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ZERO : FEVER Part.1 世界観
【A INTRO】
過ぎ行く時間、僕たちの夢
賑やかな人々の行列から外れて
人通りの少ない脇道を通って
迷路のようなセメントの塀を抜けると
「立入禁止」の警告板がある工場の入り口が見える。
工場入口に生えている野草を切り開くと草むらにいくつもの足跡がついた道が現れ、いつものように遠くから聞き覚えのあるビートが聞こえてくる。
荒れ果てた倉庫、錆びついた鉄の門がビートを刻んでいる。
鉄の門を開けると、そこには自分たちの空間が広がっている。
見慣れたビートに合わせて踊る仲間たちの姿が見える。
彼らが一人ずつ目の前に現れたとき、僕の顔は満面の笑みを浮かべた。
毎日見ていても飽きない顔ぶれだ。
ここは、僕たちだけの空間だ。
笑ったり、泣いたり、言い争ったり、踊ったり、歌ったり。
僕たちの夢が集まった空間。
大人の世界と切り離された隠れ家、自分たちの世界。
今この瞬間は妥協や甘えのない瞬間だ。
その扉を開ける前の瞬間です。
【ホンジュン】
存在しなかったかのように忘れ去られるのは嫌だ
存在しなかったかのように忘れられるのは嫌だ。
僕たちはきっと同じ空の下、同じ世界の中で生きているのだと思います。でも、テレビの中の明るい光の下で踊っている人たちとは、ちょっと違うような気がするんです。テレビの人たちのように、どこからでも見える明るい星になったら、家族は僕に気づいてくれるだろうか。偶然であっても、一度は会ってみたいものです。家族が以前のように集まれたら...。あの頃のリビングの暖かさが懐かしい。
散り散りになった家族と、新しい家族と。
一人暮らしをしながら、小さな隠れ家で一緒に音楽をすることで知り合った仲間たち。
思い出すだけで胸が熱くなります。一緒に夢を叶えたいですね。
家族も、大好きな音楽も、夢も...。
守っていかなければなりません。
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【ソンファ】踊っていた彼女
踊っていた彼女。
彼女は全身でビートにぶつかっていた。一瞬、すべての風景が止まった。 彼女のイヤホンから漏れる音楽。聞こえそうで聞こえないそのメロディー以外、何の音も聞こえない。常識、ルール、苦しい世の中のことなんてどうでも良さそうなあの身振り。彼女のダンス。そしてたった一度、すれ違った視線に壊された僕の世界。自分の中で何かが変わった。でも僕は何も言えなかった。
彼女は「Be Free」と刻まれたブレスレットを落とした。あの日以来、ずっと同じ時間に同じ場所に僕はいた。
しかし、彼女は二度と戻ってこない。名前も住所もわからない。彼女は、"Be Free "のブレスレットのように、自分自身を解放してしまったのだ。それ以来、音楽は二度と同じ音で聴けなくなった。もう曲の構成もコードもジャンルも区別がつかない。わからない。あの日の感覚だけが残っている。
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【ユノ】天気は晴れ
兄さん、今日もご機嫌だねぇ。
お天気もすごくいいし。走って会いに行っても、暑さを感じさせないくらいだ。
こんな日は、漢江でバスキングでもしていたのかな?あぁ、懐かしくなってきた!
あ、兄さん!久しぶりに兄さんが事故をした時に壊れたあのギターを取り出してみたよ。怪我をした姿を思い出すようで、捨てようと思ったの。でも、兄さんがあんなに大切にしていたギターだから、夢を捨てたような気がして、目につかないところに置いておいたんだ。
知ってる?兄さん。僕のチームには兄さんのような友達がいるんだ!彼の名前はホンジュンさんだよ。彼は、僕が困難な状況に陥ったときに相談するような人だよ。芸術的な面でも人間的な面でも尊敬している人だよ。
今思えば、二人とも似てるね。
きっと会ってたら仲良くなれたと思うよ。
今、笑っているのはホンジュン兄さんやチームのみんなのおかげだよ。 だからもうつらい記憶も避けないようにしてる。
兄さんの叶わなかった夢を僕が続けて、チームのメンバーたちと一緒に必ず実現するよ。
その時が来たら、長い眠りから目覚めてくれよ。
兄さんの夢を、僕たちの夢を叶えた姿を全部見せてあげたい!
明日、また来るよ。おやすみなさい!
