銀行が“優先的に貸したくなる”企業になる方法――資金繰り表と採算管理が生む圧倒的信頼【後編】
“銀行は自分の会社のことをどう見ているんだろう?”と、不安を感じたことはありませんか?
“本当に必要なときに融資を断られたらどうしよう…”そんな悩みが頭をよぎったことはないでしょうか?
こんにちは、中小企業診断士×現役銀行員の松島ゆーきです。前回の続きです。ご覧になっていない方は、こちらを先にお読みください。
銀行とのやり取りは、企業にとっての生命線ともいえる資金調達と深く関係しており、その評価いかんで経営が左右される場面も多々あります。もしあなたが「必要な資金をスムーズに借りたい」「銀行とのコミュニケーションを良好に保ちたい」と思っているなら、今回お話しする銀行から見た資金繰り表・採算管理の価値は、必ずお役に立つはず。
本記事では、現役銀行員という立場から、銀行が「どんな企業にお金を貸したくなるか」「どのように資金繰り表・採算管理が役に立つのか」を、少し踏み込んだウラ話も交えながらお伝えします。最後まで読んでいただければ、きっと「これなら銀行からも信頼される!」と感じられる具体的な行動が明確になるはずです。
1.前回までのお話
■ 銀行の置かれた環境を理解する
・収益力は厳しく、人員減少のなかで効率を追求している
・手間がかからない企業を優先する傾向がある
■ 銀行が貸しやすい企業になる
・資金繰り表や採算管理表で「いつ、いくら必要で、どこで利益が出るのか」を明確にする
・過去だけでなく未来を数字で示し、定期的に進捗を共有するまずは、銀行とどう付き合うかを考える前提として、銀行が今どんな環境にいるのかを知っておきましょう。なぜなら、私たちが資金を借りる相手である銀行の実態や本音を把握しておくことで、対応策が見えてくるからです。
2.どのレベル感で資金繰り、採算管理をしたらいいのか?
「とはいえ、どこまで詳細に作りこむ必要があるの?」
「小規模事業でも本格的な採算管理が必要なの?」
「どうやって資金繰り表や採算管理表を作ればいい?」
こうした疑問があるかもしれません。結論から言うと、
■ 詳細度は“自社の経営判断に必要なレベル”でOK
銀行に提出するときは、すべてを完璧に作り込む必要はありません。大切なのは「自社のビジネスやお金の流れを把握できている」という事実を、数字で示すことと、自社でしっかりと活用して、利益を出せるように使うことです。間違っても、銀行の提出が目的にならないように気を付けましょう!
■ 事業規模が小さいほど効果が分かりやすい
むしろ、「自社の見通しを銀行に伝える」という意識が薄かった小規模企業こそ、採算管理や資金繰り表を提出するだけで「そんなにきちんとしてるんだ」と評価されるケースが多いものです。
■ 作成方法はシンプルでOK。まずはエクセルなどで試作を
いきなり高度なソフトを使う必要はありません。エクセルなど、扱いやすいツールで十分です。主なポイントさえ押さえれば、あとは実態に合わせて数字を更新していけばよいです。
3.ここで一番大事なポイントをお伝えします
資金繰り表・採算管理表を銀行に見せることは、
そのまま経営者の係数感覚をアピールすることにつながる
という事実です。銀行の審査担当が最も注目するのは、「この経営者さんは数字で語れる人かどうか?」という点。
数字に強いとは「完璧な試算表を作れる」ことではなく、「ビジネスの肝を理解して、利益を生み出せる仕組みを説明できる」能力を指します。
よく「決算書の読み方がわからないから…」と経営者の方が尻込みする姿を見ますが、決算書の細かい読み方をすべて理解する必要はありません。むしろ、自社の収益構造をしっかり押さえたうえで、「この時期にこれだけ投資をして、これだけのリターンが見込める」とか、「この時期にこれだけの金額が必要で、毎月これくらいなら返済できる」という筋の通った説明ができるかどうかを見ています。これだけで、格段に銀行との信頼関係は深まります。
4.手間をかける価値:手遅れになる前に
現場にいる私だからこそ痛感するのは、書類がきちんとしていないからという理由だけで、せっかくの事業チャンスを逃してしまう企業や再建が手遅れになってしまう企業が驚くほど多いということ。
それは単に銀行が融資したくないのではなく、説明不足や情報不足で審査に時間がかかった結果、資金調達が間に合わなかった、資金調達が思うようにいかなかったというパターンが大半です。実にもったいない。
だからこそ、あなたには早め早めの準備をおすすめします。
「融資を申し込む直前になってから慌てて資料を作り始める」といったケースでは、数字の整合性が合わないなどで追加資料を求められ、結果的に「時間切れ」。事業チャンスを逃し、経営の安定性にも影響が出てしまう――という悲しい結末も、決して珍しくないのです。
5.銀行との関係づくりは“やるべきこと”がシンプル
それではまとめとして、銀行とのコミュニケーションをスムーズにするポイントを整理します。
■ 銀行の置かれた環境を理解する
・収益力は厳しく、人員減少のなかで効率を追求している
・手間がかからない企業を優先する傾向がある
■ 銀行が貸しやすい企業になる
・資金繰り表や採算管理表で「いつ、いくら必要で、どこで利益が出るのか」を明確にする
・過去だけでなく未来を数字で示し、定期的に進捗を共有する
■ 経営者の係数感覚をアピールする
・ビジネスモデルを図にしてみる(ビジネスモデル俯瞰図)
・必要最低限の数字を把握して、銀行に伝える
■ 早めに準備を始める
・融資を検討するなら、3か月前に、融資を検討しなくても、資金繰り表・採算管理表を整備して、銀行に提出できる体制を整えること
・書類作成はエクセルでもOK。まずは作ってみることが大事
■ 経営の生命線を自ら守る意識を
・あなたの会社を最終的に守れるのは、他でもないあなた
・ちゃんと数字を示してくれる会社は、銀行にとってもありがたい存在になる
銀行との関係をただお金を借りるだけと考えるのは、もはや古いと言えます。むしろ、銀行は数少ない経営の外部アドバイザーにもなり得る存在。そこを味方につけることで、必要なときに必要な資金を確保し、大胆な経営判断ができるようになるのです。
「なんだかハードルが高そう…」
と思うかもしれません。しかし、最初にお伝えしたように、銀行は貸したい気持ちが根底にあります。あとは、あなたの会社が手間いらずで、返済リスクが低いということを、客観的に示すだけ。
そのためのツールこそが資金繰り表と採算管理表です。あなたがこれらを活用し、数値をもって堂々と未来を語ることで、銀行との関係は大きく変わります。
本記事をきっかけに、ぜひ一歩踏み出してみてください。
「資金繰り表、採算管理表…どこから手を付ける?」と迷ったら、いつでもご連絡をください。事業再生を果たした現役経営者のゆーこと日ごろ事業再生に従事している中小企業診断士×現役銀行員のゆーきが丁寧にご説明させていただきます。
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