TOKI RIVER 第4話
りえの場合
どうしても、やめられないこと。
覗かずにはいられない。
どうしても、どうしても、川を覗かずにはいられない。
そんな子どもじみたことを、思うけれど
土岐川を渡るたびに「覗きたい」衝動に駆られる。
水の量、透明度、水草に魚、鳥と岩
叶うなら川底をじっと見ていたい。
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とある休日
長い散歩に出かけた。
土岐川を越えて、知らない場所へ向かうために。
陶都大橋の真ん中で、いつものように川を覗く。
休日だから存分に覗き見ると
そこには普段見かけない巨大な魚がいた。
興奮してスマホで写真におさめる。
「なにしとんの」
遠くから声を掛けてきたのは、よく知るふたりの友人だった。
何故ここに。
よりによって、このタイミングで。
どこから説明していいのか分からず
「1mくらいの魚が居て……」と悠々と泳ぐコイを紹介した。
3人で川の中を眺め、
橋のふもとから土岐川に降りていった。
結局、川の向こう側まで歩みを進めることはなかった。
いつも橋の上から覗く土岐川に初めて足をつけた日のこと。
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そう、おとなが橋から乗り出して川を覗き込むのは不自然なのだ。
そんなことは知っている。
往来するクルマの運転手を心配させているかもしれない。
でも、今日も土岐川の中が見たい。底が見たい。
ずっとずっと覗いていたい。
(About Story)
2020、春の日の実話です。
コロナ禍でぱったりと誰にも会えない日常が始まってすぐのこと。
誘ったわけでもないのに土岐川に友人たちが集結した印象的な一日。
そして、どんな川でも覗きたくなるのはただの習性。中でも土岐川は水質や深さ、橋の高さなど程よく気に入っています。とくに多治見橋から観察する土岐川が抜群。誰かと橋を歩いていて覗かないのは、がまんしているだけです。
(Author & Selector)
りえ
多治見で編集者とライターをやっています。まちを掘り下げ、伝える媒体としてdig @dig_tajimi も始めています。好きなものはカレーと犬、本屋と地図、ラジオ。30代になってから多治見に住み始めた新米です。
川川川川川土川川川川川岐川川川川/||川川川川川魚川川川川川
プレイリストTOKIRIVERは土岐川にまつわるストーリーのサントラです。土岐川の普段の流れのごとく、ゆるっと更新しております。ストーリーと一緒にプレイリストをお楽しみください。プレイリストは、下記のリンクから入るとSpotifyで聴けます。読みながら聴きながら読んで聴いてヨンデキイテ…してみてください!
(オノダアツシ)
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