春がきた
最近の姉はなんだか楽しそうだ。
ふとした瞬間にやけてみたり、急にクルクル回ってみたり。
気持ちがフワフワしてるんだって自分でも言っている。冬の寒さが和らぎ、ちょうど桜も咲き始めた頃、姉にも遅い春がやってきたのだ。
姉が一般的な恋をするためには、少し難しい壁がある。
姉はいわゆるトランスジェンダーと呼ばれる分類であり、元々は兄だった。タイで性転換をして以降少しずつ手続きを進め、名前、性別を変えた。
子どもは産めないし、そうゆう行為も好きではない。そもそも人に対して猜疑心が強く、臆病なところがあり、深い人間関係を築くことをしてこなかった。
そんな姉が今、恋をしている。
一時期は「好きって気持ちが何かわからない」と嘆いていた姉。これが同一人物かと疑うほどに、今は周りにお花が舞っているのが見える。
恋心多き妹としては恋の楽しさを知り、ぜひとも幸せになってもらいたい。恋は日常に彩りを与える(私の場合は顕著に現れて支障をきたすこともあるが)ものだから。
そして、今日も少し離れたところからクルクル回る姉を見つめる。生ぬるい視線を送って密かに応援する。
この恋の蕾が満開になりますように。
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