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THE WORLD[DEARDIARY]
YOUR THUNDER
懐かしいATEEZへ
私たちが植えた”きょうだいの木”が、いつの間にか私の背を追い越すほどに大きくなった。実は君たちがここを離れてから少し経った時、木の幹がひどく損傷してしまったことがあったんだ。急いで添え木を当ててもらったけど、このまま木が死んでしまったらどうしようかと心配になったよ。でも、幸い、すくすくと育ってくれた。すごいことだと思わないか?
大きく育ったきょうだいの木を見て、少年と彼の兄の顔が心に浮かんだ。
「あのまま成長していたら、こんな姿になったんだろうか?こんなに凛々しく、しっかりしていたんだろうな」
一人になった私は、こう君たちに問いかけた。いたずらっぽく、にこにこしながら答える君たちのことを想像しながら。そうしたら、急に現実に引き戻されてしまった。君たちが、君たちだけの世界へと旅立ったという現実が・・・、二度と君たちに会えないという現実が・・・。
私がZのテストを無事にパスするまでは、私たちに突然の別れがくるなんて、誰も思いはしなかっただろう。Zの支配下にある儀典管理職に合格したということがうれしくて、次の作戦に全神経を集中されていたんだ。たしかに儀典管理職は、Zが構築したシステムにアクセスする最も良い方法だった。そして、君たちがくれたヒントも大きな鍵になった。「サイエンサルバールの教祖、ヘンリー・ジョー」Zに似た顔の人物の正体を教えてくれたおかげで、それを手がかりにしてシステムのパスワードを探し当てることができたから。(その中に、Zが君たちの世界にアクセスした記録があったてこと、話したかな?Zが少しの間クロマーを手中に収めていた時、君たちの世界にいたヘンリー・ジョーに会ったことがあるんだと思う。私の記憶が確かなら君たちの世界では1999年のことだったはずだ)
システムにアクセスするのが難しかっただけで、システム自体は単純な構造に設計されていた。難しいこともなかったし、中央政府に感情エネルギーを奪われて、すべての人間はプログラミングされた機械と変わらなかった。独裁の構造だということがすぐに分かるじゃないか。だから、私たちは、よくできたシステムそのものを利用することにした。ただ、上と下を逆転しただけさ。”We the dog"・・・しっぽが犬の胴体を振って、頭をつかむ作戦だ。人間の耳の横にささっているチップの入力値にちょっといたずらをしたら、しっぽが頭になって、頭がしっぽになってしまうという状況が発生したんだ。覚えてるかな?広場で、人々に囲まれたZが最後まであばれながらガーディアンたちを探していたことを。あまりにもあわれなもんだから、自分が悪者のような気持ちになってしまったよ。まったく笑わせるもんだ・・。
だから、つまり・・。あの時、やつのあわれな演技に惑わされたりしなかったら、私たちは君たちと離れ離れになることはなかっただろうと言いたいのさ。僕が引き金を引くことをためらった瞬間、Zは近くに立っていた老人を人質にした。いつものように君たちはクロマーを使って人質を救いだそうとしたが、Zはその隙に君たちのクロマーを奪い、地面に投げつけた。おそらく、逃げるつもりだったんだろう。君たちは、そうさせまいと、落下してくるクロマーに駆け寄って手を伸ばしたが、手を触れると同時にクロマーは地面に落ちて粉々になってしまった。閃光が君たちとZを飲み込もうとする時、私は怒りという感情を身をもって知った。ソンファに体を密着させて何とか生き残ろうとするZに向かって、私が引き金を引くと、閃光が消え、Zの体が広場の地面へと落下したよ。でも、君たちまで・・・消えて、いなくなっていた。
きっと君たちの世界に戻ったんだろう?君たちは私たちの世界にはいないけど、君たちの音楽とダンスとパフォーマンスを真似する子供たちが、また別のATEEZとなって、君たちのことを記録するだろう。君たちはここにいないけど、ATEEZはここにいるってことだ。
あっ、そうだ。”ここ”っていうのは、正確に言うと、”統制から解放されることにした区域”のことさ。Zが消えて、君たちも去ってしまった後、本当に色んなことがあったんだ。感情の統制から解放されることを望む人と、システムによって感情統制を受けながら生きていくことを決めた望む人に分かれたのさ。私たちは、なんとか1つの道を選べないものかと頑張ってみたけど、簡単なことじゃなかった。そして、長い時間をかけて、私たちはお互いの決定を尊重することにした。私たちが一方を正しいと信じているように、彼らもやはりもう一方の道を正しいと信じているわけだから、強要することはできなかった。だから、平和に共存する道を選び、”解放区域”と”統制区域”に分かれて、それぞれの場所で自分たちの力で秩序を構築していくことになった。もしかしたら、長い時間が経ったら、違う国になってしまうんじゃないかという不安もあるが、それはどうしようもない。もう少し言えば、互いに暴力や圧力をもって隣人と接することがないように願いばかりだ。
サンダーの基地は”解放区域”の臨時政府として機能している。だから、以前と違い、多くの人々が出入りする場所になったんだ。それから、庭の、一番よく見える場所に、きょうだいの木が植えてあるんだけど、傷ついた幹が回復する過程で、でこぼこした傷跡になってしまった。見た目が悪い気がしたから、リボンでも巻いて隠そうと思ったんだけど、ある時、親と一緒に散歩している子どもが、きょうだいの木を見てこう言ったんだ。
「あれ?この木は他の木と違って、独特な模様があるね。きれいだなあ」
「模様?傷跡だという先入観からか、これまで一度も模様だなんて思ったことはなかったよ」・・そう気づいた。傷跡が作った模様が、他の木にはない特徴となっている。傷が、自分だけの特別な模様になることもあるということか。そう悟ると、この先、特別な模様を持つことになる”解放区域”と自分自身の事が楽しみになってきた。
懐かしい気持ちになって、こうやって手紙を書いてるけど、この手紙が宇宙を通過して君たちの元に届けられるのか、君たちが今何をしてるのか分からない。それどころか、そもそも、この手紙を送る方法があるのかすらも分らない。
もともと君たちが住んでいた場所に無事到着したのか、気になっているんだ。最初にクロマーが壊れた時は、過去に行ったと言っていたが、今回は現在の時間に到着したのだろうか。そして、そこでも、みんなで踊って歌っているのだろうか。家族を探し、厳しい父親から独立し、舞台に立ち、多くの人々に会い、たくさんのお金を稼ぎたいという、君たちの願いがすべて叶ってほしい。多くの人々の人生を変えた君たちだから、きっとやり遂げただろう。何になったとしても、縛られることなく”Be Free”でいてほしい。私に似ているという彼女が言ってたようにね^^
みんな、とても懐かしいよ。黒い海賊団も、サンダーたちも、レフトアイや解放区域の人々も、みんな君たちのことを思っている。僕たち、いつかまた会う日が来るよね?そうなることを願って。
ー君たちのサンダーより