無料)3/10 CPI予想値から米国はスタグフレーションに入る危険性を感知
こんばんは、アトレです。
先週は金曜の雇用統計後に大きく上昇した後に急落し、一気にセンチメントが変わりましたね。先週のNoteでは、金利低下と株高を予想しましたが、金利低下がいい感じに当て切りましたが、株価の方は伸びきれない1週間でしたね。その理由について解説していきます。
株価の急落についてはやはりタイミング的に失業率の上昇が挙げられるかと思います。雇用統計のヘッドラインには出ませんが、Householdデータでは直近3か月で90万人の雇用が失われ、労働者全体の0.5%の雇用が減った、つまり、職を失った人が増えたという事になります。
ヘッドラインに出てくる非農業雇用者数が27万人増加というのはこれまでお伝えしてきたように、政府系の雇用の伸びが高く、且つ正社員が減ってパートタイマーが増えている事、ダブルワーカーや不法移民も含んでいる事から上目線に出やすい指標となります。
これに対し、労働者一人一人にアンケート調査するHouseholdデータはダブルワーカーや不法移民の誤カウントが起きにくく、下方修正も少ない事から、より精度が高いと言われております。
因みに雇用統計のヘッドラインの数字は以下のように、赤字(つまり下方修正)が入る可能性が圧倒的に高く、13回中11回で下方修正が入っていますね。
修正率は最大で50%もの下方修正が入った月(昨年6月)もありました。「20万人増えたと思った雇用が実際は10万人でした~」という結果は統計の方法として改善の余地がありそうですね。雇用統計はなぜこれだけ大きく下方修正が入るのかが謎ですね。*ついつい選挙前に経済指標を弱くしたくない現政権の思惑が頭に浮かんでしまいます。
因みに、雇用と株価は大事な相関関係があって、以下の図(リーマンショックの頃)の青線(雇用者数)と赤線(ナスダック)が表すように雇用が下がり始めると景気悪化が意識されて株価が下がりやすいと言えます。
今回はAIブームで半導体株が好調ですが、3か月連続の雇用減少、90万人クラス(0.5%)というのはやはり株式にとってはインパクトある数字かと思います。
これを少し拡大します。
以下図は07年の雇用者(青線)とナスダック(赤線)ですが、一つ目の丸は雇用が70万人が減少、2つ目の丸では二か月間かけて38万人減少しており、各々雇用者全体の0.5%、0.3%程度の減少ですが、株価の方は数週間レベルの下落に繋がっています。やはり雇用の悪化は株価にはマイナスに働きやすいようです。
そして時間軸こそ異なりますが、先ほどチャートに現在のナスダックのチャートを重ね合わせたのが以下です。偶然ですが、波形がかなり似ております。つまり、今回の雇用悪化のデータをきっかけに大きめの調整、或いは暴落前の予兆が起きてもおかしくは無く、歴史は繰り返さないが韻を踏むという流れになるやもしれません。
さあそして、みんな大好きCPIが3/12に迫ります。このCPIの見方について解説していきます。みなさんの注目と期待を浴びながら予想します。
この結果について、総合値は先月3.1%、今月は3.1-3.2%の間に収まるとするとさほど変化なし、と見受けます。先々月が3.4%だったので、下落トレンドの中には留まりますね。
以下はCPIのコアの推移です。10月頃から足踏みが続いています。今回、クリーブランド連銀の予測する3.7%が出ればそれなりにポジティブサプライズですが、アナリスト予想の3.9%レベルであればインフレ高止まり感は拭えないですね。尚、クリーブランド連銀の4月発表分の予測も横ばい継続という感じであり、CPIの結果を見て金利が下落するブースターがかかるとは言えないかもしれません。また、CPIに先行するPPI(3/14発表)も高い値が予測されており、今週のインフレ関連指標で金利低下となるかは、やや可能性低めかもしれません。
最後に、今回触れてきた雇用とインフレと株価について解説します。
私の調査した限りで、インフレと株価の関係は時に相関、時に逆相関するので株式の動きを予想や理解するのには難易度が高い指標であると判断しております。
その一方、雇用と株は割とシンプルな関係があるようです。
以下の図は青線が正社員の増加率で、黒線のゼロを超えていたら昨年比で雇用者増加、マイナス圏なら雇用者が昨年比で減っている事を指します。
80年代以降のデータにはなりますが、正社員の雇用数が前年比でマイナス圏になるとリセッションになってきた履歴がありますね。
つまり、今回弱い雇用が出た事で、金利低下に進みやすかった一方で、業績不安が重くのしかかっており、今週以降、それが払しょくできるかに相場の動きがかかっているようです。
まとめ
●雇用と株式には相関関係がこれまであったので、雇用が弱くなっている今、株式市場に警戒感が出ている。
●雇用の悪化、労働環境の悪化はFRBも認識しており、年内の利下げのほのめかしが始まっている。
●一方、インフレ(CPI)の方はインフレ低下の踊り場にあり、もう一段のインフレ低下に至っていない。もしもこのままインフレが低下せずに労働環境と企業収益が悪化した場合、インフレが高いまま不況に入る「スタグフレーション」に至る可能性もあり、警戒をしていきたい。
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