【管理会計の論点 その5】管理会計における分析軸(管理軸)
こんにちは!
当コラムでは毎回、管理会計プロジェクトで論点になりそうなトピックを解説します。
論点というぐらいなので、いつも選択肢は1つではありません。
どうやって答えを決めるのか?いつもお客様と一緒に悩みながら、その時にベストな解答を探しますが、ベターなやり方を選択することも多いのが実情です。
さて、第5回目のテーマは、「分析軸(管理軸)」です。
管理会計では、企業の経営状況を多角的に分析するための基準や切り口を設定します。これを分析軸や管理軸などといいますが、今回は分析軸という呼び方で進めていきます。
■分析軸の定義と例
分析軸とは、管理会計において、データをさまざまな角度から比較・分析するための基準や切り口のことを指します。経営者や管理者は、特定の分析軸を選定することで、企業の現状をより的確に把握し、適切な意思決定を行うことができます。
例としては、以下のような分析軸が挙げられます:
組織軸:連結決算では会社別、単体では部署別や工場別など、組織単位での分析を行います。
製品軸:製品ごとの収益性やコストを分析し、製品戦略の最適化などを検討します。
市場軸・顧客軸:地域や顧客ごとの売上や利益を分析し、市場戦略や顧客対応を改善します。
販売区分軸:販売形態(例:製品販売とアフターサービス、単発販売とサブスク販売など)ごとに分析します。
ブランド軸・IP軸:ブランドや知的財産ごとの収益性を把握し、ブランド価値の最大化を図ります。
■活用方法
分析軸の活用方法としては、以下のような手法が考えられます:
階層的な分析:組織軸を例にすると、会社-部門-部署-チームといった階層を設定することで、各階層での業績を分析することができます。ただし、階層が深くなりすぎると管理が煩雑になるため、適度な深さにとどめることが重要です。
多軸分析:例えば、製品軸とブランド軸を組み合わせ、特定のブランドの製品ごとに収益性を分析することができます。これにより、どの製品・ブランドの組み合わせが最も成功しているのかを詳細に把握することができます。
■分析軸設定の留意点
分析軸を設定する際の留意点として、以下のポイントに注意することが重要です:
元データの整備:分析軸ごとに必要なデータが取得できるのかを確認します。すべてのデータに対してすべての分析軸が適用できるわけではないため、分析するのに必要十分なデータを準備することが求められます。例えば、売上高に加えて販管費まで顧客別に細かく分けようとすると、うまくいかないケースもあるので注意してください。
過度な複雑化の回避:階層的な分析や多軸分析を行う際に、軸の数や階層を増やしすぎると、かえって分析が煩雑になり、管理が難しくなる恐れがあります。軸の数は必要最小限にし、重要なポイントに絞って分析することが推奨されます。
分析軸の定期的な見直し:市場環境や企業の戦略が変化する中で、分析軸の妥当性も定期的に見直すことが必要です。外部環境、内部環境の変化に合わせて、新たな軸を導入するか、既存の軸を修正することが求められます。
このように、企業戦略に則った分析軸の設定は管理会計において企業のパフォーマンスを的確に把握し、改善策を講じるための重要な手段です。適切に選定・活用することで、企業全体の経営効率を向上させることが可能です。
企画:
アットストリームコンサルティング株式会社
プリンシパル/公認会計士 内山 正悟
EY新日本有限責任監査法人を経て、現在に至る
執筆:
アットストリームコンサルティング株式会社
取締役・シニアマネージングディレクター 松永 博樹
アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング(現 プライスウォーターハウスクーパース)を経て、現在に至る。
編集:
アットストリームコンサルティング株式会社
執行役員・マネージングディレクター 伊藤 学
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現 日本IBM)、
ベリングポイント株式会社(現 PwCコンサルティング)を経て、現在に至る。