようにしておくことが必要です。固定的な業務で雇ったアルバイトは「給与手当」として固定費、一時的な作業に雇ったアルバイトは「雑給」として変動費に計上するといった具合です。
② 原価の分類は?
ちょっと乱暴ですが、材料費は変動費とし、それ以外の費用(製造労務費、製造経費、販管費)は全て固定費に分類する方法もあります。
もちろん事業形態や、活用目的にもよりますが、細かく管理して本当に有効な情報になっているのかは、改めて検証した方がよいです。案外この方法でも十分に有効な場合が多いんです。
■結論として
やっぱり今回も目的次第というのが答えなんですが、手間と効果のバランスを考えることも必要ですね。
固変分解のその先にある意思決定の目的にあわせてルールを考える。管理会計コンサルティングの醍醐味です。
ところで、「準固定費」と「準変動費」って何が違うんでしょうか???興味のある方は調べてみてください。。
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関連書籍:
企画:
アットストリームコンサルティング株式会社
プリンシパル/公認会計士 内山 正悟
EY新日本有限責任監査法人を経て、現在に至る
執筆:
アットストリームコンサルティング株式会社
取締役・シニアマネージングディレクター 松永 博樹
アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング(現 プライスウォーターハウスクーパース)を経て、現在に至る。
編集:
アットストリームコンサルティング株式会社
執行役員・マネージングディレクター 伊藤 学
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現 日本IBM)、
ベリングポイント株式会社(現 PwCコンサルティング)を経て、現在に至る。