春の目標、だったはず。(本厄に白血病になった話③)
春は好き。
暑すぎず寒すぎない温度、桜の舞う時期、私は春の花粉症ではないから、そこまで辛くもない。
そして4月4日は奇しくも結婚記念日なのだ。
結婚4年目までは、子どもを義母に預けて夫婦水入らずで旅行にでかけていた。もちろん、昨年だって予約済みだったけれど、結局キャンセルを余儀なくされた。
今年は予約すらしていない。
でもそれは、コロナ禍だったからではない。
白血病と診断され入院したから。
2020年4月4日、「治療しなければ死に至る」と書かれた書面を見ながら、最初の家族面談が行われた。どうやら私は抗がん剤をしなければ数ヶ月で死ぬらしい。抗がん剤を行うことで、場合によっては強い副作用が起こることもある。吐き気に口内炎、脱毛に不妊。私にとって、重大なことだ。
病状説明が終わった後、少しの面会時間が確保された。よくわからないまま入院になり、戸惑いしかない中、抗がん剤がいよいよ始まる。旦那の顔を見ていると訳もわからず、ただ涙だけが溢れてくる。私たちは何も言わずに、ただ強く抱きしめ合った。
家族と別れて病室に戻った後、差し入れが入った鞄の中に色紙が入っていることに気づく。旦那と息子、男2人が不器用ながらも作ってくれたらしい。「がんばれ、負けるな」って思いのこもったその色紙を、ずっと病室のベッドサイドに飾り、入院中に何度も見ていた。
年明けに退院した私は、今は子どもと実家で生活している。旦那は先に自宅に戻り、仕事に復帰。私を支えてくれたその色紙は、今でも見えるところに飾っている。
今年の春、さすがに旅行できないことは自覚している。コロナ禍だし、私もまだ免疫抑制剤を内服していて、あまり外出できる身体ではない。
だから、この春したいこと。
旦那に会いたい。旦那が好き。
と、記事を書いていたら、旦那が来た。そうそう来ることのできる距離ではない。どうやら、母のサプライズのようだ。
さっそく願いが叶ってしまった。