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【ヨサン】
真夏の夜の夢のように
僕は最初から機械をうまく扱っていたわけではありませんでした。きっかけは、スピーカーを分解したことでした。いつも心苦しさを感じていました。僕は、いろいろな電化製品や楽器を分解しては、また組み立てるということを繰り返していました。
親が僕の未来を全部決めていたんです。全く同じ時間に同じルーティンをこなす。分解と組み立てをする時間だけがこのもどかしい日常を少しでも忘れさせてくれました。
この奇妙な習慣のおかげで、僕はあの人たちと出会うことができたのです。
あの日、あのボロい倉庫で、僕と違う雰囲気の少年たちが「ドローンの動かし方を知ってる?」と僕に聞いてきたんです。
聞かれなかったら僕はいつものように逃げていたと思います。
この出会いは、ちょっと不思議な感じでした。
実は僕は道に迷って彷徨っていたんです。
音楽の音に惹かれてそこまで行ったのですが、その日から、毎日のように通いました。
一番気持ちよかったのは、音楽に合わせて踊ること。踊ることは、こんなにも心を揺さぶるものだったんですね。両親の心配そうな顔が目の前に浮かんでも、やめられないんです。
初めて生きていることを実感しました。
心臓が破裂しそうなほどドキドキし、指先からピリピリとした感覚が僕を支配し始めたのです。
これほどまでに何かを欲した瞬間があっただろうか。一人、また一人と、僕の名前を呼んでくれる仲間たちが増えていきました。
一人しか通らなかった道が、たくさんの人の通る道になりました。
ゆっくりと、「僕」という言葉は「僕たち」になりました。
しかし、今、僕は「僕たち」から離れなければならない。僕が抜ければ散り散りになったメンバーも、奪われたアジトも、全て元通りになるはずです。
ごめんね、みんな。
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【サン】どうかな
僕はいつも笑っていたけれど、いつも孤独を感じていた。心を開けないというか、開くタイミングがなかったというか。誰かと親しくなるたびに僕は引っ越さなければならなかった。
今日もそうだけど、今回はちょっと違う。
今は自分の気持ちを話せる友達がいる。
会った瞬間に僕と同じだとすぐに分かった。
ソンファ兄さんはちょっと違う。彼は今までの方法をとろうとせず、いつも「彼の」やり方だった。
父は、また引っ越さなければならないと言っていた。それは聞き慣れた言葉だったが、今回は違う意味で衝撃的だった。
自分の行き場ある今、僕がこのままでいいのだろうか...ウヨンに何と言えばいいのだろうか...。
ウヨンや友達のおかげで僕もダンスができるようになったのに。
ボボどうすればいい?え?僕のやり方でやれって?
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【ミンギ】彼の笑い声
音楽は僕の逃げ場であり、唯一無二の救いだった。死にたくなったら僕は音楽を聴いていた。
死が怖くなかったんだ。この感覚は、貧乏ではない人には理解できないだろう。周りの人たちは、まるで僕が他の惑星から来た宇宙人のように、死にたがっている不真面目な高校生を嘲笑っていた。そうだね。そんな風に僕と同じ年頃に死にたいと思ってる人なんてそれほどいないだろう。
小・中・高を通じて覚えている友達の名前は数人。そのほとんどが小学生の時だ。
誰も僕に話しかけなかったが、それは話しかけられたときに返事をしなかったことが主な理由だ。だけど、ウヨンは違った。小・中・高とずっと一緒にいた。休み時間には必ず僕の隣に来てくれた。同級生の話、好きな歌、尊敬するアメリカ人のダンス、学校の外で活動している音楽チームの話など、返事をしてもしなくても、彼は話し続ける。僕はなぜか恥ずかしくてわざと彼のことを「ウオン(ゴボウ)」と呼ぶようになった。あの独特の笑い。彼は、僕が初めて心を開いた友達だ。
ある時期から、食事もウヨンと一緒にするようになった。夢を見ることができる場所、アジトに初めてついていったのもその頃だった。ありのままの僕を受け止めてくれる友人たちだった。泣いて、笑って、一緒に音楽を作った。彼らは、僕がどこに住んでいようと、親が誰であろうと、僕をありのままに受け入れてくれた。生まれて初めて幸せだと感じた。
でも今、僕は怖くなっている。本当に夢を持っていいのだろうか。奪われることはないのだろうか。
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【ウヨン】今回は違う
頭の中が完全に真っ白だ。
僕は誰なんだろう?
ここはどこ?
逃げ出したい。
また失敗してしまうのか?一人で練習して踊っていた時は、結構自信があったんだけど…。SNSにアップした僕の練習動画は、10万回以上再生された。多くの人から連絡があり、大手芸能事務所からもオーディションのオファーがあった。でも、彼らの視線を感じた途端、動けなくなったんだ。ただ、動けないだけなんだ。目をつぶって逃げようとしたら、ソンファの声が頭に浮かんだんだ。
ウヨン、ステージに立つ前に、この3つのことを思い出せ!
「きっとうまくいく!」
「自分を信じろ!」
「お前ならできる!」
緊張のあまり、死にそうなのに、3つのことを思い出すなんて。どんな心理学の本を読んだの?
