デコパウチコレクションが「必ずしも実装を前提としない」ワケ
10月9日にサイトがオープンするデコパウチコレクション。応募の〆切はいよいよ今月末(無料パウチの取り寄せは26日15時まで)に迫ってきました。共同管理人のれなです。
さて。
きょう筆をとったのは、じゃじゃん!
デコパウチコレクションに応募するデコパウチは実装&実用できることを前提にするべきか、しないべきか
をめぐって去年に引き続き少々ざわざわしているのを感じているから~。
もしちょっとでもひっかかりを感じている方がいたら、ちょっと長いですが、ぜひ私たち事務局の思いを知っていただけたらうれしいです。
1)DPCが「実用できないデコパウチの応募もOK!」としている理由は?
まず、デコパウチコレクションの応募作品については、必ずしも実用できる、実際に使えるということを応募の前提としていないのですね。
それはなぜか。
DPCというイベントは、
①オストメイトもそうでない人も、
だれでも自由に参加してもらい、
デコパウチの制作や鑑賞を通じて
②オストメイトについての理解や関心を深めてもらうきっかけにしたい
と考えているからです。
この目的を掲げているのに、もし「実用&実装できること」を前提としてしまうと、オストメイトとこれまで関わりのなかった人は、パウチという未知のモノをどんな風にデコってよいのかわからずに、参加のハードルがあがってしまうのではないかという心配がありました。
だって知って欲しいから参加してもらおうというのに、知らないから参加できないって無理ゲー過ぎる。
けれども、実は当初、応募のルールで「実用を前提としない」と宣言してしまうことについては、反対意見がありました。
というのも、
①大事なパウチで「遊んでいる」「無駄にしている」みたいな感じがして共感できない人がいるのでは?
②本来のパウチやオストメイトの正しい理解につながらないのでは?
というのです。
ふむふむ、どちらもわかる。
いや、すごくわかる。
パウチはオストメイトの方が生きるのに欠かせないもの。いくら理解や関心を広げるためとは言え、決して軽く扱ったり、無駄にしたりすることはしたくありません。
そんな私たちに力を貸してくれたのが、医療装具メーカーの皆さんでした。
会社の壁を超えてイベントの趣旨に賛同、製造工程ではねられたり、使用期限が間近、すぎているなどの理由で廃棄せざるをえない(=もともとその多くが実用に適さない)パウチを”もったいないパウチ”として無償で参加者に提供する仕組みを整えてくれたのです。
これにより、パウチを無駄にすることなく、かつ、当事者に限らずだれでも自由にデコってみることができるイベントにすることができました。
さらに、結社のメンバーも、希望してくれる学校、会社などがあれば、オンラインなどで講師としてワークショップや授業に参加。
オストメイトのこと、デコパウチに取り組む思いなどについて自分たちの口で伝える活動にも同時に力をいれてきました。
今年は北海道の大学や装具の販売代理店などでワークショップを実施しています。
2)オストメイトでない人の参加を大事したいと思ったのは。
そもそも私たちがオストメイトでない人にもパウチをデコってもらえるしくみを大事にしたいと強く感じた体験がありました。それは去秋、京都のある小学校でデコパウチの授業をさせて頂いたときのこと(詳細はこちら)。
用意したのが、本物のパウチを中に忍ばせた紙袋。子どもたちが合図とともにこの袋を一斉にオープン!中から自分たちの手のひらより大きいパウチが飛びだすと、おぉ。ちょっとしたどよめきが起きます。もちろんほとんどの子どもたちにとって本物のパウチをみるのも触れるのも人生ではじめての経験です。
「結構大きいねぇ。」
「これがいつもおなかについていたら大変じゃない?」
オストメイトの方の状況を自分ごととして想像する言葉が次々に飛び出しました。メンバーが直接おなかのストーマを見せたりしなくても、子どもたちはパウチの実物に触れただけで、私たちの想定をはるかに越えて色々なことを考えてくれたのです。
そして、このあと、子どもたちがどれだけ丁寧に、優しい思いをこめてデコパウチを制作してくれたかはいうまでもありません。
一般の方はもちろん、実は医療関係者の方でさえ実際のパウチを扱ったことがある人は多くないのではないでしょうか。デコパウチを制作するのをきっかけに実際のパウチに触れてみてもらうことが、実はその後の関心や親近感、理解につながっていくであろうことを感じられたケースでした。
さらに・・・
もし応募してくださる方が制作したパウチをたとえばSNSにアップしてくれたりしたら、「お!実はうちのおばあちゃんもオストメイトでね」とか、「こっちの穴のある側をおなかにつけるから見せる側は本当はこっちなんだよ」といった”実は身の回りに存在していた”(=普段は特にカミングアウトしていないことが多いですよね)オストメイトやその家族などとの会話のきっかけにもなってくれる、それがデコパウチのチカラだと思っているのです。
