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迷宮の十三人

 連合保険協会の「非常に優秀」なエージェントであるところのおれは、連合のギルドからとあるパーティの査定を依頼された。
 推奨L75の迷宮ボスをどれだけ低Lで攻略できるか、という制限攻略ミッションをその十三人パーティは達成した。
 彼らの平均Lは13。最高Lは18だった。これまでその迷宮に挑んだ中でぶっちぎりの最高(最低)記録だ。
 ぶっちゃけありえない記録だった。
 いやそもそも十三人パーティってなんだよ。
 通路で絶対詰まるだろ。
 まあ、一応これには種明かしがある。
 ボスの部屋は広いので、十三人で挑むこと自体は不可能ではないらしい。道中は小集団に分かれて行動し、ボス部屋の手前で再編したのだろう。  
 ルールハックめいているが違反ではない。
 しかし、もし再編時に高レベル勇者を密かにパーティに加えていたとしたら?
 彼らに前後して、一人の勇者が迷宮に突入していた。L99の「神速」ルクレールだ。ソロ最速RTAを目指していた彼が、もしパーティに協力していたら? 彼は到達予定時刻を過ぎても未帰還。RTAに早期に失敗した後、遊びで合流した可能性はある。参加せずともレアアイテムは渡したかもしれない(勿論レギュレーション違反)。高レベル勇者は宝箱窃盗やたかりが日常化した人格破綻者であり、聴取めんどくせえ……とうんざりしていた所、ルクレールの死体が発見された、との連絡が来た。
 うんざり度が上がった。
 さて、問題だ。
 低Lパーティの連中は全員。
 そして勿論、ボスも含めた今回の迷宮のモンスターは全て、L99の勇者を殺せるはずがなかった。攻撃はほぼ通らない。毒も状態異常も効かない。ボスがごっそり増えて束になってかかればあるいは? くらいの話だ。
 しかし、おそらく、いや必ず。
 十三人の誰かが、あるいはその全員が。
 ルクレールを殺した。
 しかし……一体、どうやって?


                    続く



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