ユノ、またソンファをバカにしてるのか?
でもな、ウヨンが自分を信じることが大事なんだよ
ホンジュン兄さんはいつも物事を整理するのが上手だ。
思わず顔がほころぶ。見えないのに、気配を感じる。僕の足にエネルギーが戻ってきた。
僕は舞台恐怖症を克服するために常におしゃべりをする習慣があり、人見知りを隠すために笑う練習をした。それは、集中するための僕の防衛機制だった。他人からバカにされても気にしなかった。だけど、それはいっときだけで、相手の視線を意識した途端、体が固まってしまった。
ホンジュン兄さん、ソンファ兄さん、ユンホを初めて見たのは、路上バスキングだった。ソンファ兄さんとユノがパフォーマンスをやっていた。彼らは僕にないものを持っているのがわかった。
ダンステクニックを超えた表現力、観客を魅了するショーマンシップ。彼らと踊ると、気負うことなく、最高のパフォーマンスができるんだ。
足に力が入る。最初の一歩、決して踏み出せなかったステップ、体を縛っていた鎖が、魔法のように解けた。
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【ジョンホ】すべて計画通り
僕はすべてを計画していた。全国大会で優勝すること、年間最優秀選手になること、最年少のバスケットボール選手となること......。僕の人生には、これ以外の計画はなかった。
怪我をした初日。早くリハビリして、復帰することしか考えてなかった。
でも、今はもうバスケットボールができない。
じゃあ、どうすればいいんだ?
僕はバスケットボール以外に出来ることがないんだ。バスケットボールをやらせてください、何でもしますから。と先生に懇願したが、無理だった。
溺れるような思いだった。どんなに頑張っても、全く同じ場所から進めない。時間が経つにつれてただ溺れないようにしようと、やっとのことで持ちこたえている。こんな生活でいいのか?
そんなことはない!でも、バスケットボールをあきらめた瞬間、僕の中のすべては死んだも同然になった。
ユノさんに手を握られる前の、あの生気のない表情が、僕にとても似ていた。
手が痛くてズキズキする。
ミンギさんは、明らかに自分が殴られるのを分かっていたが、避けようとはしなかった。
彼の寂しげな瞳が心に残った。
もうやめるという言葉
自分たちの夢が贅沢だという言葉
一緒に過ごしてきた時間が無意味だったなんて言葉に耐えられず手を出してしまった。
心が傷んだ瞬間でもあり夢を追いかけたいと思った瞬間でもあった。
当時はミンギさんにどう手を差し伸べればいいのか分からなかった。
僕たちはどこにいるのか。
どこに行くべきか?
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【Z OUTRO】新しい世界へ
また夢や家族を失っても、何もできない。
僕には何も出来ることがなかった。
みんな去ってしまい、また一人になってしまった。
一滴の雨も降らず、蒸し暑い日が続いたある夏の日、僕たちは別々の道を歩むことにした。
一緒にいたいという夢が、足かせのようになってしまったからだ。灼熱の太陽は、僕たちの青春の夢さえも溶かしてしまい、足の先から消してしまったのだ。
問題は、先送りされた洗濯物のように積み重なっていった。たとえ頻繁でなくとも会おうと交わした約束は日に日に後回しにされ、互いのことを忘れていった。
その頃、夢の中で彼を見かけるようになった。
マスクで顔を覆い目だけしか見えない黒いフェドラの男、どこか見覚えのある、しかし疲れた目。
"夢を失ったのは厳しい現実のせいではなくお前たちがそう決めたからだ"
"自分の見ている世界が全てだという考えを捨てなさい。この世界にはいろんな次元があり、いろんな現実がある。私がいる世界も、あなたがいる世界も、すべて現実なのだ。"
"すべてを話したいけど、今は時間がない"
"これは何だ?"
"クロマー "世界を繋ぐ鍵"
彼の手には、輝く砂時計が握られていた。この小さな砂時計が、世界をつなぐ鍵だったのか?
僕は慎重にクロマーを手に取った。すると、男は数歩下がって、最後の言葉を吐いた。
"心のままに、地図はそこにある"、
クロマーから視線を戻したときには、すでに男の姿はなかった。
そして、僕は目を開けた。すべて夢だったのだ。誰もいないアジトで一人眠ってしまったのだ。
孤独な心を隠して歩いて行こうとした時、ソファーの目の前の机の上に何か光るものがあった。
クロマーだ。
夢で見たものだ。
夢じゃなかったのか?クロマーを見ながら何気なく回してみると…
砂時計の砂が下から上へと逆流し始めたのだ。
すると、鉄の扉が開き、一人ずつ近づいてくる足音が聞こえた。仲間たちが僕の周りに僕と同じような表情で集まってきた。
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※ 世界観、ストーリーが分かるとより楽しめますね☺️