3)「安易に身につけないで!」と言わなくてはいけないワケ
こうして「応募作品は実用を前提としない」方向に舵を切ると、裾野を広げるがゆえに、慎重に運営しないといけないことも出てきました。それが
「応募作品は必ずしも実用を前提としない」=「(安易に)身につけないで」
という呼び掛けです。
これは、まず第一に、メーカーから無償提供される”もったいないパウチ”は基本的に使用期限を過ぎていたり、製造工程で規格外や色移りなどがあり廃棄せざるをえないもの。その多くが「そもそも実用に適さない」ということがあります(既述)。
次に、普段パウチを扱っていない人たちが参加することのリスク対策です。普段ご自身が使っているわけではないため、実用できないパウチであるという重要さを認識していないかもしれません。また、たとえ実用できるパウチをネットなどで購入して入手したとしても機能面や衛生面をさほど気にせず制作しているかもしれません。
私たちが実用しないで!と繰り返すのには、こうした実用に適さないデコパウチをイベントをきっかけに制作して当事者に贈ってしまう、などのケースを防ぎたいという思いがあります。それで敢えて「実用しないで!」に重きをおいて呼び掛けるようにしているのです。
4)オストメイトの方の実用デコパウチを否定しているのではないんです
しかし、まもなく、今度はオストメイトのメンバーなどからこんな声が漏れ聞こえてきました。
「本当は自分のために始めたことなのに、自分のパウチをデコるのが悪いみたい・・・><
私たちは自分が使うためにデコってるのに。」
うんうん、
それもそうですよね。
なによりも、自分が楽しいから実践してきたんだというメンバー、そして、これからオストメイトになることに不安を感じている人や、オストメイトになったばかりで落ち込んでいる人たちにこんな形でちょっとでも前を向けることを伝えられたら、そんな思いのメンバーもいます。実用について慎重に!という呼び掛けをすることでそんな風に肩身の狭い思いをさせていたらごめんなさい。
私たちはこうした当事者メンバーの思いも当初と変わらずとっても大切に考えていて。
このイベントの「オストメイトへの理解や関心を深める」という目的のターゲットには、
①社会(主に非当事者)
②オストメイト自身
の両方が入っています。
オストメイトであるゆりさんとオストメイトでない私が共同でこの結社の管理人をしているのもそれが理由です。非当事者をメインとした”社会”とオストメイトの方、両方にこの活動を届けることではじめて何かが変わっていくんじゃないかと思ったりしています。
つまり。
まずは絶対に健康面でトラブルが起きないように、普段パウチの扱いに慣れていない人たち向けに”実用を前提とせずに自由にデコってくださいね”=”実装用ではありません”と呼び掛けて当事者の安全を確保した上で、さらにオストメイトの方向けに、ご自身のパウチをデコる場合には、(今まで通り)機能面や衛生面に留意してくださいという呼び掛けを二段階でしているというイメージです。
それから、いうまでもありませんが、あくまでも、「デコパウチ」というのは新しい”選択肢”のひとつ。なにもデコらないシンプルなパウチのほうが気持ちがあがる!安心できる!という当事者の方はもちろんデコパウチをする必要はないんです。これからの時代、いよいよ大事になってくるのは、一人一人が自分ではない誰かに否定されたり邪魔されたりすることなく、自分自身で納得して自由に選択肢を選びとれることなのだと思います。
複雑なので、きっと混乱させてしまうこともあるかと思うのですが、トラブルの原因になってはこの大事なイベント自体、継続できなくなってしまいます。もし私たちの思いが伝わるととてもうれしいです。
応募要項やSNSの短い文章などではこのあたりの機微をすべて伝えるのがとても難しいので、文章にしてみました。
4)本邦初公開の大発表!?
そして!
せっかくなのでちょっと小出ししてしまいましょう。実は、この
オストメイトによる、オストメイトのための、”実用を前提としたデコパウチ”をもっと安全に安心して作れるノウハウを専門家の力も借りながら進めていけないかというプロジェクト
も動き出そうとしています。期待しすぎずに、でもちょっぴり気にしてもらえたらうれしいです。
とはいえ、なにしろ全員ボランティアの非営利団体なので、すぐにみなさんにリポートを出すことはできないかもしれません。もし、チカラと知恵を貸します!という専門家(WOCさん、メーカー開発関係者の方、研究者の方など)、医療関係者の方などいらしたらatstoma@gmail.comまでぜひご連絡ください。
※記事の内容は執筆者個人のもので、本人やメンバーの所属する組織や団体とは関係ありません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?