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エシュー・メッセンジャーはどう富を得て、そして罰されたのか

感染症の流行によって中止となっていたカーニバルが時期をずらして開催されました。2022年のブラジル・リオのカーニバルの優勝チームはGrande Rio/グランヂ・ヒオ。彼らが今年選んだテーマはなんと、カンドンブレーの神様「エシュー」でした。エシューについては別の回で詳しくご紹介しています。(写真はカーニバルでエシューを演じるデメルソン@Radio Jornal UOLより)

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エシューは「口が食べるすべてを喰らう」というフレーズで、どんなものでも貪欲に食べてしまうことで有名です。悪魔と勘違いされていますが、カオスの中に存在する力ある神さまです。カポエイラの師メストレ・パスチーニャもこの言葉をカポエイラに例えていますが、カーニバルの演技の中でも、エシューが好物のファロッファ(芋の粉)を食べ、カシャーサ(サトウキビの蒸留酒)を飲むシーンが出てきます。また、天界と人間界を行き来するメッセンジャーをしていることから、二極が交差する点を司る神様と言われています。

2021年6月に神戸でエシューのお話をする機会をいただき、オーガナイザーの丹治晴香さんが「混沌を生き抜くブラジル文化 エシューとカポエイラ」というタイトルをつけてくださったのですが、とても良いタイトルで、エシューはブラジル文化を理解するヒントのようにも思えます。生と死、物質世界と精神世界、善と悪、男性と女性など、二極が交差するエリアをふらふらと行き来することができるのがエシューなのです。

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 エシューは動きを司る神様のため、彼がいなければ何事も始まりません。巧みな神様で、とても働きもので、いたずらもします。いつでも一番に扱われることを望み、エシューを守護神に持つ人は、知性的、感覚的で官能的、注意深く、仕事が速いと言われます。巧みで、交渉や取引がうまく、人を騙したりもできます。もちろん数字は1番で、赤と黒をシンボルカラーとし、スパイシーな食べ物やデンデー油、ファロッファ、そしてカシャーサが好きです。

今日はエシューのエピソードの中でも、彼らしいいたずらを描いたお話しをご紹介します。クルプシさんのイラストにあるように、彼は交差点に立って、人々が大事な選択をする岐路にたっている様子を眺めています。腰にさしているのは「オゴー」という男性器で、創造と力の象徴でもあります。交差点にあるシミは…読んでお楽しみの彼のオシッコなのですが、別にちびっているわけではありません。(ちびるような器ではありません)そして傍のお金がザクザクのかばんは…?ヘジナウド・プランヂさんの本「シャンゴー」から拙訳です。

エシュー・メッセンジャーはどう富を得て、そして罰されたのか


エシュー・メッセンジャーは、いつでも抜け目がないことで有名でした。
エシューほど上手いことやれて、巧みで、悪がしこい者などいません。
エシューは疲れを知らない働き者として知られています。オリシャーからの伝言を持っていき、また届けて、贈り物やお供え物を運びます。
でも、いつでもいいおふざけを欠かしません。エシューは人を騙すことや出し抜くことが大好きです。
ひとびとが行き違ってしまっている様子を楽しんでいます。
エシューは、本当になおしようのない、面倒を引き起こす者です。
それでいて、時々自分まで混乱してしまいます。

ある日イファー・預言者は、使者エシューを呼んで言いました。
「働き過ぎだな、友よ」
「まさに」とエシューは答えました。
「でも、日々日々、私たちの仕事はますます必要とされているようです」
「そうか、では、お前に特別な報酬をあげよう。お礼だ。そろそろ、富を得て裕福になってもいい頃だろう」
イファーはそう言って、エシューにかばんを差し出しました。
エシューはその贈り物を訝しげに見て、中も外も見て、尋ねました。
「このような空っぽのかばんですか?これはどういうことで?」
イファーは笑いました。
「おやおや、親愛なる友、メッセンジャーよ、お前のような頭が良くて抜け目のない輩には、空っぽのかばんで充分!」
エシューは、不機嫌さを隠すこともせずかばんをとり、イファーが自分を笑い者にしているんだといぶかしがり、適当に礼を言って去りました。

 エシューは王の大切なことづけを届けに、隣町へ向かう途中でした。
街に到着して、一晩を明かす宿を探しました。
その街で一番裕福な商人の家に泊めてもらえることになり、寝るところと、食べ物と、冷たいお水をもらいました。
エシューは、商人にかばんを安全にかつ秘密に保管してくれるよう、頼みました。
なぜならかばんの中はお金でいっぱいだから、と。

夜になり、みな寝静まったころ、エシューはオシッコをするのに、庭に出たふりをしました。
誰もみていないというのを確認してから、家の屋根のワラに火を放ち、火が家を覆い始めたところで、家の周りを走りまわって叫びました。

「火事だ!火事だ!」
皆目を覚まし、この火事で誰も死ぬことはありませんでした。
しかし、家は灰の山となりました。

ようやく落ち着き、商人はエシューのお金の入ったかばんが残っていたことに気づきました。
かばんだけでなく、なにもかも、焼き尽くされてしまいました。
エシューは商人に、かばんの秘密と、安全を頼んだろうと文句をいいました。
商人は返す言葉がなくて、その分のお金をエシューにあげたのです。
エシューはお金持ちになりました。大金持ちです。
エシューは、イファーがくれたかばんのおかげで、最高に幸せでした。

ですがオロルン・天空の主は、全てを見ていて、エシューを呼んで、猛烈な剣幕で怒りました。
「お前の母イエマンジャーも不機嫌になっている。悪いことばかりしでかしおって、このいたずら者!今回はやりすぎたぞ、メッセンジャーよ」
頭をかいて続けます。
「お金を返す必要はない。なぜなら、あの商人も泥棒だからな。盗まれるべきだったんだ。そのままとっておきなさい。お金が大好きだろう」
エシューはその言葉に嬉しくなって、にやにやするのを隠すこともできませんでした。
オロルンは、咳払いをして、不機嫌そうに続けました。
「恩を仇で返してくれたな。お前を助けてくれようとした家に。家というのは、神聖な場所なのだ。お前の罰は、永遠に路上で暮らすことだ。屋根なしのな。さあ行け、息子よ。わたしのメッセンジャー。マトモになりなさい。」

オロルン・至上神の判断で、エシュー、メッセンジャーは、それからというもの、路上に暮らすことになりました。道に暮らし、交差点で寝ます。
時々、エシューの姿を家の入り口に見かけることがありますが、扉の道側で、決して住居の中ではありません。
そんなわけでいつもしあわせで、働き者で、おふざけが好き、いたずらで人を悩ませます。しかし、その役割はほかの誰にもできません。なんでも運び屋。お供え物、メッセージ、おはなし。そして、家の外で暮らすことに決して文句をもらしません。

イファー・預言者は、起こったことを知って、こう言いました。
「私の仲間、エシュー、損することのないやつ。確信犯。屋根なしの配達人のくらしを選んだ。それこそが彼の好きな人生。


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