ぎゅうし
今年の夏、3年前に付き合っていた人と1年ぶりに会った。
付き合っていたときと変わらない感覚だった。
横になってぼけっとしながらしゃべっていると、ベッド横の壁に規則的に並べられたタイルが、ひとつだけズレていることに気づいた。
私はどうしてもこういうのが気になる。
というのも、「これを業者が一つ一つ貼っているうちについ気が抜けてしまったのだろうか」とかそういうしつこ~い気になり方なのだ。
上記のことを話すと、彼は「う~んどうだろうね、気を抜いたにしても最後に気が抜けたのか、それとも序盤で気を抜いていたのか、どっちだろう」と言った。
彼は乗ってくるのだ、この類の会話を積極的にできるのだ。
こういうところが本当に好きだったことを思い出して、なんだかオエ~という気持ちになった。オエ~
それから、テンションが上がって昔からスーパーの牛脂が気になる、という話もした。
牛肉を購入すると無料でもらえるあの牛脂が、その立場の割にキャンディのようにひとつひとつていねいに梱包され、袋に牛脂とプリントされている。
その工数のかかり方に興奮する、という話だ。
大体の人はこんなことどうでもいいと思うかもしれないけど、私にとっては本当に面白い。
彼は私が目をキラキラさせながらこういう話をするところが好きだったらしい。
今になってそういうことを口に出して言ってくるお前のそういうところが好きじゃないんだと思った。
でももう会わないぞ、と心に決めた。
ちなみにこのもう会わないぞ、は3回目。だけど今回は本当にもう会わないぞ、だと思う。
だけど帰り道にふと、この牛脂の話を変な顔したり適当に流したりせずに聞いてくれる人は果たしてこの世に何人いるのだろうか、とかを考えた。
こういうのが前言撤回のトリガーになりやがる。
でも、私の人生はそういう人と出会えるように設定されている気がするから大丈夫だろうな、と呑気に考える。