【管理会計の論点 その1】 財管一致・制管一致
こんにちは!
当コラムでは毎回、管理会計プロジェクトで論点になりそうなトピックを解説します。
論点というぐらいなので、いつも選択肢は1つではありません。
どうやって答えを決めるのか? いつもお客様と一緒に悩みながら、その時にベストな解答を探しますが、ベターなやり方を選択することも多いのが実情です。
第1回目は、管理会計プロジェクトの中でよくある論点の「財管一致」について考えてみましょう。
■論点:財管一致すべきか?
上場企業では年に4回決算を行い、投資家(株主)をはじめとするステークホルダーに決算内容を報告(開示)します。これらの報告に用いられる会計を財務会計といいます。財務会計で計算する売上や利益と、管理会計での売上や利益等を一致させるべきかという論点です。
■財管一致がよい理由その1
「そもそもの目的は財務会計での開示なのだから」
経営者にとってゴールって何でしょうか?
そう。良い業績をあげることです。
この業績を表現するための成績表は財務会計のルールを適用して作られ、関係者に開示されます。
一方、管理会計は、経営者がマネジメントを行うための情報ですが、最終的な良し悪しが財務会計のルールで算定されるなら、管理会計の数値も財務会計とは乖離が無いほうがよさそうです。
■財管一致がよい理由その2
「マネジメントアプローチ」の要請
マネジメントアプローチとは、社内での管理に合わせて外部報告も行うべきとして、財務会計基準が要請する考え方です。そもそも財務会計の基準自体が管理会計と同じものを報告しなさい、となってきているわけですから、財管一致すべきだといっていると同じですね。
■ただ、財管不一致の方がよいことも
財務会計というのは、よくも悪くも過去を引きずっています。償却済の設備を使っている事業や過去に減損を実施した事業などは、それだけ費用負担が少なくなるので、「この事業はもうかっている」といって評価されがちです。そんな説明を聞く度に、ホントかな?と思ってしまいます。
事業ポートフォリオ管理などのように、様々な事業を横並びで比較して、中長期の戦略を検討するような場合には、あえてそれぞれの事業の現在と将来の実力値を反映できる、財務会計とは異なったルールで計算した方がよさそうです。例えば、M&Aの際などに会社や事業を評価するときには財務会計の数値をそのまま用いることはなく、実態を反映した財務数値で評価します。
■結論として
身も蓋もない話ではありますが、結局のところ目的次第というのが答えですね。
ともあれ、どうやったら財務会計ルールに合わせられるかと考えるよりは、意思決定の目的にあわせて新たな会計処理ルールを考えるのが管理会計コンサルティングの一番の醍醐味ではありますが。。
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関連書籍:
企画:
アットストリームコンサルティング株式会社
プリンシパル/公認会計士 内山 正悟
EY新日本有限責任監査法人を経て、現在に至る
執筆:
アットストリームコンサルティング株式会社
取締役・シニアマネージングディレクター 松永 博樹
アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング(現 プライスウォーターハウスクーパース)を経て、現在に至る。
編集:
アットストリームコンサルティング株式会社
執行役員・マネージングディレクター 伊藤 学
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現 日本IBM)、
ベリングポイント株式会社(現 PwCコンサルティング)を経て、現在に至る。