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クレンジングが肝!ぐちゃぐちゃ顧客データの名寄せのコツ<TIS共著コラム2-3>
前回までの目次
<第一回>
1.データ登録の現状
2.データクレンジング・名寄せの進め方
2-①.クレンジングと名寄せの位置付け
<第二回>
2-②.推進ステップ
2-③.ソリューション構成要素
前回の第二回は、データクレンジング・名寄せの進め方について整理しました。今回は、データクレンジング・名寄せの効果を測定するための指標の考え方について整理し、事例も確認してみたいと思います。
2-④.効果を測定する指標
クレンジング・名寄せを実施する過程において、あるいは実施した結果、データの品質はどの程度改善したかをどのように評価すればよいでしょうか。データを利活用する各部門での業務観点で効率性や精度評価(クレンジング・名寄せの当初目的)もあるべきですが、その前提としてデータ自体がどのように改善したと説明する必要性も出てくるでしょう。
まず、比較対象があるかどうかで分かれます。
既存のクレンジング・名寄せツールや取組みがある場合においては、新規のクレンジング・名寄せツール・条件において、実データでのトライアルを実施し、既存の結果と比較することで、効果を測定することになります。
一方、新規で取組む比較対象がない場合においては、実データでのトライアルを実施した結果を直接確認することになります。
ただ、これはデータの明細を個別に見て評価する必要があり、サンプリング範囲内での改善有無は確認できますが、データ全体の変化を定量的に把握できません。この点については個別に検討することが多いのですが、例えば以下のような手法が考えられます。
クレンジングの評価
データ値の種数:
日付の並び順の統一、郵便番号のハイフンありなし、などを統一するとデータ値の種類が減少するため、種類数の減少度合いを算出することで評価外部データベースとの突合:
郵便番号や住所の一部などを、別途保持している全国住所マスタと突き合わせ、どの程度紐づくかで正しい住所が登録されているかを評価
名寄せの評価
法人/個人を特定する複数項目の組合せパターン数:
名寄せが奏功している場合は、パターン数が減少するため、その減少度合いを算出することで評価。この場合、対象とする項目が多いほど信頼性が高いという判断
結果として、データの明細を人手でチェックすることは必要となります。どこまで人の工数を割くかどうかは目的や目標次第です。繰り返しになりますが、目指す目的・目標から落とし込んだプロセスKPIを検討し、関連する作業効率やそれを左右する精度も考慮した形で個別に設定し、チーム内外で合意を取るべきでしょう。
目的・目標については、適切なカスタマージャーニーの実装・推進、営業における顧客情報の適切な把握と活動への反映、などが想定されますが、これについては次稿で触れたいと思います。
2-⑤.事例
実際に名寄せとクレンジングを実施した企業の事例として、生命保険業界の事例を見てみましょう。
【生命保険業界の事例】
問題点:データの保全が「契約単位」で行われており、手続きの漏れにつながりやすい
(例えば、転居により加入している3契約のうち2契約のみ保全した場合、通知物の一部が以前の住所に送られてしまう等)
上記の問題点の解消を目的として、証券番号単位で管理されている「契約データ」を、契約者・被保険者等の役割単位の「顧客データ」に分解して名寄せを行った事例です。
先ずは名寄せ前にデータクレンジングを行います。
「名称」「生年月日」「住所」は不統一のデータに対して、それぞれどのように統一するかを決めます。住所については、表記自体が過去と最新では異なる場合があり、名寄せシステム(各ベンダー)で保持している住所データにあわせることが一般的です。クレンジング後は、自動で名寄せを行うのか、人手で行うのかが論点となります。
本事例の場合では、「固い条件」を自動名寄せの対象とし、「緩い条件」を手動名寄せの対象としました。
契約者名寄せ :
固い条件として、「名称」「生年月日」「性別」「住所」の完全一致を名寄せの条件とした被保険者名寄せ :
緩い条件として、「名称」「生年月日」「性別」の完全一致を名寄せの条件とした
この場合、被保険者は住所情報を持っていなかったため、緩い条件での名寄せとしています。(同姓同名で生年月日も同様の場合、別人の可能性がある)
緩い条件でのリストアップ後に契約者への事実確認と許可を得た後に手動名寄せを行いました。
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上記名寄せによって、例えば以下のようなメリットにつながります。
顧客は契約情報を簡易的に参照できるようになった(契約単位→顧客単位)
顧客単位で保全出来るようになったため、修正対応の精度向上、手戻りの削減に繋がった
上記の例は「同一システム内」、「顧客データ」での名寄せの事例ですが、昨今では「顧客データ」だけではなく基幹システムの「マスタデータ」や、「システム間のデータ統合」を目的に名寄せする事例が増えてきています。どれも名寄せの考え方の大枠は同様です。
3.最後に
事例のケースや金融機関など法的に対応する必要がある場合に限らず、「システム間のデータ統合」の取組みは増えてきています。顧客データ統合後に、"どのようにデータを活用するか”が次の論点となることは想像に難くないと思います。「データ活用」に着目されがちですが、データ精度を維持・向上させ、活用しやすいようにデータを管理していく「データオーナー」の役割が今後重要度を増していくこととなると考えられます。
次回は、データ利活用の方向性や、日本企業におけるデータオーナーの位置付けを整理したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。皆さんの気づきにつながる内容があれば何よりです。
投稿者:
TIS株式会社
ビジネスイノベーション事業部
ファンクション&プロセスコンサルティング部
シニアマネージャー 柿沼 信孝
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システム開発会社、コンサルティングファーム、マーケティング支援会社を経て、2023年よりTISに。コンサルティングとシステム開発の経験から主にシステム企画構想に従事。TISでは、デジタルマーケティング、人的資本経営や営業改革のテーマも担当。
アットストリームコンサルティング株式会社
シニアマネジャー
鷲野 真人
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株式会社ワコールを経て、アットストリームコンサルティング株式会社へ参画。サプライチェーンマネジメントに関する業務改革やKPIマネジメント導入・定着支援に関するコンサルティングサービスを提供。
アットストリームコンサルティング株式会社
マネジャー
兵頭 卓
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複数のコンサルティングファーム、DX/AIコンサルティングのベンチャーファームでのコンサルティングサービス事業部長、独立系ファームでの関西拠点責任者などを経て、アットストリームへ参画。顧客接点強化やAI活用などを中心としたコンサルティングサービスを提供。